プロローグ
プロローグ~職業高校生ときどき~
唐突だけど、皆さんはどういったご職業の方でしょうか。
会社員、学生、自営業、スポーツ選手、芸能人etc.この世には、人の数ほどの職業が存在している。
え、どうして急にそんなことを聞くかって?
そんなの簡単さ。
「なぁエルザ。ほんとにこれで何とかなるのか?」
「任せて。私の目に狂いはないから。キミの才能は私が保証する」
「はは……そりゃどうも」
自宅階段の前。螺旋を描いて二階に伸びているその階段を眺めながら、俺はエルザの言葉に頭を抱えた。
普通なら才能あるって言われればうれしいんだろうけど、今回の場合、褒め言葉なのか?
と、そうしていると異変が起きた。階段の中ほどに黒い靄が発生したのだ。
それを確認して俺は気を入れなおす。
「創剣演武――」
目を閉じて右手に全神経を集中。すると右手の周りに光の粒子が発生し、刀身の細い一振りの剣となった。
「いくぞ!」
声を飛ばすのと同時に床をけり、階段を駆け上がる。
と、同時。黒い靄の中から、犬のようなものが現れた。
そう、犬のようなものだ。
人間ほどの巨大な体。前足から伸びている鋭い爪と、猛禽類を思わせる獰猛な眼光。明らかに普通の犬ではない。
咆哮とともに、ソイツもこちらに向かってくる。
口元に見える牙に足がすくみそうになるけど、退けない。退けるか!
巨大な犬が右前脚を振り上げ――振り下ろしてきた。
凶悪な爪が俺を襲う。対して俺は床をさらに強く踏みしめ、蹴り上げる。
「これでも、くらえぇぇえ!」
巨大な犬の懐に入り込むのと同時、気合一閃、剣を振り上げる。そのまま一気に巨大な犬を一刀両断。
真っ二つになった巨大な犬は黒い粒子になって、足元から消滅。階段に発生していた黒い靄も――ゲートもいつの間にか姿を消していた。
「ふぅ、今回もどうにかなったか」
そのことを確認し、俺は安堵の息を漏らす。
と、階段手前で見守ってくれていたエルザが階段を上ってきた。
「なかなか戦い方が様になってきたじゃない」
「そりゃどうも」
「さすがは自宅警備員♪」
「いや、だからその呼び方やめようか! 意味が違うから!」
目を奪われるような眩い笑みを浮かべるエルザを前に、俺は頭を抱えた。
この家を守れることは、家族を守れる力を手にできたことは素直にありがたい。ありがたいけどさぁ。
ホント、どうしてこうなった。
俺、伊江衛。
高校生……ときどき、自宅警備員やっています。
新人賞用に書き始めたのを連載形式で書いていこうと思います。
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