Episode1-7 召喚獣の召喚獣による召喚獣の為の大騒動
しゅんと視線を落とす少女。その姿を目の端で捉えていたユイが、何かに気付いたかのようにふっと視線をハルに向け、口を開いた。
「あぁ。そうだ。ところで今日、バケットの材料がなくなった。というか、小麦粉を使いきってしまった」
「はぁ!? えっ、じゃっ、じゃあ、バケットどころか、パンさえも作れないってことか!?」
ハルは大声を上げ、驚きを明らかにした表情でユイを見つめた。
「何当たり前のことを言っているんだ。そうに決まっているだろう。小麦粉以外のものでどうやってパンを作る?」
「や、そうだけどさ……」
ハルは気落ちしたように肩を落とし、もはや小さな屑しか残っていないパンを見つめた。
「このままだと、明日の朝はパンなしだな。今日の三食分くらいは焼いてあるが、この様子だと明日までは持たないな」
「……うん」
ハルは曖昧な返事を返す。
召喚獣の少女は、落ち込んでいる主人を見て悲しげに顔を歪めた。まるで、主人の悲しみは自分の悲しみであるかのように。
長々と兄弟喧嘩のようなことを繰り広げる二人に飽きたのだろう。二人の姿を見ていた火影は、テーブルに頬杖をつくと大変つまらないという風に、大きなあくびをした。もしかすると、この二人と暮らしている火影にとってこのような言い争いは、日常的なことだからつまらなかったのかもしれないが。どちらにしても、火影の興味は二人の会話にはないということだ。
少女は考えにふけるように唇に右手の人さし指を当ててテーブルをぼんやりと見つめる。
ユイは大げさなため息をこぼし、
「パン、食べたいなぁ」
わざとらしい大声で嘆いてみせた。
「そうだな」
半ばあきらめかけ、投げやりに答えを返すハル。
「パンがないということは、バケットもなしということだな」
「うん。そうだけど。……それで?」
「バケットなしはいやだなぁ。特にお前は今日、バケットを食べたかったのに食べられなかったじゃないか」
「あぁ。え……?」
やや嫌な予感を感じながらも、相槌を打ち続けるハルは僅かに視線を上げる。そして、刹那に上げなければよかったと後悔することになった。
視線の先にいた姉は、ユイは、ハルを見ながらニヤリと意地悪く笑っていたのだ。
ハルが背筋にぞっとする何かを感じたその時。ふいに召喚獣の少女は閃いた。少女の瞳が瞬く星のように輝く。
「そうです! パンがなければケーキを食べたらいいのです!」
「どこぞの処刑された王妃みたいなこと言うな! っていうか、小麦粉ないとケーキも作れないから」
顔を素早く少女へ向けたハルが、間髪を入れず突っ込みを入れる。
「むぅ。そうなのですか……。けれど、昔そんなことを言っている人がいましたよ? その方は王妃ではありませんでしたが……」
まさかのケーキの原料を知らないという少女は、瞳を瞬時に曇らせる。
「全く。無知なのか、賢いのか……。あぁ。その言葉は、どこかの国の王妃が言ったことになってるけど、一説ではその言葉を言ったのは王妃ではなく、ただの貴婦人だったって言われてるな。しかも言ったのはケーキじゃなくて……って。こんな雑学を披露しててどうする!? とにかく! この言葉は、パンが買えないならケーキを買えって意味だから、作れるとか作れないとか材料がどうとかって話とは別なんだよ」
長々と語ったハルは、一気に疲れが身体へ押し寄せて来たかのような表情で、自分のカップへ手を伸ばす。その中に入っていた冷え切った紅茶を口に含み、喉から胃の中へと一気に流し込む。
乱暴にソーサーへカップを置いたハルは、その手で頭を抱え眉をしかめる。
「そうですか……。あ! それならば、買いに行きましょう! 材料を今日中に買えばよいのです! ここは町はずれみたいですけど、歩いて三十分もあれば街には付く距離ではないかと推測します!」
少女の弾んだ声は、
「なかなか冴えているじゃないか」
「うん。そうだけどさ……」
「あー。〝だけど〟だな」
ユイは腕を組んで笑い、ハルは気まずそうに横を向いて視線を床へ落とし、火影は意味深は言葉をはいた。
「何か、問題でも? 何故かご主人様が、大変嫌がられているように見えるのですが……?」
「そうだよ、その通りさ。オレは絶対に街へは行きたくない」
ハルは顔を引きつらせ、厳しい口調で吐き捨てる。嫌がるハルを無視して、
「行け」
ユイは即答で命令した。これ以上ないほど、大変簡潔に。
「だから、何でオレが行かなきゃいけないんだよ。オレは嫌だって言ってるだろ。これだけは引き下がれない」
「嫌? お前、姉に向かって嫌などと言っていいと思っているのか?」
「オレの人権無視ッ!?」
ユイは悪いことをした子供を叱る親の様な、もしくは自分勝手なガキ大将のような口調で、「嫌」という言葉を強調してハルを攻めた。ハルは突っ込みをいれたものの、姉の態度にたじろく。
「何戯言を言っている? ハル、これは命令だ。今日中に街へ行って小麦粉を買ってこい」
ユイは上からの態度を崩さぬまま、ハルに言葉を突き刺すように声を発する。
「だって……。だって、オレが街に行ったら……」
「行ったら、何だ? 世界が破滅するのか?」
「や……。そんな神的存在じゃないけどさ、オレ……。そうじゃないけど――」
「では、行って来い。今日中に」
ユイの冷酷とも思える言葉に、ハルは顔を思い切り歪めた。
「知ってるだろ、姉貴。オレが街に行ったらどうなるか。世界は破滅しないけど、オレが破滅する恐れがある」
ハルの一転して神妙な口調に、ユイはずばりと答える。
「お前が破滅しようと知ったことではない」
「お前それでも姉か!? オレは本当は姉貴とは血ぃ繋がってないのか!?」
「あたしを〝お前〟呼ばわりするな!」
「そっちかよッ!!」
二人の言い争いを見つめながら、火影はやれやれとため息をつき、少女は僅かに眉を寄せてきょとんと小首をかしげていた。
そんなに皆、パンが食べたいか!?
私はそんなにも激しいパン議論を求めてはいないぞ!
手が、勝手にタイピングするだけだ←
ってな感じで、そろそろ話の展開が望めます(訂正・と思います);
砂漠の薔薇の方は、なかなか書けないです;
何故!? 今結構書いてて楽しい展開の場面を執筆中なのに!?
月曜日の国語のテストか!? あれが気がかりなのか!?
あんなもの、諦めちm((殴
国語だけはいい点数をとりたい甘楽です。
中間は、どうしてあんな点数をとってしまったのだろう;;
や。全然赤点からは遠いんですが;