第三話 ~消える心と戻る心編
ナリア王国物語 アナザーエピソード2 第三話
~消える心と戻る心編
「ここは、どこ? カイルっ! キースっ! どこなの? ねえ…お願いだから…」
ここが何処なのか…頭上にあるものが空なのか天井なのか、それすらも分からない、ただ暗闇なだけの世界。
リリスには、わかっていた。ただ、それを認めたくないだけ。
「ねえ…お願いだから…返事をしてよ…私を一人ぼっちにしないでよ!」
認めてしまえば…そこには絶望しか残っていないのだから…。
「いやだよ…助けて…カインっ!!」
ポロポロと流れ出す涙…リリスの心を絶望が支配しようとしていた、その時。
「大丈夫。あなたは一人なんかじゃないよ」
「誰? 誰なの? ここはどこ? 私は…」
「ははは…私のことなんて覚えてないっか…まあ、一回しか会ってないし、ケンカしただけだったもんなぁ~」
スーッとリリスの前に姿を現す女の子。
「あなたっ! プロフィアさん…よね?」
「へへっ♪ 覚えててくれたんだね」
「忘れるワケないじゃないっ!! 戻ってきなさいって言ったじゃない! 私が、どれだけ心配したと思ってるの? もうっ! 死んじゃったんじゃないかと思って、どれだけ私が…って…あ………」
少し怒った口調でそう言ったリリスが口を紡ぐ…。
ニコッと笑って首を横に振って見せるプロフィア。
「ごめんね。約束守れなくって。私ね、ほら、こんな頼りなくって弱っちい子だからさ、あの時さ…まあ、しょうがないことだし、私が望んでやったことだから、悔いとか後悔なんてないんだよ。だから平気平気っ!」
「なによ…強がっちゃって。バカ…死んじゃったら、しょうがないじゃないっ!! もう…なによ…私だって、死んじゃって…悲しいのに、なんだか泣きづらいじゃない…」
プルプルと肩を震わせるリリスをギュッと抱きしめるプロフィア。
「あなたは…平気だよ。さっきも言ったでしょ? あなたは一人じゃないって。あなたには、たくさんの大切な仲間がいるもん。カイン君とキース君は私も会ったことあるんだよ。他にも一緒に旅をした仲間たち、ライラ様や王宮の人たち、みんな、あなたのこと忘れたりなんかしない。いつも、どこにいたって一緒だんだよ。私も、そろそろ行かなきゃ。私のためにも、あなたのためにも、みんなを守るために。私の…最後の役目を果たすためにねっ」
「あなた…は?」
そっと首を横に振るプロフィア。
「私ね、あの時の戦いで全てを使い果たして体が消滅してしまったの。入れ物を失った心がね、あの世にも、この世にも行けずにプラプラしてる感じかな」
「そんなの…なんで笑っていられるの? 何も報われないじゃない!! こんな誰もいない暗闇で一人ぼっちで…」
「私もね、あなたと一緒。平気なの。私は消えちゃったけどね。みんなの心の中にね、ちゃんと生きてる。あなただって私を覚えていてくれたでしょ? 私ね、そんなみんなの幸せを守ることができたんだもん。私でよかったって思ってるんだ。私だけの犠牲で、みんなを守れたんだもん。じゃあ…行ってくるね。あなたは大丈夫。目を閉じて…次に開けた時にはね、きっとみんながいるから」
「まって!! って…言っても行くんだよね、あなたは。あ…ありがとう」
「うんっ!!」
満面の笑みで大きく頷いて見せたプロフィア。
「さあ…目をつぶって」
そっと目を閉じたリリスの姿が、スーッと消える。
「これで、こっちでの私の役目はおしまいだね~」
『まったく…強がっちゃって。プロフィアちゃんらしいけど。怖いんでしょ?』
リリスが消えたと同時に、スーッとプロフィアの肩の上に現れたノエリア。
「うん…でも行かなきゃ! 私なんかより、ジンさんが…みんなが消えちゃうほうがもっと怖いもんっっ!! ごめんねノエリア…最後まで付き合わせちゃって…ノエリアがいないとダメなんだ…ホントにごめんね…」
『わかってる。言ったでしょ? あなたと共に行くって決めた時から分かっていたってね』
「ありがとう…ノエリア」
『さあ行くわよ。急がないと、ガルバデス以上の厄災が訪れれば、私たちの力が及ばなくなるわ』
「うんっ!!」
つづく