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Episode1-1 召喚獣の召喚獣による召喚獣の為の大騒動

誤字脱字指摘、感想、批評、何でもお待ちしております。

 柔らかく抱擁するように白い、春の朝日。極彩色に彩られた景色は、見る者を圧倒するほど美しい。景勝を望む人々は、あまりの美麗さに息をのみ目を(みは)る。春独特の暖かな風は穏やかに草木を揺らし、花の芳しい香りを人々へ届ける。

「……ん。ぐあぁぁぁっ」

 昨夜、騒動を起こした張本人である青年は、ある程度片付けられた自室のベッドの上で唸るような声を上げつつ、両手両足を目一杯伸ばして大きく身体を広げた。ベッドに敷かれた純白のシーツは、ガラス窓越しに降り注ぐ光に照らされてより一層その白さを増している。

「…………」

 仰向けに寝転んでいる青年は、寝起きのかすむ視界の中で天窓つきの高い天井をぼんやりと見つめる。天窓からは目にしみる蒼さを放つ空が、鮮やかに覗いていた。

「おはようございます、ご主人様。昨夜はよく眠ることができましたか?」

 ふいに響いた、柔らかく澄んでいて僅かに幼さを残した声。青年は入口の方向から唐突に上がったその声に、はっと目を見開く。かすんでいた景色も、今でははっきりと認識できる。

 青年は緩慢な動きでゆるりと瞼を下ろすと、腹筋に力を込めて上半身をベッドの上に起こした。耳障りな音を立てながら、ベッドのスプリングが悲鳴を上げる。夜中に青年が蹴っていたのだろう。足元で半分落ちかけ状態の白い塊となっていた薄い掛け布団が、ベッドの揺れに耐えきれずに軽い音を立てながら床へと落下した。

 青年はふわりと軽く瞼を上げる。男にしては長いまつ毛が僅かに震え、美しく澄んだ黒眼が姿を現す。

 青年はそのままベッドから降りようとはせず、顔だけを声の上がった入口へと向けた。開け放たれ、後方の窓から降り注ぐ白い光に包まれてそこに立っていたのは、

「ご主人様、お姉さまのユイ様が今すぐ起きるようにと言っておりました」

 案の定、にこりと微笑みながら青年を見つめていたのは、昨夜青年が召喚してしまった(・・・・・・)蒼い髪と黒い瞳を持った美少女の召喚獣だった。今日は白い肌を露出してはおらず、寝巻に見える質素な白いシャツと七分丈のズボンをはいていた。腰にとどきそうなほど長いウェーブのかかった蒼色の髪は、まとめずにそのままおろされている。

 青年は大きなため息をつくと、細かい埃を舞わせながらベッドへと再度倒れた。

「どうされましたか? ご主人様。二度寝はダメですよ」

 青年は朝日の中で綺麗だと思えるほど煌めく埃を忌々しげに目で追いながら、苛立ったような声音で返す。

「これは二度寝じゃない。現実逃避(・・・・)だ! くそっ……。昨日のことは夢であってほしかった――って、あぁ?」

 青年は先ほど上半身を起こしたときよりも素早く身を起こし、身体を反転させて両手をベッドの上につけ、食い入るように身体の下の白いそれを見つめた。黒い瞳がベッドを穴があきそうなほど見つめた後、

「オレ、どうやってベッドで寝たんだっけ……?」

 酔っ払いの科白のような言葉を、ポツリともらした。

 青年の訝しげな声に、少女の即答が返って来る。

「ご主人様は気絶なされたのですよ。それを、私がベッドまで運ばせていただきました」

「は、ぁ……」

 少女の言葉によって、青年の脳内に昨夜の出来事が走馬灯のように駆け巡りかけた。その思いをかき消すように、青年は慌てて首を横に激しく振る。

「ご主人様、ユイ様がお待ちです。早く起きてください」

「……イヤだ。ヤダヤダ、絶対にヤダ。今日は一日中寝てたいんだ!」

 八つ当たりをするかのようにベッドを両手で殴り、駄々っ子のような言葉を吐く青年に対し、少女は困ったような笑みを浮かべる。

「聞き分けのないことをおっしゃらないでください。ご主人様」

「大体!」

 青年はふいに両手を止めると、噛みつくような勢いで入口に立つ少女を振り返った。召喚獣の少女は、苦笑から一変してきょとんとした顔で青年を見つめる。

「その〝ご主人様〟って呼び方は何だよ? 普通、召喚獣は自分の主人のことを〝主様(あるじさま)〟と呼ぶものだろう?」

 青年は突き刺すようにして、勢いよく少女を右手の人差し指でさす。少女は「あぁ」と言ってから笑顔全開で青年を見つめる。

「それは、ユイ様の召喚獣であられる火影(ほかげ)様がご主人様と呼んだ方が、(あるじ)はお喜びになるだろうと申しておりましたもので……」

「火影ぇぇ……。くそっ……。後で十発くらいぶん殴ってやる……!」

 青年は熱い炎のように瞳をぎらつかせ、低く唸った。

まだまだ波に乗っていませんが、頑張りたいと思います!


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