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2-2

「お前の体質はわかったつもりでいるが、今のは嘘だろ。生者や死者はオレ達と違ってそんな力ないってオレ学んできたぞ」

「実演しないと理解得られんよなこれ……ちょっと今くしゃみの気配が無いから証明できなくて申し訳ないんだけど、爆発が発生するのは本当だから、一旦覚えておいてだけくれん? 一応これ不幸体質の影響で得た力だと思ってるし」

「はぁ……まぁ覚えておいてはやるよ」


 冗談だろ、と言わんばかりに呆れたコニッシュは再び歩き出してしまう。しかし実際見せてみないと証明することは出来ない。自然と咳のチャンスが来るのを待つのみである。手を引かれるままに自身も再び歩き出してコニッシュと歩幅を揃えた。


「とりあえず言っておくと、何も無いところだと爆発しないんだよね。誰かしらいるとか、何かしら壊れる物があるとか、そういうところで爆発するようになってる」

「つまり……どういうことだ?」

「自分がくしゃみや咳をすれば必ず人や物に対して害が発生する」

「最悪じゃねぇか……お前、絶対冥王様の前でくしゃみするなよ」

「くしゃみって突然だから保証は出来ないなぁ」

「おい」


 こいつ試練が必要な魂の持ち主なんじゃねぇか、とぼそぼそ口走ったコニッシュの言葉を聞き流した。罪人担当の導き手に弁明の間もなく狩られるフラグを自ら上げてしまったような気がする。そして冥王の前でくしゃみをするフラグもだ。


「……待てよ、お前と少し会う前に爆発が起きてたな、河原で」


 歩きながらこちらを見たコニッシュの言葉に、心当たりが浮上する。冥界に来た際、自分自身のくしゃみで目覚めた覚えがある。その際に、轟音と振動を感じ取ったことも覚えている。石と川しかないあの場所で、くしゃみの標的になったのは何だろうか?もしかしたら何も知らない通行人を爆発に巻き込んでしまった可能性が頭をかすめ、思わずコニッシュから目をそらした。ちくちくと刺さる視線を感じないようにしつつも、今の会話の中で気になった事があり、話題を変える。


「生者はオレ達と違って……って、コニッシュや冥界の連中は特殊な能力持ってんの?」

「爆発……は持ってねぇけど、火を操るとか、水を生み出すとか、そういうのは全員持ってるぞ」

「突然剣と魔法の世界みたいな話するじゃん」


 冥界、されど異世界と言わんばかりの事を言われて少しだけわくわくしてしまう。よくよく考えればランタンが鎌に変形するのだから魔法に近いモノなどあってもおかしくないのだ。場所が冥界だから魔法というよりか妖術とかそういう類のジャンルなのかもしれないが。


「じゃあコニッシュも魔法……異能力?妖術かな?使えるってことか」

「普通に術でいいぞ……オレはまだ未熟だけど風を操ったりとか、そういうのなら。冥界の住民それぞれで生み出したり操れるものの種類……属性は分かれてる。オレの同期の導き手には雷を操れる奴と、火を操れる奴がいるぞ。大体住民一人につき属性一種類だけだから、火も水も風も……なんて奴はほぼいないな」

「風! いいじゃん……ちょっと見せてほしいかも。もしかして竜巻とか起こせる?」

「見せるには見せるが……お前が期待してるような凄いのは無理だぞ……未熟だって言ったろ……」


 一旦コニッシュは繋いでいた手を放し、もう片方の手に持っていたランタンを置く。両手を前に突き出して、ひと呼吸。


「『風球』」


 その言葉と共に、コニッシュの両手の先に風が集まり始める。直接はっきりとは見えないが、周囲から風を集めるように髪がなびく。どれくらいの風力があるのかと触ろうとしたら危ないからやめろと止められた。


「まだこの程度しか出来ないけど……術ってのがあるのはわかってくれたか?」

「そりゃもうバッチリ。十分凄いと思うぞ」


 ほっとしたのかそれとも今の言葉に満足したのか、コニッシュがふぅとため息をついた拍子に集まった風がほどけた。ひゅお、と吹いた風が頬を撫でる。今後も成長していくんだろうな、と思ったと同時に鼻が風に擽られたのかむずついた。


「ごめんくしゃみ出る……っくしゅ!」

「え」


 瞬間、背後で響く轟音と振動。コニッシュが持っている能力を開示したからか順番だと言わんばかりにくしゃみのタイミングが巡ってきたらしい。目を剥いたコニッシュと共に爆心地を見やり、もしかしたら誰かいたか誰かの大事なものがあったかもしれない、と被害に遭ったかもしれない誰かに対して内心で手を合わせた。


「……マジで爆発した…………」

「ね、嘘じゃなかったやろ……こんなん持ってるから現世で居場所失くしたんだわ」

「まぁ、いつどこで爆発起こすかわからん奴を近くに置いておくのこえーもんな……」

「だよねぇ……納得の村八分」


 二人で顔を見合わせて、爆発元から離れるようにそそくさとその場を後にする。周囲を確認して、誰にも見られていないと頷きあう。冥王の元に向かう道中で最もコニッシュと息が合った瞬間かもしれない。ある程度歩を進めて、爆心地が見えなくなったころに互いにほっとして思わずハイタッチを交わした。

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