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1-エピローグ
「……回収に失敗しただと?」
月の影が差す屋敷。着物を纏った男が煙管を片手に、不機嫌そうな声を上げる。片膝を立てて頭を垂れる者は、恭しく着物の男に何かを伝える。
「突然地面が爆発して吹き飛ばされた……? 何故……? まさか、既に気付いた奴がいるという事か? 悠長な冥界の奴らにしては随分と早い……仕方ない、次は数を増やせ。あれの存在に気付いた奴らが妨害を仕掛けてくる可能性を視野に入れろ」
ふぅ、と着物の男は煙管を吸い煙を吐き出す。吐き出された紫色の煙が風に吹かれて空気に溶けていく。彼の部下と思わしき者が何かを求めるように頭を上げれば、男は風に揺れた長い茶髪をくしゃりと撫で、にぃっと口元を歪めた。
「見分け?簡単だ、この冥界では唯一の生者だからな。誰が見てもすぐに判る……次は抜かるなよ。絶対に回収しろ、いいな?」