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6/7

「リリア」という名の「俺」

予定していた投稿より遅くなってしまいました。

本日もよろしくお願いします。


「………っ…!?」



リリアになった衝撃から頭を抱え込んだ直後、俺の心の隙を突くように膨大な情報(記憶)が頭になだれ込んできた。

それはかつての俺のもの(前世の記憶)ではなくこの世界で生きてきた少女(リリア)の15年という苦難に満ちた生の記憶だった。


俺はその憎悪とも呼ぶべき記憶が全貌を表し終えると、記憶を見た事により沈んでしまった気持ちを落ち着かせようと、顔を上げる。



見上げた空はいつの間にかあれ程までに綺麗だった青からどこか寂しさを感じさせるオレンジへと様変わりしていた。


そのせいだろうか?目の前の鏡に再び意識を向けると、その中に映っていた少女は、先ほどまで戸惑っていた(前世)でもなく、けれども果てしない絶望感の末に性格を歪ませてしまった本来の少女(リリア)とも違う、先程までとは別人の、まるで大切な何かを探す迷子のような、吹けば消え去ってしまう、そんな今にも消えてしまいそうな儚げな少女へと様変わりしていた。



そんな少女の写る鏡を凝視していて、俺はさらなる心情の変化に気がついた。

先程まではまるで悲劇の少女の物語を観ているようなどこか他人の・・そう、前世のように物語を読むイチ読者のような気分だったのだが、今現在では当時の彼女の想いや行動が俺自身が自分の意思で選択してきた人生のように思えてきている。

鏡の中に写るリリアの姿をみてもやはりというべきか、その思いと比例するかのように、先ほどよりも他人だという違和感が少なくなっていると感じる。

だからといって本来のリリアが消えたかと言ったら…心の中ではっきりと存在が確認できる。そんな不思議な感覚だ。








しかし、それはそれとして……と、俺は再び頭を抱える。

以前の俺はどうなったの!?とか、何故モブのリリアに・・というか女性になったの!?とか、そもそもリリアの設定重すぎない!?とか、もうどうしよう。俺の手に負えなくて途方にくれそ……「・・って、うわっ!?」



現在のありえない状況に動揺する俺を嘲笑うかのように一陣の風が部屋を駆け抜けていった。…いや、これは比喩でもなんでもなく本当に風が吹いた。

そもそもこの離れは雨が降れば雨漏りをする。という表現が烏滸がましいぐらいにはぼろぼろだ。

屋根は雨が降ればなんの抵抗もなく床を濡らすし、晴れの日の朝なんて日光が直接おはようと言ってくるだろう。…いや、リリアの記憶では実際に言ってきてたわ。

もし俺が吸血鬼であったなら確実に灰になっていただろう…と、それぐらいにはこの家はぼろぼろですかすかだったりする。


だからだろうか?外で吹く風も、無遠慮になおかつ中にいる家主に許可なく家に侵入し、(リリア)のトレードマークともいえる長く重い前髪をいとも簡単に持ち上げ、その下に隠れていたモノ()を白日の下に晒したのである。





そこにはリリアの記憶では当たり前と呼べる、けれど原作だけでなく他の媒体でも決して見ることのなかった俺にとってはある意味衝撃的な、まだ完全には混ざり合っていない不安定な今だからこそ感じる不思議な感情が俺を支配した。



やや垂れた、それだけでも愛嬌を感じるのには十分な瞳。さらにその中にはまるで蜂蜜を溶かしたような甘い金色が輝いている。


そんな不思議な魅力のある瞳と、年齢の割には発育がささやかな彼女の容姿も手伝い、見た目だけで言ってしまえば、聖リンのヒロインにも決して見劣りしない絶世の美幼女が多少の驚きの表情とともに鏡の中に写っていたのだった。




「……ん?」





当たり前と驚きという2つの相反する気持ちで自分の瞳を見ているとその瞳の違和感に首を傾げる。(ちなみに風はすぐ収まったが、瞳を見るために前髪は自分の手で上に押さえている。)


両方の瞳の中…具体的には金の色の中に丸い輪のようなものがある。そしてその輪は両方、そして上下で色が違っているのである。






右目は上半分が赤で下半分が黒。


左目は上半分が青で下半分が白。






輪の幅自体は細く、見た感じはそれ程目立っていないのだが、何故か目を離せない魔性とも呼べる何かを感じる。そしてその原因は




………これは、魔力か?




そう。瞳から絶えず魔力を感じるのだ。それも今まで感じた事がないほどの途轍もなく大きなものを。











おかしい。










前世では露になる事はなかったから知らない俺は当然として、15年間生きてきたリリアの記憶の中にもこんなものはなかった。彼女の記憶の中には至って綺麗なだけの金色の瞳が存在しているだけだった。まかり間違っても魔力を宿す様な、こんな独特な瞳をしていない。

……そもそも彼女の魔力は学園でも底辺に位置するほどのものだったはずだ。





ならばこれは一体…?




そう首を傾げていると誰もいるはずのない背後から



『ほう、珍しい。それは魔眼だな』



どこか冷たく、それでいてどこか楽しげな声が聞こえてきたのだった。


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