表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

ローブと魔法





「ふぅ、結構歩いたな」


異世界に来てから二日目の朝方。

一番の心配だった食料は、神様から貰った知識でカバーできた。


一日目で何とか森まで辿り着いてから、野宿となった。

サバイバルを学んだとはいっても、さすがに火をつけるまでは至らず。

主になった食料は、木の実やキノコで、そのまま食べられるものだけだった。


途中何度か、食料になる小型の魔物を見かけたが・・・


「なんで抜けないんだぁ!」


得物がないので仕留められず。



魔力操作って言われてもなぁ・・・。

何度か瞑想したりして、感じ取ろうとしたが、感じたことのないものを認識するのは中々に難しいことなわけで。



「これさえ抜ければなぁ・・・、はぁ」


脇差?さえ抜ければ、それなりの道具も作れるし、狩りだってできる・・・と思う。

見た目、兎に角が生えただけだし狩れるよね?。

しかしあの角で刺されたら・・・痛そうだな。

むしろ、痛いで済めばいいが・・・。


「遭遇しないように気をつけよう。危険な生き物だったら目も当てられない」





それから暫く歩いて、恐らく昼頃。


「歩き疲れてきたし、休憩がてらお昼にしますかぁ」


まぁ、お昼って言っても、さっき採った木の実なんだけどね。

これがなかなか、甘くておいしいのだ。

見た目は黒い林檎みたいで、最初は食べるのを戸惑った。


少し開けた場所を見つけて、木の根元に寄りかかる。

鞄も無いので、二つだけ採っておいた黒い林檎モドキに噛り付く。


「シャク、シャク、シャク」


「甘いもの食べたら、しょっぱいものも欲しいなぁ。」



一つ目を食べ終えて、そんなことを考えていた時だった。

『ドゴォォォン』、と何かとてつもない爆発音が辺りに響き渡った。


「っ!近いな。行ってみるか」


今さっき気をつけようとか思ったのにもかかわらず、足は既に音源に向かって歩みを進めてた。

正直、危険だとは分かっていても、もしかしたら人が居るかもしれないと思ったら、足を止められなかった。

速まる動悸を抑えながら、小走りで目的地に駆ける。


「あそこか!」



少し離れたところから、土煙が上がっている。

そこに向かって、なるだけ気配を消しながら近づいていく。

ある程度離れた木の陰から、辺りの様子を窺う。

場所は開けていて、陽の光が差し込んでいた。



あれは・・・人だ!。

異世界に来て二日、やっとこ第一村人発見・・・森だから森人か。


だがしかし、何か不穏な空気が漂っている。

黒いローブを頭から着込んだ人を、三人の男が距離を取って囲んでいる。

囲んでいる方、あれはエルフか!?、耳が長いから多分そうだろう。

最初に出会ったのがエルフとは、異世界感でてきたなぁ。



しかしこの状況は感動できないな。

なにせ男三人、みんな剣を持ってるんですよ。

どうするべきか・・・。


「ここまでだ、動くんじゃねぇぞ」

「小娘が手こずらせやがって」

「今すぐ両親の所に送ってやるぜ」



男三人が、いかにもな悪役じみたセリフを言っている。

話の流れから、ローブを着ているほうは女の子らしい。

そして両親、か・・・。


理由はどうであれ――


「決まりだな・・・」


「っ!、誰だ!」

「そこにいる奴、出てきやがれ!」


俺はそこから、ゆっくりと前に出ていく。


「大の男三人が、一人の女の子囲んで恥ずかしくないのかねぇ」

「あ?よそ者はすっこんでろ」

「しかも、よく見りゃあこいつ、人間じゃねぇかよ」

「はっ、人間如きがエルフに逆らおうなんて百年早――」


エルフの男が言い終わる前に、その男に向かって50cmくらいの火球が飛来した。


「なっ、やりやがったな餓鬼がぁ!」

「まだ魔力が残っていやがったか」


俺に向かって罵倒の言葉を吐いてる隙に、ローブの子が放ったらしい。


しかし、そうか。

今のが魔力か。

何でかは知らんが、ローブの子が火球を放つ前に、魔力らしき流れが見えた。

今なら、やれるか?。


脇差を取り出し、左手で鞘を、右手で柄を握る。

さっき感じたものを、自分の体の中心から右手に、そこから刀に伝えるように意識する。

そしてそれを、ゆっくりと抜いていく。


「抜けた・・・」


抜けた刀は50cmくらいの中脇差だった。

刀身は美麗な銀色で、光に反射して僅かに黒く見える。

柄と鞘、鍔も黒色なので、名前は漆黒の脇差とかだろうか。



「なんだてめぇ、やる気か」


そう言って一人のエルフがこっちに向かってくる。

さっきの火球で一人が動かなくなっているので、残りは二人か。


「はっ、そんな短けぇ剣で、俺に勝てるわけねぇだろうが」

「どうでしょう。身の丈に合わないものを振り回すあんたよりは、マシだと思いますけどね」

「んだとこの野郎。おらあぁぁぁっ」


こんな軽い挑発に乗るとは、なってませんな。

どこまでやれるか分からないけど、あの伯父さんの扱きに耐えてきたんだ。

やれるだけやってやる。



「一刀流は得意じゃないんですけどね・・・」


脇差を右手で持って、左手は自由に。

男が上段から振り下ろしてくる剣を、脇差を斜めに構えて左に受け流す。

隣に出た男の下腹部辺りに、左手を入れて右足を掛けて――

倒れる男の首、頸部に渾身の力で柄頭を叩きつける。


「っかはぁ!・・・」


思ったより綺麗に入ったなぁ。

エルフの男、半目になって失神しちゃったよ。

伯父さんに叩き込まれたことを、思い出しながらやっただけだけど、伊達ではなかったらしい。



「さて、あと一人か・・・」

「チッ、どいつもこいつも役にたたねぇ」

「ふーん、逃げないんですね」

「手前みたいな餓鬼一人に、どうして逃げなきゃなんねえんだよ」


一気に二人も無力化されたのに逃げてくれないらしい。

俺だったら逃げ・・・ないか。

さすがに仲間を置いて逃げたりはしませんね。



だけどお兄さん、戦いの最中に余所見はいけません。


「ぎゃあぁぁぁ!」

「さっき学んだばかりでしょうに。全く」


またしても、ローブの子が放った火球にやられた三人目の男。

異世界初の戦闘は、こうしてあっという間に幕を閉じた。




「大丈夫ですか?」


一段落ついたところで、ローブの子に歩み寄りながら声を掛けた。


「はい・・・。もう・・・平気です・・・から、それでは」

「平気って、息だって上がって、それにこの手!」


踵を返して歩き出そうとするローブの子を、腕を掴んで制止させて言った。

呼吸は荒く、肩で息をしていて、右手には逃げてる時に負ったのであろう傷があった。


「やめてっ、放して・・・くだ・・・さ・・・い」


ローブの子は、俺の手を振り解こうとして、気を失ってしまった。


「おっと。疲れた、のかな?」



「このままここに居るのも不味いか、先を急ごう。よっと」


ローブの子を背負い、街のほうに向かい歩き出した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ