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1-3

 ランタンの青い炎で前方を照らし、二人きりの河原散歩。目的地まではまだ少し距離があるように見えた為、少しなら質問も出来るだろうとコニッシュに問いかけた。


「ここって何?」

「え?あ……ここは冥界です。死者の方によっては地獄とか天国とか、死の国とか呼ばれ方が違うみたいなんですが」

「あ、やっぱり。じゃあそっちは死神ってところか」

「し、死神ですか……?えぇっと……」


 予想は確信に変わった。出会った時に死者だと言われたためほぼほぼ確信はしていたが、やはりここは死後の世界。改めて確信するとほっとする。これで自身の不幸体質と厄介な能力とおさらばして、来世に期待できるのだから。


「死神もここじゃ呼び方違うんかな。なんかこう……魂を刈ったり運んだりするみたいな……」

「あっそうですね。そのような仕事をする者……僕もそうなんですが、ここでは導き手と呼ばれています。僕はまだ研修が終わったばかりの新入りですが」


 明らかにまだ幼さが見える程度には若いのに仕事か、と一瞬思ったが、冥界なら彼らの見た目の年齢はあてにならないかもしれないな、と考え直す。死後の世界とはいえどコニッシュの見た目からして異世界であることに間違いはないのだから。


「ちなみに年齢どんくらい?」

「僕ですか?姿を得て十四年です」

「見た目通りだったか……冥界の寿命ってどれくらい?」

「寿命……姿を保てる期間でしたっけ。基本的に千年です」

「そこは長いのか……」


 どうやら、もう少し成長したらほとんど見た目の変化は無くなるらしい。そう説明し終えた後、コニッシュは苦笑いしながら「死者の方は皆そういう質問をするんですね、研修で習った通りです」と言った。


「接客のチュートリアル客になった気分だ。ポイントカードでも作る?」

「ぽいんとかーど……?」

「支払いは千円丁度で」

「せんえんちょうど……?」

「ごめんなんでもない忘れて」


 研修でも習っていないような質問をされたからか首を傾げたコニッシュに謝り、他にどんな仕事があるのかを問いかける。


「他の仕事……穢れ祓いという仕事があります。死者の方々の言葉で言うと清掃業、と呼ばれるものに近いらしいです。後は冥王様の補佐をする事務官や、冥界の住民を纏めたり住処を整備したりする住居管理等といったものがありますね。僕達のような新入りには仕事に慣れた先輩の方々が直接指導してくれます」

「案外冥界も変わんないもんなんだ」

「死者……僕たちの持たない知識を持つ方々と関われるという点もあるのか、導き手が一番人気らしいです。逆に、穢れ祓いを志望する者が少なくて困っているって先輩が言ってました。あまり表に出ない仕事なのと、場合によっては危険な時もあるので」

「……冥界も変わんないもんなんだねぇ」


 そんなこんなで会話をしていれば、前方に建造物が見えてくる。青い炎の灯った松明が照らす一つの建物。高く煙突のようなものが伸びており、注視すればきらきらとした光が出ているのが確認できた。こちらです、と手を引くコニッシュと共に建物へと足を踏み入れれば、集まった死者であろう人間達が浄化のようなことをされて、光の粒に変わっていくのが見える。煙突から見えていたのは浄化された死者だったのか、と勝手に納得して頷いていると、作業を終えたであろう死神……導き手の者がこちらの方へと振り返る。


「うおっ典型的イメージの死神そのものみたいなのが!」


 フードで頭まで包まれていた為姿は見えていなかったが、振り向いた導き手はコニッシュとは違い骨だけの存在であった。それこそイメージする死神の姿がそっくりそのままいたような感じだ。あまりにも失礼な反応をしてしまったからなのか、骸骨な導き手はかた、かたと顎を鳴らし、こちらに近付いてくる。もしかしなくても失言だったかもしれない、これから説教されるか最悪首を切られる、などと考えてしまう。


「先輩、着地がずれていた死者の方を連れてきました!」


 コニッシュが少し名残惜しそうに手を放し、緊張気味に報告する。どうやら彼の先輩のようで、思わず冥界は現世と違って様々な種族があるのだなぁ、などと思っていたが。


「……生者…………?」


 震える骨の音と共に耳に届いた声に思考が一気に現実に引き戻され、目を瞬かせた。今彼はなんと言ったか。目の前にまで来た死神は、こちらを見てはっきりと『生者』と言った。横にいるコニッシュかもしくは他の死者に向けて言ったのではと一瞬思考が及び周囲を見回したが、後輩であるコニッシュをそう呼ぶ理由はないし自身の周囲に他の人間はいない。先輩が驚いているからかコニッシュも驚いたように目を見開いてこちらに視線を向けている。

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