4話 『リヒト』のメンバー
玩具屋で出会った美麗な女性に言われ、俺は店を閉め、奥の部屋へと案内する。
てかどうせ店を閉めるんなら最初からずっと閉めておけばよかったとか思ったけど、それも駄目なんだろう。
あくまでただの客として来たっていう情報が大事だろうからな。
そして他の客と同じタイミングで入ることによって、どんな人物だったかっていう情報を錯乱させるって事か。
「どうぞ」
俺は茶を沸かし、女性へと差し出す。
しかし女性はそのティーカップに手を伸ばすことはない。
俺は気にすることなく、ティーカップに口をつけ、女性の対面の席に座る。
「私の事はリディとお呼びください。ロイさん」
「へえ、俺の事知ってるんですね」
「はい。ルイスさんからよく聞いてましたので」
ルイス。聞き馴染みはない。でも誰のことを言っているのかは分かる。
「あの人の事か? 今朝処刑された」
そう言うとリディさんはまた押し黙る。
そして一瞬の後、首をコクリと縦に振る。
やっぱりそうか。常連さん、ルイスって名前だったんだな。
「ルイスさんは強いお方でした。不意を打たれなければ、あんなことには」
悔しそうにそう語るリディさんを見て俺も少し思い出し、怒りがこみあげてくる。
「ルイスさんの事は俺も腹が立ちます。帝国の奴らを憎んでも憎みきれないほどに。それで? 俺はどうして『リヒト』に誘われたんです? ルイスさんが関係あるんでしょうか?」
俺は偵察も戦闘も碌にできない。
そういう事を期待されても無理だってことをはっきり伝えておく必要がある。
「一応関係はありますが、ルイスさんが探り始めるよりも前から元々狙ってた節もあります。あなたのお父上には散々お世話になりましたから」
父上。その言葉を聞いて俺はすぐさま勘づく。
俺の父親の職業を知っているっていう事は、目の前の人物は王国時代、かなり位の高い貴族かもしくは王族であった可能性が高い。
何故なら魔法道具職人の特性上、厄介ごとに巻き込まれることが多いため、親父は決まった相手としか取引をしていなかったからだ。
なるほどね。つまり、今目の前にいるのはとんでもない要人って訳だ。
「つまり、『リヒト』は俺の魔法道具職人としての才能を欲しているって訳ですか」
「そういう事です。お話が早くて助かります。あと、リディと呼んでくださいと言ったのに一度も呼んでくれませんね」
「……重要ですかそれ?」
「はい」
何だろう。シリアスな空気が一気にほんわかとした空気になった。
気が付けばティーカップに口をつけ茶を啜っているのが見える。
どのタイミングか分からないが、信用してもらえたらしい。
「リディさん」
「何でしょう」
「俺はルイスさんを、ルイスさんの家族を殺した帝国に対して悪感情は抱いてます。ですが正直言うと、帝国を潰したいという大いなる野望は持ち合わせておりません」
俺がそう言うとリディさんは再度かしこまった顔をして次の言葉を待つ。
「『リヒト』に入るのには条件があります」
「聞きます」
聞きます、というのはそれを受け入れられるかは内容次第という事だろう。
「帝国に支配されている今、交易が遮断されており、魔法道具を作製するのに材料が手に入りにくい状況にあります。まあ正直、その程度でしたら別に困らないのですが」
そう、魔法道具を作れないのは俺にとってどうでもいいことだ。
俺にとって大事なのは……。
「ゴーレムを作るための魔力土。これがあまりにも貴重すぎて手に入らなくなりました。この魔力土を定期的に頂けるのでしたら喜んで入ります」
実はこれは俺にとって大チャンスなのである。
魔力土は腕の立つ者であれば隣国でも何でも行けばすぐに手に入る代物ではあるが、腕の立たない一般人にとってはこの国で最も手に入らない物資だと言える。
一応車を使って遠出はできるが、何日かかることやら。何せ俺の魔力が少ないために何時間も走れないからな。仮にそれで行こうとしても道中の休憩で盗賊とかに襲われてジ・エンドだろう。
『リヒト』には腕の立つ者が多いと聞く。それなら、魔力土もすぐに手に入れられるんじゃないかと思ったわけである。
ただ、リディさんの表情が全く変わらないのがコワイ。
あれ? もう条件言い終わったんだけど。
「えっと、それで他の条件は?」
「はい? いえ、これだけですけど」
「え、ホントにそれだけで良いんですか?」
それだけで、と言われても俺にとっては一番ありがたい事なんだけどな。
「その代わり大量に欲しいんですけど」
「大量だろうと何だろうと構いませんよ。『リヒト』のメンバーに空間魔法に長けた者がおりますので、実質無制限に魔力土をお渡しできるかと。ですが、どこに置くんです? 見たところ、このお店には置けないような気がするのですが」
そう言われて俺もそれもそうだなと気付く。
元々この玩具屋でやり取りしようかと思っていたが、大量の魔力土を持ってきてもらうのだとしたらカラクリ城の方が良いか。
「そうですね。ここじゃ無理ですので、次からやり取りする場所を教えておいた方が良いですよね」
「え、ここだけじゃないんですか?」
「はい。これからは俺の家でやり取りした方が良いかと」
「え!? 男性の方のご自宅に!?」
何か変な捉え方してんな。位の高い箱入り娘って感じする。
「お、お誘いという事ですか?」
「……さっさと行きますよ」
俺は一人顔を赤くしているお嬢さんを尻目に席から立ち上がり、カラクリ城へと向かう準備を始めるのであった。
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