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異世界武侠プリンセス ~姫が無双するので勇者にやることがありません~  作者: 解田明
第一章 ボーイミーツプリンセス
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第12話 異世界パーティ

「その勇者さんがゴミステータス……あ、失礼。まだ初心者でも、残りの二人がいるからパーティの戦力は申し分ないねえ」


 ファンローラの殺気がこもりまくった視線を感じ、アンヴァは言い直している。

 その辺は、事実なので別に今更アマトモ傷つきはしない。

 実際、転生スキルもチートもないのだからハズレ、ゴミもいいところである。

 バッチリなステータスのSSRを引き当てるまでリセマラするのは、常識だ。

 しかし、ファンローラは初回で引き当てたコモンの力を信じて育てまくるタイプのように思える。

 自分が引いたものこそ最強と信じて使い続けるタイプは、(まれ)にいる。

 

「それで、仕事はあるのかないのか?」


 結局、いつの間にか交渉の役目もゴルガスが引き受けてしまったので、アマトから本格的にやることがなくなってきている。

 チートがなくても口八丁でのし上がるというパターンもあるが、アマトにはその才能もない。コミュ障というわけではないが、人に誇れるほどの対人能力もない。

 何より、相場がわからないのでゴルガスに任せるしかない。


「街道沿いに追い剥ぎができるんで、退治してほしいってのはあるけど。全部お縄にすれば、報酬は銀貨一〇〇枚ね」

「まあまあだな。追い剥ぎなんぞ駆逐したところで、すぐに次が出るだろうが」

「そんときは、もう一回おんなじことして稼げるし。いいじゃないの」

「追い剥ぎなんて、残らず片づけちゃいますよ!」


 ファンローラが鼻息荒く、身を乗り出してきた。

 彼女なら、間違いなくやってのけるだろう。

 百人は下らなかったゴルガス盗賊団を潰走させているのだ。


「でも、回復系がいないですよ、僕たち」


 この辺、アマトが心配しているところである。

 暴力と荒廃が広がる《剣と魔法の異世界》では、特に医療技術など通常のファンタジー世界に比べても格段に低いであろう。

 となれば、回復役は重要である。

 神聖魔法を使える僧侶なんていると、消毒や殺菌も清浄な力でやってくれそうだ。


「そんなの、やられなければいいんです」


 また、プリンセスらしからぬことをいうファンローラであった。

 なるほど、やられる前にやれば怪我もしない。

 防御役や支援系を否定する脳筋がかかりがちな発想である。


「でも、ファンローラだってダメージ受けたよね?」

「……むっ! 確かに不覚を取りましたが、大抵の傷はポーション飲んで一晩寝ると治ちゃいます」

「そうなの? ゴルガスさんに痛めつけられたと思ったんだけど」

「ですから、一晩寝たのでもう大丈夫です。鍛えてますから!」


 鍛えているからなんとかなるようなダメージには思えなかったが、実際にファンローラはピンピンしている。

 回復力がケタ違いだ。


「まあ、回復薬がおるのに越したことはないがな」

「ですよね? この嫖局って、冒険者ギルドみたいなもんでしょ? だったら、回復役の僧侶とか、登録してるはずですよ」

「いないわよ、僧侶なんて」

「……は? な、なんで?」

「なんでって、今の御時世、神に祈るようなヤツいると思う? 祈ったっておまんま食えるわけもないし。いても真面目なだけが取り柄のバカか、そのバカをだまくらかしてるようなインチキ坊主くらいなもんよ」

「えぇぇ……」


 神の仏もない言葉であった。

 しかし、アマトは女神様の導きを受けてこの異世界になってきた。

 いることはいるはずである。

 おお、女神様。あなたは寝ているのですかと天を仰いで言いたくなる。


「神様はいます。わたしも勇者様が召喚されるって神殿で託宣を受けましたから」

「だから、ハズレ引かされたんでしょ? そういうインチキ多いしね」

「むーっ!」


 反論もしようがないアマトであるが、ファンローラが代わりに怒っている。

 本当にアマトを勇者と信じてくれるのは嬉しい。

 しかし、当のアマト本人がステータスがゴミすぎていろいろ幻滅している。

 勇者と祭り上げられても、何かできるわけではない。

 申し訳なく思いつつも、ファンローラの期待がそろそろ重い。


「アンヴァさんでしたっけ? さっきからわたしの勇者様をゴミクズ呼ばわりするのは、我慢なりません! 謝罪を要求します」

「ゴミはゴミだっての。音に聞こえた“無双烈姫”なら、足手まといにしかならないと思うけど」

「たとえ手枷足枷をはめられようとも、わたしにはどうということもないんです! ゴミとかカスとか、ひどいと思います」


 ゴミやカスではないにしても、アマトは手枷足枷であるようだ。

 そりゃまあ、仕方ないと思う。

 この世界で、なんにもできそうもない只者なのだ。


「いや、アンヴァさんが言ってるのは正しいよ。僕、足手まといになるから」

「いいえ! 勇者様のお側でいるだけで、わたしは宝珠(オーブ)を揃える運命を引き寄せられるのです。そもそも、人のステータスを見ておいてバカにするなんて、失礼ではありませんか!」

「そうかもしれないけど……」

「わたしの勇者様をそのように言うのでしたら、さぞかし立派なステータスをしているのでしょうね。王国の王女として、開示を要求します!」

「あたしのステータス? なんでまたそんなことを……」

「あれ? もしかして自信がないとか? わたしより【震】が低かったりして」

「ちょっ、そんなわけないでしょ! 【震】5以下なんざゴブリン並みってことよ」


 【震】は【知力】を意味する能力値だったはずだ。

 まさか、転移先で知り合ったお姫様の【知力】がゴブリン並みとは思うまい。

 大きな衝撃に揺れるアマトであった。

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