第五話 マンドラゴラさん、毛むくじゃらになる
室長のポーズを気に入ったのか、マンドラゴラさんが真似している。
広背筋を見せつけるようなポーズをとった室長の横で、マンドラゴラさんが同じポーズをとる。マンドラゴラさんはぽってりとした身体つきなので、かわいらしいという印象しか持てないな……と、アーシュタは小さく笑った。
「先日研究を依頼されていた、トカゲヅルの件でうかがいました!」
「どうでした? 回復薬に使えそう?」
「回復薬といえば、回復薬なのですが……」
普段快活な室長の歯切れが悪い。アーシュタが小首をかしげると、長い赤髪がさらりと肩にかかった。
「残念ながら、体力回復薬には向いていませんでした。しかし……」
室長は白衣を着たまま、胸筋を見せつけた。
こんなに筋肉質なポーズばかりとっていたら、そのうち白衣がはち切れてしまうんじゃないかと、アーシュタは心配になる。
だから研究室の人たちは、少し大きめの、ゆったりした白衣を着ているのだろうか。
「毛髪の回復薬! つまり毛生え薬ですな! これに向いていることが判明しましたぞ!」
見事な前腕筋群を見せつけながら、毛生え薬のサンプルを両手で差し出す室長に、マンドラゴラさんがうれしそうに飛びついた。
「あっ」
室長の手から、毛生え薬のサンプルが転がり落ちる。
マンドラゴラさんが受け止めようとする。毛生え薬の液体がたぷんと揺れ、マンドラゴラさんにかかった。
「えっ、大丈夫!?」
植物園の面々があわてる中、マンドラゴラさんの細かな根っこがぶわっと一気に生えた。
ぽってりとした身体はそのままに、毛むくじゃらだ。
マンドラゴラさんが歩くと、ファサッ……と毛も動いた。まるでドレスを着た貴婦人のような動きだ。
必死に笑いを堪えるアーシュタをよそに、室長はあごに手を当てて考え込んだ。
「……まだまだ研究の余地がありますな」
「研究は一日にしてならず、ですねぇ。……でもすごい効果」
マンドラゴラさんがうきうきと踊りはじめたのを見て、とうとう笑いを堪えられなくなったアーシュタが吹き出した。
<おわり>
参考資料
広島大学 試料の作り方




