第1話〜君の名前は?〜
第1話〜君の名前は?〜
「おらっ!さっさと歩け!!」
真っ赤な軍服を着た兵隊に後ろから張り倒された俺は、この不条理な世の中を恨んでいた。
ここは、地上から1000000km下にある地下都市ノアだ。昔、突然どこからともなく異形なる者が襲来してきた。それらは、特殊な能力を用いてたちまち人類は滅亡寸前まで追い込まれた。しかし、そこにメシアという名の救世主が現れ、地下都市ノアを創造し残りの人類をここに送り込み、地上から隔絶した。そして、メシアは王としてノアを治め、人類は豊かで安全な生活を送ることができるようになった。
このような伝説があるのだが今は全然変わってしまった。かつては人口が元の1%未満まで減少した人類も、今では70%まで増加した。これによって、食料不足や生活格差の拡大などの社会問題が起こった。さらに、メシアの血を引く王族による絶対王政により、電気ガス水道などのライフラインの99%は王族が独占する、一般人に作物を育てさせそれら全てを税として徴収し、一般人の食料や生活品は配給制にし少量しか渡さないなど、一般人の生活を苦しめる王族中心の政策が行われた。
そして俺は、一般人の中でも最下層の階級に位置する身寄りのない、つまり捨て子だ。俺みたいな捨て子が生活する方法は一つしかない。
『他人のものを奪う』
善悪なんかどうだっていい。そもそも考える暇なんて無かった。他人の食料、水、時には銃などの武器も奪った。
だが、ここまでのようだ…
とうとう、捕まってしまった。しかも、運の悪いことに相手は兵隊だ。兵隊は、一般人の中でも最も上位に位置する階級だ。兵隊は、犯罪確保などによって成績を上げて収入を得る階級だ。だがそれによって、近年は成績目当てで無実の人を無理矢理捕らえるという冤罪が多発している。そして、捕らえたあとはどうなるのか。通常は裁判にかけて罪を決めるのだが、数年前、王族会議で財政削減の名目で一つの法律が制定された。
『罪を犯したものは、どのような罪状でも死罪に処す』
つまり、俺は今からこのクソみたいな世界から消えるという事だ。それはそれで嬉しい気がするが、少しだけ心残りがあるとすれば…
「さぁ、今からお前を死罪に処す」
いつの間にか、俺はちょっとした広場に連れてこられていた。周りから少し血なまぐさい臭いが漂っているため、ここが兵隊による簡易死刑場というのがわかった。
「最後に言い残したことはあるか?」
兵隊はゲスな笑みを浮かべながら言った。今から俺は死ぬ。ならば、何を言ったって構わないだろう。そう思った俺は、今まで溜まっていた王族に対する不満を叫んだ。
「何がメシアだ!!何が王族だ!!こんなクソみたいな世の中作っといて救世主だとかふざけるな!!お前達王族が作った世界は、一部のエゴイストしか豊かになんねーんだよ!!何か違うなら言ってみろよ!!たとえ俺が今ここで死んだとしても、俺は絶対お前達王族を認めねぇし、許さねぇ!!!」
広場に俺の叫びが響き渡った。そして、ゲスな笑みを浮かべていた兵隊は顔を青ざめていた。それはそうだろう、王族への不平不満はご法度であり、もしバレた場合は死よりも辛い目に処すと法律で定められていた。
すると、青ざめた兵隊は急いで俺を殺そうと斧を振り上げた。
これで終わりか…
その瞬間、兵隊の首が一瞬で吹き飛び、そしてこんなクソみたいな世の中にまだ存在したのかと思うほど、綺麗で美しい声が俺の耳にこう囁いた。
「君の名前は?」
どうも、ヒッシーです!
初めての投稿で、色々戸惑っており緊張しています…
つたないアイデアと文章力の持ち主で頻繁に更新出来ないかもしれませんが、これから頑張って書いていこうと思っていますので、ぜひコメント等よろしくお願いします!m(_ _)m