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第二話 魔法植物研究室

「うふふふ、なにこれ!」


 午後出勤の上司が、現れるなり楽しそうに笑った。

 もうそんな時間かと、アーシュタはミシェルに休憩を勧めた。どおりでお腹も空くわけだ。

 二人の活躍で、植物園に日差しの入る場所が増えていた。三分の一ほどは、片付いただろうか。


「すっかり筋肉痛だよ……」

「でもどうして急に増えたんだろう? 水分も日光も肥料も、今まで通りだよね。何か条件が整った?」


 ぐったりしたアーシュタがガーデンテーブルに突っ伏す横で、ミシェルは首をひねっている。そのたびに金色の髪が揺れた。

 休憩がてら、状況と対処を報告すると、上司は知的好奇心を抑えられないとばかりに目を輝かせた。


「この爆発的な生命力……回復薬に向いてるかもしれないね」


 上司は愛用の革張りの手帳を取り出すと、さらさらと書き込んだ。その口元はうれしそうに綻んでいる。

 考えもつかなかったアーシュタは目を丸くして、刈り取ったトカゲヅルの山を見た。


「あとで燃やそうと思ってたんですけど……研究室に運びます?」

「ええ。あとで一緒に行きましょう。私も気になるわ。でもまず、増殖してる分をなんとかしなくちゃね」


 上司は元気よく立ち上がると腕まくりをして、小型の鎌を取り出した。


「もうちょっと休憩してから……」


 はりきる上司に、ミシェルが困ったように曖昧な笑みを返し、アーシュタは「お尻に根っこが生えたみたいに、動けないです」と、ガーデンテーブルに突っ伏したまま、力なく答えた。


***


 上司の鎌さばきは見事なものだった。壁に張り付いていたトカゲヅルを、あっという間に刈り取ってしまった。

 感嘆するアーシュタに、上司はほんの少し肩をすくめて「故郷にいた頃は、よく麦刈りを手伝ったものよ。……こんなふうに役立つとは、思わなかったけどね」と笑った。

 増殖したトカゲヅルをなんとか刈り取った植物園の面々は、手早く水やりを済ませた。魔法で束ねたトカゲヅルを抱えて、研究室へと向かう。

 曲がり角に差し掛かったとき、アーシュタの抱えていた束から一本、茎が床に落ちた。

 アーシュタは廊下に落ちた枝をつま先に引っかけて、ひょいと投げ上げた。トカゲヅルの束の上に乗った枝をあごで抑えて進むアーシュタを見て、上司は「アーシュタは変なところで器用なのよねぇ」と呆れたような、感心したような声をあげた。


「うおおおおおお!」


 研究室の前に到着したとき、中から想像もしなかった声が聞こえてきて、アーシュタは抱えたトカゲヅルを落としそうになった。


「失礼しまーす……」


 扉をそっと開ける。

 研究室には、マッチョがいた。

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