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《文学の探求シリーズ一覧》

ほしのけもの

作者: 賀茂川家鴨

 あおいほしがみえる。


 ここはおおきな、すなのほし。

 すなのなかで、ほしのかけらをたべる。

 ほしのかけらは、すきとおっている。

 いろ、とりどり。ひかりのあじがする。


 すなから、かおをだして、ほしのかけらをさがす。

 ここは、なにもきこえない、せかい。

 めで、みる。からだで、しんどうを、かんじとる。

 いつ、なにかがおそってくるかもわからない。

 じっさいに、おそわれたことはない。

 けれども、しんどうすると、けなみを、さかだててしまう。

 きっと、なにかがおそってくるのだろう。


 あつい、かがやき、ほしをてらす。

 さむい、くらやみ、ほしをおおう。

 すなのなかでねむる。ここはいつもここちよい。


 すなから、かおをのぞかせて、ほしのかけらをさがす。

 ひときわおおきな、ほしのかけらが、せまってくる。

 どすん。

 おおきなすなのほしが、ちいさなすなのほしのかけらになった。


 むげんに、ひろがる、そらへ、とんでいく。

 ほしのかけらをたべながら、どこへいくのかもしらず。

 すなのなかで、ねむっていたい。

 かつてのすみかに、おもいをはせる。


 しろい、ほしに、ついた。

 おおきな、ふかい。あなが、あいている。

 なないろ、すなに、うもれて、ねむる。

 ここは、ほしのかけらの、ちいさなほし。


 すなから、かおを、すこしだす。

 あおいほしから、ほしのかけらのかたまりが、やってきた。

 なんども、やってきた。

 すなのなかで、じっとしていよう。

 おおきなしんどうがする。けれども、ねむっていよう。

 ほしのかけらを、たらふくたべて、ねむっていよう。


 ひかりかがやく、つきのいし。

 あおいほしに、はこばれた。


 おおきなほしのなかでねむる。

 ちいさなつきのなかでねむる。


 すなから、かおをのぞかせる。

 へんなけしき。とうめいなかべのそら。くらいところ。

 ここは、どこのほしだろう。

~解説~

 色とりどりの星のかけらは、2つの意味的効果をもつ、操作された表彰的記号である。メタファーといいかえてもよい。一方では、スペクタクルな娯楽ないし快楽であり、獣としての欲望に忠実にさせる効果をもつ。他方では、芸術ないし学問の欠片であり、理想的人間としての完成に新たな刺激を与える効果をもつ。

 とはいえ、主人公はあくまで獣である。獣は、生きる欲望に忠実であり、自分の知る世界こそが世界全体だと思っている。獣の意に反して、大きいと思い込んでいた小さな砂の星のかけらから、月へととんでいく。採取された月の石ごと運ばれて、月から地球へと旅立つ。カプセルに閉じ込められた小さな月の石の中で、獣は目を覚ます。理不尽にも、目まぐるしい環境の変化は、獣にでさえも人間的思考を強要する。しかし、獣はいつまでも獣であろうとする。その顛末が上に記した通りである。獣のその後を想像してもらいたい。

 目下の食欲と睡眠欲に明け暮れる行動を合理的とみなすか、否、目先の利益にとらわれて生計の立てられぬ非合理的な獣とみなすか。彼の愉悦に浸る消費行為を善とみなすか、否、社会的あるいは個人的規範にそぐわぬ怠惰として悪とみなすか。はたまた、それぞれ別の考えに至るか。各個人の想像上にある物語の幕切れに対する評価は、各読者諸氏に委ねることとしたい。

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