十五歳
よろしくお願いします。
学園編は、細かく区切って書いていく事にしました。
十歳と比べて短いです。
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私とマリーは、魔法学園に入学した。
ここは全寮制だ。
従者が一人つけられるだけで、家族は他に誰もいない。
女子寮は、広く豪華だった。
皆一人部屋だが、二年生の王女様のお部屋だけ広いらしい。
私は、マリーと一緒に、素敵な毎日を送っていた。
「もし、こちらを落とされましたか?」
ある日、寮の中をマリーと歩いていると、後ろから声がした。
振り返るとそこには王女様が、私のマル秘スケッチブックを手にたっていた。
「そ、それは!一体どこにあったのでしょうか……?」
「昨日、寮の中で落とされたのよ。その時にも声をかけたのだけど、気づかれなかったから。拾ってもち帰ったの。そしたら、凄いもの見ちゃったわ!」
王女様は、頬を赤らめている。
「書かれているのは、生徒会のキースとクリフよね?素敵な絵だわ。」
「す、少し失礼します。」
スケッチブックを受け取るとめくる。
あ、これ一番初めに書いた本人達二人の絵だ。
花の絵と違って言い逃れできない。
なんで、私こんな劇物を寮に落としたりしたのかしら。
家に保管して、私がいない間に見つかったらと思ったら、とても怖かったから、寮に持ってきたけれど、完全に裏目にでたわ。
「こ、これは違うんです。二人には、絵のモデルになってもらっただけで。」
「わかっているわ。子供の頃の絵だもの。今のお二人はこんなに仲良くなさそうですし。でも、見つめ合う二人が素敵だわ。」
「王女様もそう思われるのですね!私もとても素敵な絵だと思いますわ。サターニャの絵は最高なんです。」
「ちょっと、マリー。何を言って……。」
「サターニャ?ああ、季節の移ろいの作者のサターニャね!通りで素晴らしい絵だと思っていたのよ。」
まずいわ。
名前まで、把握されてしまった。
「この様な絵を寮に落としてしまい、申し訳ありません。私とマリーが、個人的に二人で楽しんでいたものなのです。どうか、他の方に話されない様にお願いします。」
王女様に深々と頭を下げる。
「あら、そうなの。それなら、私も仲間にいれて欲しいわ。それにパトリシアって呼んで。」
「パトリシア様、勿論です。私はマリー=スタチオと言います。是非、マリーと呼んでください!」
「ちょっと、マリー。王女様に向かってそんな失礼な……。」
「せっかくの仲間なのよ。大事にしなきゃ。」
「そうよ。サターニャも、私をパトリシアと呼んで。」
「パトリシア様がそれで、よろしいのでしたら。」
パトリシアは、にっこり微笑んだ。
「勿論良いのよ!二人とも、消灯まで私の部屋にきて。いっしょにお喋りしましょう。」
私達は、パトリシア様に連れられて、部屋を訪れた。
やっぱり、王女様の部屋は、他の部屋と比べて広いな。
「これを見てちょうだい。」
「これは?」
そこには、棒人間が二人いる絵だった。
「お兄様と、婚約者のルドルフ様よ。」
「申し訳ありません。人が二人いるのは、わかったんですが。」
「ええ、自分の絵の下手さは、良くわかっているわ。この絵は、二人がお互いを見つめ合っている絵なの。」
「パトリシア様も、元々そういうのが、お好きだったんですね!」
「ええ。城の図書室には、娯楽用の本も揃えているの。そこで、そういうものがあるって知ってから、私もはまったの。ただ、私には絵が描けなくて……。」
凄く悔しそうな顔をしている。
「それでしたら、サターニャに描いて貰えばいいんですわ。とっても得意ですもの。」
「本当?描いてくれるの?」
期待に満ちた目。
「ちょっと、マリー。でも、勿論ですわ。」
あの目を向けられて、断れない。
私は、スケッチブックの白いページに、生徒会で見た王太子様とルドルフ様をさらさらと描いていく。
王太子様が執務中で、隣で紅茶を差し出すルドルフ様。
こんな感じかな。
「上手いですわ。本物の様です。見てきた様に書けるなんて。」
「実は、見てきたんです。私の兄達が生徒会のキースとクリフで、私の婚約者がサナエルなんです。クリフは、サターニャの婚約者でもありますし、差し入れをしにいった時にがっつり見てきました。」
「向日葵の君、白椿の君、竜胆の君だけじゃなくて、あんな美しい人達がいるなんて。とても凄かったです。」
「そうだったのね!生徒会とそんな関わりがあったなんて知らなかったわ。私も今度、差し入れを持って一緒に行くわ。それに、その向日葵の君というのは、何?」
「ぜひ、一緒に行きましょう。向日葵の君というのは、愛称です。人前で話ができない時の為に、キースを向日葵の君、クリフを白椿の君、サナエルくんを竜胆の君と言ってるんです。」
「良いわね。それなら、お兄様とルドルフ様は何の花かしら。」
「王太子様は、金髪に碧眼。ルドルフ様は、銀髪に碧眼ですよね。うーん。金木犀の君に紫陽花の君なんていかがですか?」
「金木犀は香り高く、紫陽花は濡れると艶やかで美しい。私も好きよ。それでいきましょう。」
それから、三人でとても素敵な時間を過ごした。
パトリシア様のお話は、結構過激な物が多かった。
王宮にいると、侍女達の話が耳に入る機会があるらしく、耳年増になったらしい。
「話に付き合ってくれてありがとう。誰とも語り合えなかったから、とても楽しかったわ。」
「私達も楽しかったです。同士が増えて良かったですし、まさかパトリシア様が仲間なんて嬉しいです。」
「私もまたお話させて頂きたいです。」
「そうね。一々、私の部屋に集まるのも大変ですし、サロン塔を使いましょう。」
「サロン塔ですか?」
「ええ。三人以上で会が開けて、放課後に会を行うのに使う場所がサロン塔よ。校舎の二階の渡り廊下から、そのまま行けるわ。普段はお茶会を使うのに使っているの。これからは定期的に使うでしょうし、サロン塔の二階は私が好きに使って構わないと言われているから、そこを使いましょう。」
「良いのですか?」
「貴方達は、私の仲間だもの。話も面白かったし、是非近くにいて欲しいの。今まで、お茶会は、固定メンバーを作らず、開催していたのだけれど、これからは貴女達に固定メンバーとして協力して欲しいわ。」
「パトリシア様のお側にいるなんて、私のような男爵令嬢でも良いのでしょうか。」
「私が良いのだから、良いの。何か言われたりしたら、直ぐに私に言いなさい。これから、よろしくね。」
「こちらこそですわ。」
「私も嬉しいです。」
「それには、会の名前と会長を決めないと行けないのだけれど、決めたわ。薔薇の会で、会長は、サターニャ=ニンカを任命します。」
「パトリシア様を差し置いて、私が会長ですか?」
「そうよ、ただのお茶会だけじゃなくて、絵を描くことも目的にするの。そうしたら、三人だけで絵を描きながらお喋りをする時間も取れるから。学園には、私の方から申請しておくわ。」
「かしこまりました。」
「それから、お茶会を開くのに、私の侍女だけでは、人手が足りなそうで二人の侍女にも力を借りたいのだけれど、良いかしら?」
「勿論です。部屋にいる侍女に伝えておきます。」
「私もですわ。」
「良かった。サロン塔は基本学園生しか入れないから、後で侍女がサロン塔に入る為の許可証を渡すわね。久しぶりにわくわくするわ。学園では、娯楽用の本もないし、楽しみが無かったのだけれど二人に出会えてこれから楽しくなるわね。」
パトリシア様は、良い笑顔だ。
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読んで頂き、ありがとうございます。
こちらは、作者の他の作品である「せっかくヒロインに転生したから、攻略してハーレム作る気満々だったのに、まさかの隠しキャラの宰相に溺愛された」縮めて「まさかの宰相」と違い、不定期連載となります。
気長にゆったりお待ち下さい。
また「まさかの宰相」は、こちらのサターニャやパトリシア様等、登場人物がでてくる作品となっています。
そちらも是非、よろしくお願いします。