オプスキュリテの誕生日
春が来て、オプスキュリテの誕生日が来た。
オプスキュリテはこれで十四歳になる。
誕生日会が開かれた。
「リト、おめでとう!」
みんなで口々にお祝いの言葉とプレゼントを送る。
リトは笑顔でそれを受け取る。
「えへへ、ありがとうございますリア様。みんなも…ありがとう」
「リト、今日は私お泊まりしようと思うの」
「え、本当ですか!?」
「そう、リトの部屋に泊まってもいい?」
「もちろんです!」
今日はリトに…母親の遺品の日記を渡すつもりだ。その時一人で見なくて済むよう側にいようと思う。
みんなは私の雰囲気で何か感じたのか、リトだけ狡いとは言わない。
リトもなんとなく何かを感じているらしいが、特に何も言わなかった。
そしてお誕生日会でみんなで美味しいものを食べ、リトを限りなく祝福してからお開きになった。
みんなお風呂に入って、それぞれ部屋に戻り寝る準備をする。
「今日はリア様と眠れるなんて、嬉しいです!最高の誕生日です!」
「それはよかった。それでねリト。お誕生日プレゼントの他に、もう一つプレゼントがあるの」
「…はい、なんですか」
「これよ」
違反の日記を渡す。
リトはそれがなにかすぐに悟ったらしい。
「…リア様は、僕にこれを見て欲しいのですか」
「ええ」
「…リア様の望みとあらば」
リトは日記を開く。
日記には母親の赤裸々な思いが綴られていた。リトへの愛情、リトとの時間を持てない苦悩など。
今まで母親の愛情を否定して、そうすることで自らの心を守っていたリト。
リトは日記を読み進めるうちに、ボロボロと涙を零し…ぎゅっと日記を抱きしめた。
「…なんで、どうして」
「リト」
「どうして!!!」
その「どうして」という言葉に、どれほどの苦悩が…どれほどの憤りが含まれているのだろう。
母親を恨むことで自分を保っていたのに、母親が自分を愛していただなんて…だから命を賭して守ってくれただなんて。
今まで抱えていた思いもあって、色々な感情がぐるぐるしているはず。
ぐずぐずと泣いて、泣いて、泣く。
その小さな背中に色々なものを背負ってきたこの子だが、これから真実を知ったからこそさらに色々なものを抱えなければいけなくなる。
「リト」
泣くリトを後ろからぎゅーっと抱きしめる。
知ることは辛いだろう。
それでも知って欲しかった。
貴方は愛されていたのだと。
これは、このプレゼントは私のエゴ。
「ごめんね」
私の意味のない謝罪に、リトは驚いて振り向いた。
「でも、貴方に愛されていたと知って欲しかったの」
私の言葉に、リトはとうとう顔をぐしゃぐしゃにして大声で泣き始めた。
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