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2話 レジスタンス

 次の日、俺はいつも通り支度を済ませると王都にある玩具屋へ向かうために車を走らせていた。

 そしていつものように車から降り、王都へと入る。

 いつもと同じ。


「公開処刑だってさ」

「野蛮だねえ」

「おい滅多なことを言うんじゃない。聞かれてるかもしれないんだぞ」


 ヒソヒソと話すそんな声が聞こえてくる。

 公開処刑、その言葉はあまりにも非現実的なものであった。

 一般人ではなく元王族の家系やそれに類する重要人物を処刑する時にだけ行われるものだからである。

 だから広場に人も多く集まっているのがわかる。

 参ったな。俺の店あっちなんだけどな。

 そう思ってふと広場の真ん中に目をやる。

 そこには剣を持つ帝国の軍人と、その隣に跪いている男がいる。

 遠目でわかりにくいが、その隣にはすでに執行済みの痛ましい姿が3人分ある。

 目を伏せたかった。そんなものには興味がなかったから。

 だが今回ばかりは、そうはいかなかった。

 処刑直前の項垂れている男の顔、それは俺がよく知っているあの顔だったからだ。


「常連さん?」


 それが分かった時には俺はすでに駆け出していた。

 最前列まで走り、その瞬間をさせまいとする。

 しかして現実は残酷である。

 一平民でしかない俺の眼前でその刃が振り下ろされる。

 

「ロイさん」


 聞こえるはずもない。だがその悲痛な表情を浮かべた口からハッキリと俺の名が読み取れた。


「……常連さん」


 見れば隣には彼の嫁や子供達までもが遺体となって並んでいる。

 産まれたばかりなんだと楽しげに話していた常連さんの顔を思い浮かべる。

 まさかそんな赤子さえも手にかけるとは。

 何たる外道。何たる惨状。

 沸々と湧いてくる激しい怒り。

 それをどこにぶつけられる訳もない。

 俺はただの平民だ。魔法も武術も剣術も何も使えない。何かができる力もない。

 ゴーレムだって動かせはするが、一度に大量のゴーレムを動かせるほどの魔力もないため、結局反乱を起こしたところで魔法で焼き殺されるだけ。

 できることを強いて挙げるならばここで静かに黙祷することだけだ。


「……今日は営業する気になれないな」


 俺は玩具屋へ向かうのを止め、踵を返す。

 広間から離れ、王都の出口へと歩く足取りはどこか重たげだ。

 そしてまさに王都の出口から出ていこうとするところであった。


「おい。そこのお前。止まれ」


 嫌な予感がした俺はゆっくりとその声の方を向く。

 そこに居たのは2人の帝国兵であった。


「広場を抜けた先にある玩具屋のオーナーだな? お前に話がある。着いてこい」


 着いてこい、その言葉はまるで死刑宣告かのように胸に突き刺さってくる。

 戻れないだろう、そう直感した。

 考えてもみればわかることだ。公開処刑されるほどの重要人物が通っていた店の店主なんだ。

 怪しまれない訳ないだろう。

 ため息を吐きたくなる。ここで俺の人生も終わりか。


「分かりました」

 

 そう告げると俺は二人の兵士の後をついていくのであった。



 ♢



「今日公開処刑されたあの男、知ってるか?」


 詰所へと連れていかれ、拘束されたのち、最初に聞かれたのはそれであった。

 

「知ってますよ。ウチの常連さんです」


 どうせ調べはついてるんだろうから素直に答える。

 すると兵士も満足げに頷き、次の質問に移る。


「ではこの男の素性は知っているか?」

「素性までは知りませんよ。なにせ名前も教えてくれなかったんですから」

「本当か?」


 本当の事しか言っていないが、どうにも帝国兵の顔が強張っていく。

 ていうかどのみち殺されるんだ。嘘をついても意味がないってのに。


「ハッキリ言おう。お前には禁具売買の容疑がかかっている。本当に、知らないんだな?」


 禁具とはいわゆる武具やそれに類する魔法道具の事だ。

 帝国が禁止しているからそう呼ばれている。

 無論、俺が家で造っているゴーレムや魔法道具も禁具指定を受けているため、部分的には正しい。

 でも売買はしてない!法律は犯してるけど!


「禁具売買? 俺は魔力で動く人形しか作れないですよ」

 

 てか容疑がかかってる状態でそんなハッキリ容疑の罪名明かすもんかね?


「おい」


 兵士の1人がもう1人に話しかける。

 その後、話しかけられた兵士の方が席を立ち、退出する。

 何だろう? 時間がかかるとでも思ったのか?

 ガチャリと音が鳴り、ドアが閉まる。

 そして残った兵士の方が声を低くしてこう問いかけてくる。


「レジスタンスって知ってるか?」


 急に何だ? レジスタンス?

 字面で意味を把握しようとすれば反乱軍って意味だけど。

 そんなのあんのか?


「知らなそうだな。レジスタンスとは帝国の圧政に反乱を起こそうと企んでいる奴らの事だ。そしてさっき処刑された男はレジスタンス『リヒト』の幹部だった男だ」

「へえ、そうなんですね」


 そんな組織があったことも知らなかったし、常連さんがまさかそこの幹部だったとも知らなかった。


「というかそれだけ知っているのにどうして捕まえないんです?」

「迂闊には捕まえられんよ。リヒトは実力派揃いだからな。何を隠そう、先の男も不意打ちを打たなければ逃していただろうほどの実力者だ」


 それを聞いて俺は少し苛立ちを覚える。

 あの時だろう。遠くから悲鳴が聞こえてきたあの時。

 そこで彼は拘束されたのだ。許せない。


「……そんな顔をするな」

「すみません」

「謝っているようには見えん顔だがな」


 そう言うと目の前の兵士は笑みを浮かべる。

 少し強張った笑みだ。


「それで? 俺は死刑ですか? どうせ殺すんなら無駄話はやめませんか?」


 常連さんの話になってあからさまに態度に苛立ちが出るが、もはや隠す気もない。

 ここの問答だの態度なんざ関係ないのだから不快な思いをする前に早く切り上げたかったのである。


「死刑か。それはどうだろうな?」


 意味深にそう問いかけてくる兵士の顔には先ほどの強張った笑みとは違う優しげな微笑みが浮かんでいた。

 そしてこう告げるのであった。


「お前がリヒトに入るならば死刑はやめておいてやろう」

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