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異世界武侠プリンセス ~姫が無双するので勇者にやることがありません~  作者: 解田明
第一章 ボーイミーツプリンセス
13/15

第13話 異世界受付嬢

「でしたら、是非ともあなたのステータスを拝見したいものですわ」

「そこまでいうのなら、見せてやろうじゃないの! “無双烈姫”何するものよ!」


 ファンローラはすっかり喧嘩腰である。そりゃ高貴な生まれのお姫様が、ゴブリン並みの【知力】と言われて怒らないはずがない。

 一方のアンヴァもムキになっている。ステータスの開示に応じるようだ。

 モブキャラの受付嬢にまでステータスが設定されているのはなかなか細かい。


「ほら、よおくご覧なさい」


 ばんっ、と机を叩いて開示したステータスがこちらである。

 

/////////////////

アンヴァ

クラス:ローグ2Lv、メイジ3Lv、マーチャント3Lv

能力値:

乾:8 兌:12 離:12 震:12

巽:10 坎:13 艮:13 坤:9


スキル:

《会計》3、《偽装》5《火炎魔法》2、《氷結魔法》3、《幻術》2、《神聖魔法》2

チート:

《封印》

/////////////////


「あらあら、能力値がたいへん平べったいですね。可もなく不可もないって、仕えないってことですよ。チートもないですし。勇者様のほうが成長の余白っていうんですか? ……そういう可能性を感じさせてくれます」

「はん! 【震】5に言われたくないわ」


 大事な勇者様が(けな)されたため、遠慮なく言いたい放題するファンローラである。

 さすがにアンヴァかちんと来ている様子だ。

 しかし、アマトもここでダシにされても、あまり嬉しくはない。

 チートはアマトと同じく《封印》だ。

 気になる、この《剣と魔法の異世界》では、《封印》というのはそこいらのギルドの受付も持っているくらいありふれているのだろうか?


「アンヴァさんもチートは《封印》なんですね」

「要は、チートなしっていうのを傷つかないように表現したものね」

「ええぇぇ……」


 悲しくなる。

 やはり、異世界転生したらチートで無双が醍醐味であるはず。

 だから《封印》が解けたときは、この世界にあらざるすごい力が発動するのではないかという期待に胸を膨らませていた。

 しかし、まさかそんな配慮した言い回しで表示されるとは思わなかった。

 真実を知ると、余計に傷つく。


「あっ、でもメイジだったんですねアンヴァさん。魔法も使えるみたいですし」

「多少なら使えるって程度よ? メインクラスはマーチャントだけど」

「だが、ローグが2Lvある。《偽装》5も含めて、こやつも結局のところ小悪党といったところだ」


 ゴルガスとローグのクラスがかぶっている。同類ということだろうか?

 しかし、ここでファンローラは見逃さなかった。


「アンヴァさん、《神聖魔法》使えるではありませんか」

「本業じゃないから、ちょっとだけよ?」

「回復魔法、使えますよね!」

「……行かないわよ!」


 アンヴァはファンローラの言いたいことを察して机を叩いた。

 《神聖魔法》が使える、すなわち回復魔法が使えるはず。

 だから、パーティーに組み込もうというのである。


「我が王家の言い伝えにこうあります。『立っている者、親でも使うべし』と」

「王家の言い伝えがことわざレベルって……」


 そういうことわざがあることを、アマトは思い出した。

 ファンローラの【震】5は、遺伝の可能性だと思わせるに十分だ。


「あたしは、あくまでも嫖局(ギルド)の経営者であって、斡旋業従事者なの!」

「ですが、嫖局(ギルド)が回復役の冒険者を揃えられないなら、経営者が責任を取るべきなのでは?」


 ファンローラが食い下がる。


「危ないことは、野蛮な嫖客(冒険者)がやればいいのよ! なんで上前はねて美味しい思いができるのに、わざわざ現場に行かなくちゃなんないの!」

「それを嫖客の前で言うか……」


 ゴルガスですら呆れている。

 登録する冒険者がいない理由を察したアマトである。


「だから、行かないって言ってるでしょ! 頭脳労働専門なんだから。仲介したほうが断然儲かるんだし!」

「これでいかがでしょう」


 ファンローラは懐から何かを取り出し、アンヴァの机の上に転がした。

 透き通った、赤い宝石だ。ルビーのように思える。


「ほ、宝石……! どこでこれを?」

「やっ―――!」


 その宝石に、ファンローラは鋭い踵落としを決める。

 派手な音がして真っ二つになる。


「ちょ、ちょっと!? 何考えて……ああああああああっ!?」


 アンヴァが絶叫した。

 机だけでなく、ファンローラが砕いた宝石も砕けていた。

 ルビーは、モース硬度 9.0の硬い宝石だ。

 それを砕くファンローラの足技は、さすがといえた。


「仲間になってくれないなら、もう一個砕くしかありません……」


 そう言って、床にころっと転がした。

 プリンセスだから宝石は持っている。ステータスにも記述されていた。

 アンヴァが仲間になるというまで砕くつもりのようで、床に転がしたルビーにストンピングの構えを取っている。


「母の形見なのです。大切にしていましたが、仲間になってくれないと言うならこれも踏み砕くしか……」


 ものすごく悲しそうな顔をして、足を上げる。


「あんた真性のバカなの……!? 最初から差し上げますとか言って報酬で出しなさいよ! なんでいきなりそんな大切なもの砕いちゃうの!? 意味わかんないわ!」


 もっともだとアマトも思う。

 プリンセスの交渉術としてありなのだろうか?


「ふーんだ、わたし【震】5だからよくわかりませーん」


 また往昔を踏み砕こうと、二,三個床に転がした。


「だからぁ! やめなさいよぉ!」

「じゃあ、パーティに入ってくださいますね?」

「入るわよ! 入るから! もったいないから宝石砕かないでええええ!!」


 アンヴァの言質が取れると、ファンローラは花のように微笑むのであった。

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