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ナリア王国物語2  作者: ぷろふぃあ
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第1話 ~戦士たちの会合 一ヶ月で終わる世界編 

         ナリア王国物語 アナザーエピソード2 第一話

           ~戦士たちの会合 一ヶ月で終わる世界編



「なんか…薄気味悪いトコだね…それに微かにだけど、血の匂いがするよ…」


 そう言って両腕を抱え、身震いするヴァル。


「ああ。どうやら、ここで正解のようだな。ヴァルは、西の方を頼む。俺は、東の方を。何か嫌な予感がする。ヤバイと思ったら深追いはするな。いいな?」


「うん。ジンさんなら平気だと思うけど…無理はしないでね」


「うむ。では頼む」


 ひと気が消えて随分経つのだろう、民家のほとんどが焼け落ち全壊、または半壊している廃墟の中央広場に立つジンとヴァル。


 うなずき合い、別れて歩き出した二人。


 所々に転がる白骨化した兵士の亡骸…その無残な戦争の傷跡に目を背けながら歩くジンは、街外れに一軒だけキレイに原型を留めた大きな教会を見つける。


「どうやら…ここのようだな」


 頬を冷や汗が伝い、無意識に鞘へと収められた腰の剣に手が伸びる。


 どんよりとした空からは雷が鳴り響き、更に不安な心を駆り立てる。その時…。


「よう。アンタ何者だ?」


 教会に気を取られ、接近に気づけなかったのだろう、ジンにそう語りかけた、成年に満たない、まだ若干幼さの残る金色の短髪で、肩に大剣を担いだ青年。


「そういうキミは…うむ、どうやら腹を割って話すには、互いのことを知らなすぎるようだな」


 そう言って…なぜか剣を抜き、構えるジン。


「なるほどな。そういうの嫌いじゃないぜっ」


 同じく肩に掛けていた剣を構える青年。


 お互い、真剣な目で見つめ合いながら口元に薄っすらと笑みを浮かべると、数メートルあった互いの距離が一瞬にしてゼロになり、激しくぶつかり合った剣と剣が火花を散らす。


 スッと剣を引き、肩にかける青年。


「剣に悪意がまったく感じられねぇや。どうやら敵ってワケじゃなさそうだな」


 そう言った青年。


「キミの剣には、まったく迷いがないな。その若さで、よくそれだけ極められたものだ。本気でやり合ってみるのも面白そうだが…どうやら、お互い、先にやらねばならんことがあるようだな」


「みたいだな。俺はカイル。アンタなら話しても平気そうだし、協力してもらえるなら心強い。数週間前に王宮の書物庫に賊が入って、暗黒魔術の本があるったけもってかれちまったらしいんだ。俺は、その犯人を追ってるんだけど、ウチの大魔術師さまが言うには、犯人は、たった一人で王宮に堂々と乗り込んで、数十人の近衛兵を一瞬にしてぶったおして、しかも書物庫まで何重にもなった魔法の封印を簡単に突破してて…そんなことが出来る奴がいるとしたら、ザイート級…いや、世界をどうにかできちまうくらいの奴だって。それで俺が、そいつに頼まれて調査してるってワケさ」


「なるほど…俺はジン。アクアリンクってギルドのマスターをやってるものだ」


「アクアリンク…どっかで聞いたことあるような………おおっ!! 姫がいるっていってたギルドか」


「姫?」


「ああ、プロフィア姫だよ。ちがったかな?」


「いや、確かにプロフィアは、ウチのギルドだが…」


「おおっ!! やっぱそーか。昔さ、修行の旅をしてた頃に闘技場で会ったんだけどな、戦姫プロフィアなんて呼ばれててさ、そりゃ強くて、まったく歯が立たなくてさ、命を助けてもらったりもしたからな………姫、今は、どうしてんだ?」


「プロフィアは…」


 視線を落とすジン。


「あ…いや…わりぃ………そっか」


 同じく視線を落とすカイル。


「いや、いいんだ。それより、俺は、最近、聖職者が行方不明になる事件が多発していて、その調査の依頼を受けていたのだが…暗黒魔術と聖職者…どうやら目的は同じらしい。しかも嫌な予感しかしないな。絶望的に…な」


「ああ…」




 入り口のドアをそっと押し開けるジン。ひっそりと静まりかえる教会内に錆付いたドアの開放音が響き渡る。


 雷が鳴り響くたびに照らし出される薄暗い室内。鼻をつく死臭に思わず鼻を押さえるジンとカイル。


「これは………くっ…見ないほうがいい」


 床に転がる遺体に近づいたジンが、同じく近づこうとしたカイルをそう言って手で静止する。


 腹部から内臓がすべて無くなった女性聖職者の遺体。


「多分…中から食い破られたのだろうな。聖職者は何かの儀式の生贄なのだろう…」


 恐怖に引きつり、目を見開いたままの女性の目をそっと閉じ、立ち上がったジン。


「なあ…アンタも感じるか?」


「ああ。明らかな殺気だな。どうやら、アチラさんは、コッチのことにお気づきらしい。もうコソコソする必要もないだろう」


 礼拝堂へ続く両開きのドアを二人で左右に押し開けるジンとカイル。


 さらに強くなる強烈な死臭。所々に転がる聖職者の遺体。


 まるで二人を歓迎するかの如く壁伝いに置かれた燭台のキャンドルに二人のいる方から左右に順々に火が灯り、部屋の一番奥に立っていた男を照らし出す。


 頭から足の先まで全身に黒いフードを纏い、堀の深い顔立ちにどす黒く淀んだ瞳、口元には薄っすらと笑みを浮かべている。


「ジン・アクアと…カイル・アーガイルだったかな」


「何者だ、お前は。いったい何を企んでいる?」


 一歩前に出て剣を抜き構え、そう尋ねたジン。


「ククク…お前たちには一度会いたいとは思っていたが…まさか二人揃ってご登場願えるとはな」


「俺は、アンタに会ったことなんてないぞ。どうして俺たちのことを知ってる?」


 同じく一歩前に出て剣を構え、そう尋ねたカイル。


「ガルバデスと…ザイート…お前たちが二度も世界を救ってくれたおかげで、この私に出番が回ってきたというワケだ。お前たちには感謝しなくてはな。この腐りきった世界を私の手で終わらせることができるのだからな。ククク…」


 黒いフードの男が両腕を広げると、その両の手のひらがどす黒い魔力を帯び、そこから数十にも及ぶ三日月型をした黒い刃が放たれる。


 そのすべてが、まるで意思を持ったかの如く、まったく違う軌道を描きながら高速でジンとカイルへと襲い掛かる。


 それを必死の形相で剣で受け流し続けるジンとカイル。重く激しい金属音が響くたびに後ずさりを続け、剣が火花を散らし続ける。


「じょ…冗談じゃないぜ…バケモノめ…」


 かわし切れなかった刃に全身を刻まれ、激しく肩で息をするジンとカイル。そう言ったカイルの膝が崩れ、床に突き立てた剣にもたれ掛かる。


 ニッと口元に笑みを浮かべたフードの男が右手をスッと上に上げる。


「まずいっ!!」


 ジークを肩で突き飛ばすジン。その瞬間、床から突き出た無数の鋭利な触手がジンの全身に突き刺さる。


「ぐああああああああっっ!!!!」


 大量の出血に紅く染まる床…力なく倒れたジンは、ピクリとも動かない。


 立ち上がり、剣を構えようとしたジークの腹部に、フードの男が突き出した左手から放たれた魔法が炸裂。


 魔方陣の描かれたどす黒い円盤型のそれは、回転しながらジークの腹部をえぐり、その威力に弾き飛ばされたジークは壁に激突し、大量の吐血の後、動かなくなる。


「ふふふ…ははははっ!! 一ヶ月だ。あと一ヶ月でこの儀式は完了し、世界は終わる。お前たちは褒美に生かしておいてやろう。あと一ヶ月、最後の人生を楽しむか、無駄な努力に残された貴重な時間を費やし、絶望とともに世界の終焉を迎えるか…お前たちの好きにするがいい」



                                  つづく…


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