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1話 玩具屋の主人

 エマレール王国。そこはかつて世界で最も平和な国であった。市街地は栄え、多くの人々が往来していた。

 しかしその平穏は突然に失われた。

 カラリナ帝国の侵略によって王都が陥落し、完全に帝国の支配に移り変わったのである。

 帝国の支配はかなり過激なものだ。

 少しでも反意のある者を見つければすぐさま処刑を行うほどに。

 それこそ町民達へ、武器を所持・売買する事を禁じるほどの徹底ぶりであった。

 そのお陰で武器屋や防具屋などは他の国へ移り住むか、抵抗し売り続けて処刑されるかして、国内からは姿を消した。


「はあ、誰か帝国の奴等を滅ぼしてくんねえかな?」

「おいおい、滅多な事をウチの店で言うんじゃない。俺までしょっぴかれるだろが」


 俺、ロイ・シュピールはここエマレール王国の元王都にて玩具屋を経営している。

 魔力を帯びた玩具。一歩間違えれば禁具認定されてしまいそうなものだが、ただ魔力を流し込めば思い通りに動かせるだけで大した硬度もないからか、今のところ見逃されている。


 そして今目の前で処刑待ったなし発言をした男はここの常連客だ。

 2人目の子供ができたらしく、その子供用にとその玩具を買いたいらしい。


「にしてもよ、ロイさん。よくこんな質の良いモンをこんな安価で売れるよな」

「コイツらには大して貴重な土使ってないからな。そこら辺の土でその値段で売れるってんなら寧ろ貰い過ぎなほどだよ」


 買ったとしても十ゴルド程度の土から作った玩具が百ゴルドで売れてるから俺としては全然嬉しい。

 そもそも玩具作りは趣味でもあるからな。


「つってもそこで売ってるパンと同じ値段だぜ?」

「たっか、あのパン屋」

「お前んとこが安すぎんだよ。っと、ありがとよ。せいぜいしょっ引かれんなよ」

「アンタもだよ」


 常連客へと手を振る。

 気の合う男だ。こんなに息苦しい生活をしている中で唯一笑い合える存在だろう。


「さてと、今日はもう店仕舞いだな」


 先程の常連客はいつも仕事が終わってから夜に来る。

 子供達に買う玩具だといって色んな玩具を買っていく。

 曰く、この鬱屈とした生活でせめて子供達には楽しく過ごしてほしいのだとか。

 家族も居るし仕事の都合もあり気軽にこの国から出られないのだとか。

 俺はそれを聞いてからというもの、あの男が来るまでは店を開き続けているのだ。


「これでよし。さ、帰るか」


 今日の売り上げを握りしめると、店を閉める。

 外は静寂に包まれている。夜とはいえまだまだ以前だったら酒を飲み交わす人が居たもんだが。


「寂しい国になったもんだ」


 その時であった。遠くの方から悲鳴が聞こえてくる。

 誰かが帝国軍に咎められたのだろう。

 これも今の日常の光景だ。可哀想にという感情は湧くが、目を付けられたくないため、俺はそちらには向かわず、そそくさと帰路につく。

 所詮は他人。そう言い聞かせて。

 店から少し離れ、王都からも出ると、俺は近くの地面へと手をつけ、魔力を流す。

 すると目の前の土がうねり始め、やがて一つの大きな四輪駆動の車へと変貌する。

 魔法ではない。俺は魔法は使えないからな。これは単に魔力を使って物質を動かしているだけ。

 思い描く物を正確に作るにはかなり繊細な技術が必要だが、代々魔法道具職人の家系である俺にはこれくらい造作もない事だ。

 魔力土でなくても帰る分にはこれで問題ない。

 普通の土で作った車へと乗り込み、魔力を流してそれを走らせる。

 俺の家はかなり王都から遠い場所にある。

 それには理由がある。

 しばらく走らせ、俺が所有している山へ到着するとそのままてっぺんまで走っていく。

 山の頂上には小さな小屋がある。

 ここが俺が住んでいる家だ。

 俺が車から降りると、車は音もなく崩れていき、地面へと還る。

 そしてそのまま俺は自分の家の扉を開く。

 中は何の変哲もないただの小屋。

 ベッドや机、棚が置いてあるだけの質素な生活空間だ。ここだけ見れば。

 俺は小屋の奥にある暖炉の方へと歩いていき、手をかざし、魔力を流す。

 するとゆっくりと暖炉が横に動いていき、階段が現れる。

 その先に広がるのはとんでもなく巨大な空間。そして所狭しと俺が作った魔法人形、通称「ゴーレム」や魔法道具が並んでいる。

 上の小屋はただの見せかけ。本当はこの山全体が俺の作る作品達の置き場所となっているのである。

 俺は色んな種類の魔力土を集めて色んな種類のゴーレムを作る事を趣味としている。

 しかし帝国が支配するようになってから軍用魔法道具の製作が禁止されたため、親から受け継いだ遺産を全ブッパしてこの巨大な趣味空間を作り上げた。

 俺はここのことを愛着を持って『カラクリ城』と呼んでいる。

 せっかくだし、皆んなもそう呼んでいいよ。

 もちろんここのことが帝国にバレたら処刑待ったなしである。

 だからこそ俺は穏便に過ごすことに努めているのだ。


「今日、早速火属性の魔力をもった『獄炎土』を貰ったんだよな〜。どんなゴーレムが作れるか楽しみだぜ」


 魔法道具を作るのに必要な魔力土は世界の風土によってその性質が変わる。

 そのため、交易が盛んであった以前ではホイホイ買えたのだが、帝国のせいで交易が滞っている今は相当貴重なものとなっている。

 だから新しい魔力土が入ればすぐにでも試したくなるのである。

 それから俺はここ『カラクリ城』にてヒソヒソとゴーレムを作り始めるのであった。

ご覧いただきありがとうございます!


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