ロシアンたこ焼きの怪(1)
モジモジくん、よく視てたなー。
文体をいじってみました。
「先輩」
「なんだ」
「良いニュースと、どうでもいいニュースがあります。どっちから聞きます?」
「どうでもいいニュースで」
「即答っ!? というか、どうでもいい方が優先なんです!?」
「むしろ、どうでもいいニュースだけでいい」
「もうちょっと良いニュースにも興味を持って下さいっ!」
「いいからさっさと話せ」
「しょうがないですねぇ……」
私は鞄に手を突っ込みました。
「実は顧問の先生から手紙を預かっています」
「何故手紙? 直接言ってくれた方が早いだろうに」
「この間、先輩が書き残した置き手紙に感化されたそうです」
先輩は呆れたような困り果てたような、おかしな表情を浮かべましたが構いません。私は小さく折り込まれた手紙を開きました。
「ええっとですね、『今週私は出張なので部活は休みです』だそうです」
「本当に口で言った方が早いだろ、それ」
先輩は深く溜息をついて、肩を落としました。
「……で、良いニュースというのは?」
「気になります?」
「いや、割とどうでもいい」
「実は、今週の土曜日は私の誕生日なのです」
「そっちの方が、どうでもよくないか」
「先輩、本当にそう思っていても、実際には口に出さないものですよ」
「これからは気を付けよう」
「いやいやいや。そこは『冗談だって』とフォローするところです」
もはやいつも通りの返しなので、これくらいへっちゃらです。めげません。胸の裡でむせび泣きながら、話を続けます。
「というわけで、昨日カラオケに女子五人組で行ってきたんです」
「誕生日は土曜日なのにか」
「えと、それはですね、みんな土曜には用事があるとかで、昨日しか都合がつかなかったんです」
どいつもこいつも彼氏とか彼氏とか彼氏とか……。リア充どもめ、爆発してしまえばいいのに。
おっと、本音が口を突いて出てしまいそうになりましたが、我慢です。
「それでですね、そのカラオケの最中、ちょっとおかしなことがあったんです」
先輩がひょいと眉を動かしました。「それをオレに解けって言うんだろ」
手を鉄砲のようにして、先輩に狙いをつけます。
「ざっつ、らいと!」
ばきゅーん☆ ついでにばちーんと右目を瞑ってみせます。
「なにが『ばきゅーん☆』だ」
「ときどき心を読みますよね、先輩って」
「気のせいだろ」
「で、どうですか。挑戦してみますよね、もちろん」
先輩は諦めたように溜息をつきました。
「……どうせ引き下がる気はないんだろ」
「ざっつ、らいと!」
ばきゅーん☆
「うざいからやめろ、それ」