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音のある世界  作者:
4/6

多勢に無勢





……うるさいな。 最近、周りの音がうるさくて仕方ない。 会えば喧嘩ばっかの両親も、クラスの仲間も。 何が楽しくて大声出すんだか。 周りを見ろよ、周りを気にしろよ。 自分勝手な行動するな、黙れ、黙れ、黙れ。




「柾史、最近元気なくね?」

「……そうか?」

「うん、確かに。 いつものキレがないと言うか。 なんかあったか?」

「……別に」



鮫川と根本が不思議そうな顔でこちらを見る。 何もない、とは言えない心境。 でもここでは言えない、このモヤモヤの原因は、隣で寝てる奴のせいだから。 早く席変わらねぇかな…… この席のままじゃ俺はイライラし続けておかしくなりそうだ。





「か、返してよぉ!」




ふと、前の方から聞こえた声。 ……またやってるよ、くだらないおふざけ。



「あー、またいじられてんのか。 本田はからかいやすいからなぁ」

「確かに。 もう生まれ持った才能だよな、あそこまでいくと」




本田…… あいつ、気が弱そうだもんな。 毎回されてるってことは、反撃もできないんだろうな。 弱いものいじめ、ってやつか。 ……飽きもせずによくやるよな。




何気なく眺めてみた。 そしたらなんか変だな、って思った。 今にも泣きそうな顔の本田。 それを面白がってはしゃいでる男三人。 周りが気づかないはずないよな? でもさ……



なんで笑いながら『やめなよぉ』なんて言ってんの、そこの女子たち。 なんでめんどくさいみたいな顔で眺めてんの、男ども。 そんで、鮫川と根本…… お前らなんで、笑ってんの?



いじる、とか。 からかう、とかじゃねーだろ、これは。 これはさ、いじめってやつだろ? 違うか? 俺がおかしいのか? なんで誰も味方しねぇの? この状況で、本田が悪いっての? 本田が『悪』でお前らが『正義』なの?多勢に無勢、多い方が正しいのか? ……違うだろ。




また、イライラしてきた。 こんなこと、気にしてなかったのに。 本田がどうなろうと知らない、昨日までそんな考えのはずだったのに。 今は…… こいつら全員間違ってるって、思ってる。 でも…… んなこと言ったら、俺にも被害がくるのは目に見えてる。




慣れてるだろ? 本音隠すなんてさ。 言わなきゃいいんだ、そしたらそのうち終わるさ。終わるまで我慢すればいい、終わればこんな気持ちも消えるはずだ。 そう考えても、自然と歯を食いしばっている自分がいた。





「やっぱ偽善者だな」




突然聞こえた声。 ゆっくりと隣を見れば、高橋が頬杖ついてこちらを見ていた。



「……なに、が?」

「腹ん中ではイラついてるくせに。 言わないんだな」

「……何のことだよ」

「……まぁいいや。 そういう風に思えるだけ、あんたはマシな方なんじゃない?」



そう言って立ち上がりーー 俺の机のペットボトルを手に取った。




「お、おい」

「貸してよ、後で新品にして返すから」




そう言って、前の方へと歩いていく。 そのまま、本田をいじめてる男一人の肩を掴みーー







頭から、俺のお茶を勢いよくぶっかけた。





「目覚まし、ありがと。 止めるの遅れてごめんねぇ。 でも…… しつこいしうるせぇ。 さっさと静かになれや」













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