第二話
気がつくとそこは、よくわからない物だらけの部屋だった。
つるんとした壁、知らない道具、そしていくつも浮かんだサッカーボールくらいの球体。
「やっと来たね〜!」
のんびりした声に振り向くと、長い金髪を腰まで垂らし、よくわからないけど豪華そうな服をきた男性が目を細めていた。
「ここ、どこ?かあさまは?パイは?」
不安そうにミシェルは見上げた。
「約束通り、自我は新しく転生したようだね、よかったよ。
ここは…そうだな、神様の世界。君が生まれる前にね、スキルをあげたんだけど、説明してなかったから、ちょっとだけ呼んだんだ。パイはきっと取っておいてくれるから安心しなさい。」
どうやらこの人は神様のようだ。パイ、ちゃんとありそう!よかった。
「スキル、しってるよ!とうさまは火と土と風で、かあさまは光と水と風なの。いっぱいあってすごいんだよ!」
ミシェルは胸をはる。お勉強はまだ始まってないけど、護衛や領地の人たちがすごいすごいって言うから、両親のことは知っている。自慢なのだ。
「うーん、それは属性だね、その属性のスキルが使えるから君の両親がすごいことには変わりないんだけど……。まいったな、自我を引き継いでいない子供ってこんな感じか……。」
神様はちょっと悩んだあと、話し始めた。
「そうだな、君は知ってるけど、他のみんなには通じないことがあるだろう?おかしとかおもちゃとかだ。」
「うん……かあさまはお団子しらないみたい。あとね、プールもみんなしらないよ。」
「それはね、君がこの世界じゃない、他の世界で一度生きたことがあって、その世界で知ったことをね、君の魂……心が覚えているからなんだ。」
?????
ミシェルはポカーンとしている!
4歳の子供に説明するのは難しい。神様も大変なようだ。
「うーん、自動車ってわかるだろう?」
「わかる!のりもの!ブーンってはしるよ!」
「今の世界にはないだろう?遠くに行く時には何に乗る?」
「とうさまのマキか、まぐのもん!」
この世界では魔騎か、予め設置された門の魔具を使うのだ。
「それらは自動車のところにはなかっただろう?ちがう世界なんだ」
ふーん、と返事をするミシェルにホッとする神様。しかし。
「どうして?」
これが4歳児である。
どうして自動車ないの?
どうしてちがう世界なの?
どうして神様髪ながいの?
どうして髪ながくても邪魔じゃないの?
あの丸いのはなに?
どうして浮いてるの?
どうして?どうして??
「そのうちわかる。今は君のスキルを説明するから聞きなさい。パイがなくなるぞ!」
どうやら神様も万能ではないようだ…。必殺・意識そらしである。
「今は理解できなくていいから聞いていなさい。
君は適性属性で覚えられるスキルの他に、ユニークスキルとして泥団子スキルがある。前世で泥団子を極めた君が望んだものだ。泥団子を作ると、それを同じ形の何かに変換することができる。制約もあるが想像力が大事だ。」
「ゆにーくすきるってなに?へんかん?せいやく」
黙って大人しく聞いているだけなんてできるわけがなかった。
「ユニークスキルは、君だけが覚えられるスキルだ。
うーんそうだな、とにかく今は、泥団子をたくさん作るといい。大きくなったら良いことがあるだろう。」
それならミシェルでもわかる。泥団子を作るのは大好きだ。
「わかった!もう行っていい?パイあるかな?」
出口もわからないのに駆け出す4歳児にため息をつきつつ、神様はミシェルを送り出したのだった。
「はぁ、洗礼式まで待てばよかったな……。転生時に説明を忘れたからといって焦るんじゃなかった。」