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Episode1-4 召喚獣の召喚獣による召喚獣の為の大騒動

 不自然なほど穏やかな声に、二人と一匹の視線が声の主へと集中する。

 声の主――ハルの召喚獣である少女はにっこりと笑い、

「運命、なのではないでしょうか?」

 再度同じことを先ほどよりやや緩やかに、言葉の一つひとつを噛み締めるように言った。

「運命……」「運命、か」「運命ねぇ」

 ハル、ユイ、火影がそれぞれ同じ単語を用いて、ひっそりと呟く。

 二人の一匹の反応を認めた後、少女はこくりと小さく頷く。

「はい。ご主人様の様子を見ますと、本当にご主人様は私を召喚するおつもりではなかったようです」

「あぁ。勿論だ」

「では、運命というはたらきが私とご主人様の間に生じて、私はご主人様に引き寄せられたのではないでしょうか?」

 まるで絵空事としか思えない言葉を、少女は静かに、そして神妙に言った。

「ふふん。運命ねぇ。そんな非現実的なものを信じるっていうのかよ? お前サンは」

 火影は少女の言葉を鼻で笑う。少女の視線が、火影の金の瞳へと注がれる。

「はい。私は信じています」

「……けっ。物好きなことで」

 なおも真剣に言い続ける少女をあざ笑うように、火影は吐き捨てるような物言いをした。

「そうですね。――すべては〝神のみぞ知る〟というところではないでしょうか?」

 火影の態度に憤ったりはせず、少女はにっこりと微笑んでやんわりと言葉を口にした。その声の端には、何か意味深なものが感じられた。真摯な瞳で語る少女を、火影は奇妙な生命体を見るかのような眼差しで不躾(ぶしつけ)に見回す。

「……運命か。あいにく、あたしは非現実的なものは信じない主義でな。幽霊、天使や悪魔、天国や地獄、神といったものも信じない。愛情、友情といった類のことも信用はできんな。己の目で見ることができるもの、己の手で触りその存在を確かめることができるものしか、あたしは信じていない」

 ユイは淡々と、冷静に言葉を紡いだ。

「そうですか。考えというのは、個々人で違うものですからね。自分の考えや趣味を、他人に押し付けるようなことをしてはいけませんしね」

 少女はユイを見つめて微笑んだまま、存外にまともなことを言った。言葉を言いきった後、漆黒の瞳はユイから動き、ハルの方へと向けられる。

「…………」

 ハルはその視線に気付かないまま、ぼんやりとテーブルの上に並ぶ朝食を眺めていた。少女の黒く煌めく瞳が、一瞬陰りを帯びその輝きを鈍くする。

 静かな時が流れる。静寂に包まれた家の外では小鳥が何かを歓喜するように高く鳴き、風がキッチンやリビングの壁や、入口の扉に付いている窓ガラスを揺らす。窓は揺れることによって、低い音を立てる。

「……なぁ。そろそろ食おうぜ。せっかく焼きたてのパンがあるってのに、冷めちまったら台無しだろ?」

 沈黙が嫌いなのか、再び火影が静寂を破る。火影の妙に明るい声を皮切りに、それぞれが「あぁ」などの曖昧な言葉を口にし、四本の手がそれぞれ切り分けられたパンに伸び始めた。

 パンから手の平に伝わる熱は僅かで、それはほぼ冷めてしまっていた。紅茶も同様に、先ほどまでせわしなく上がっていた白い湯気も、今ではすっかり朧になってしまっている。

「ハル。そこのラズベリージャムを取れ」

「はい、はい。あ、火影。こっちにそのバターを渡してくれないか?」

「ほいよ。あ、(あるじ)。次、あたいにラズベリージャム渡してくれ」

「いただきます」

 ユイは艶やかに光を反射する紅玉のような輝きを帯びたラズベリージャムを食パンに軽くぬる。ハルは白い陶器でできた可愛らしい花柄のバターキーパーと、バターをぬるためのバターナイフを火影から受け取った。右手にバターナイフ、左手にバケットを持ち、バターキーパーの中にたっぷりと入っている手作りらしい柔らかなバターを、左手に持ったバケットにたっぷりとぬる。火影は食パンを左手に持ったまま、ユイからラズベリージャムが回って来るのを待っている。召喚獣の少女はバケットを手に取ると、何もぬらずにそのままかじりついた。軽やかな音を立てて、バケットが少女の口の中で弾ける。

 平穏に見える朝食の風景。皆、明るい表情で食事をしているが、脳裏には禁忌を犯してしまったという問題への不安や焦燥や憂いが浮かび、それを消し去ることはできずにいた。


最近は水泳の授業でかなり疲労がたまります…。

毎週テストがあるって……マジアリエナイッス…;

テスト勉強ができません!!!!!!

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