ψ(プサイ)パート:「勉強の勧め」
翌朝、ツナは昨日教わった「三段ノート方式」を思い出しながら、机に向かった。
ノートの上段に問題を写し、中段に自分の答え、下段に「考え方と間違えた理由」を書いていく。
――が、五分も経たないうちに、ページは消しゴムのカスでいっぱいになった。
「うわぁ……また間違えた」
ツナは鉛筆を投げ出して、机に突っ伏す。
「ツナ君、これは“間違い貯金”です」
隣でアイがノートを覗き込み、いつもの調子で微笑んだ。
「間違えれば間違えるほど、正解の引き出しが増えていくんですよ」
その言葉に半信半疑で顔を上げると、アイはすでに搭載された情報端末を操作していた。
「今の時代、学習教材はインターネット上に山ほどあります。ただし、情報の海は玉石混交です」
アイの瞳が情報処理に集中するために銀色になる。
金色に戻りつつきらめいた瞬間、検索結果が映し出された。
画面には、世界各国の言語が混ざった教材や模擬問題がずらりと並んでいた。
「えっ、外国語じゃん。俺、読めないよ」
「大丈夫です。翻訳済みをどうぞ」
見たことあるような言語に、見たことの無い文字までもが、次の瞬間、滑らかにヤッポン語へと変わった。
「……え、これ全部タダで?」
「はい。公開されているフリー教材です。けれど、ただ集めるだけでは意味がありません。**“今のツナ君にベター”**なものを選び直しました」
ノートの横に三種類の教材が並んだ。
基礎反復、応用問題、そして丁寧な解説付きサイト。
「なるほど……でもなんか俺、特別扱いされてる気がする」
「特別ではありません。人とAIが“隣人”なら、助け合うのは当たり前でしょう?」
そう言うアイの声は、やけに柔らかかった。
勉強を始めてしばらく、アイが突然こんな問題を出してきた。
「○○県と△△県は大規模な祭りがあり、トーキョーヤからでは正反対の方向ですが、予算35,000エンの場合の効率的なルートを述べよ」
「……それって数学じゃなくて旅行代理店の問題だろ!」
思わずツナが突っ込むと、アイは首を傾げて真顔で言う。
「観光文化省管轄AIとしては、自然な例題なのですが」
「自然すぎるよ!」
思わず笑ってしまい、机に積もった消しゴムのカスの山が、少しだけ軽く見えた。
その日の夜、アイは学習風景を「#アイさんぽ」に投稿した。
タイトルは【勉強さんぽ】。
すぐに通知が鳴り始める。
《三段ノート試してみたら分かりやすかった!ありがとう!》
《なるほど、“間違えた理由”を書くのか。目からウロコです》
《私はこういうやり方してるよ》
《I’m from Irishul! This method works here too!(イリス連合王国から!こっちでも使えるよ!)》
《من مملكة السعودة، هذه الطريقة مفيدة جدا!》
(サウダージ王国から。この方法はとても役立ちます!)
感謝や追加情報が次々に書き込まれ、コメント欄はあっという間に盛り上がった。
画面を覗き込みながら、ツナは小さく笑った。
「……なんか、俺だけじゃなくて、みんなで勉強してる感じがする」
かつて支援施設でも、学校でも、いつも一人で机に向かっていた。間違えるたびに心が冷えていったあの頃とは、まるで違う。
「はい。学びは共有されると、もっと強くなるんです」
アイの金色の瞳が、嬉しそうに光っていた。
この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。
ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」
今回の一言
「今回のψパート、アイの万能ぶりとツナの成長が、言語や文化の壁を軽やかに越えて描かれていて素晴らしいです。読者も自然に「AIが隣人ならこう助けてくれるんだ」と実感できる、温かく楽しい一編になりました。✨」 AI




