旅で出会った忘れられない異国の地での彼
オーストラリアに来て1ヶ月。
約10年続けていた仕事を思い切って辞めてからのここでの生活は本当に毎日あっという間だった。
ずっと来たかったオーストラリア。
来た目的は、海外に長期で旅行してみたかったのと、異国の色んな人と出会いたいそんな思いで1人で来てみた。
あとは、今いる彼氏の勧めもあってだった。
これが一番大きかったと思う。
彼氏の事が大好きで、将来は絶対に彼と結婚する!そんな思いで付き合っている彼氏と離れるのは耐え難く、正直、そんなに長期で行こうとはなかなか踏ん切りが付かなかった。
でも、彼にこれから2人で旅行に行くためにも1人旅での経験をもっと積んでほしい。
大好きな彼からの頼みであれば、離れるのは辛いけど、行ってみよう。
寂しくて耐えられなかったらすぐ帰ろう。
そんな思いで来てみたが、その時の私はその先に待っている一生忘れる事が出来ない衝撃的な出会いをするなんて、その時は夢にも思っていなかった。
まさか自分でもこんな出会いをするとは思わなかった突然の出会い。
それは、メルボルンでの事だった。
ここに来た目的の一番は、グレートオーシャンロードのツアーに参加するためだった。
ワクワクしながら迎えた当日。
バスに乗った時に、座りたいなと思った席を断られて、空いていた彼の隣にたまたま座った事から全て始まった。
旅をしているように見える彼は、どこか遠慮がちで、自分からすごく積極的に話すタイプではなさそうな感じ。
髭を生やしていて、長く伸ばした髪を後ろで束ねている姿は、とても似合っていて私にはとてもワイルドな感じで格好良く見えた。
なんとなく彼がじっと見てきたり、私もなんか気になって見つめたりしながら、上手く話しかけられなくて。
でも、私から今日は暑いよね〜!なんてたわいもない話をした事から、彼も話しかけてくれて、お互いの事を少しずつ話す事が出来た。
彼は29歳のスイス出身の男の子。
私は32歳。ちょっと年上だなって思いながらも、特に彼は気にしてなさそう。
私は上手く英語が話せなかったけど、そんなのあんまり関係なくて、なんとなく初めてあったばっかりなのに、彼に惹かれる自分がいて。
彼の顔立ちや雰囲気や、優しさや、たまに冗談をいう彼のいたずらっぽい顔や笑顔が本当に素敵で。
とにかく笑った時の目が本当に優しくて…
その時の事を何回思い出しても、忘れられない彼の全て。
隣に座っている時間が心地よくて、丸一日のツアーが本当に楽しくて。
そして、ツアーの最後の別れ際。
一緒にバスを降りて、彼から出会えて良かったよ!って言ってもらえてハグされて、手を握られた事がとても嬉しくて。
私は気の利いた言葉が出てこずに、そのままお互いのホテルに帰ることに。
でも、帰ってからも彼の事がやっぱり忘れられなくて。
日本人とスイス人。
こんな機会じゃないとヨーロッパの人と出会う機会ないし、思い切って自分の気持ちを伝えてみようと思い、携帯を手に取ってみた。
慣れない英語で、あなたの事ちょっと好きかも。いつかまた会えたらいいなって送ったら、僕も君が好きだよって返信が!
良かったら明日観光しない?って言われて、異国の地での出会いに完全に舞い上がってしまう自分がいた。
もちろん返事はYes!って返して、ドキドキしてなんか眠れない自分がいた。
でも私には日本で待ってくれている彼氏がいる。
ちょっと後ろ髪を引かれながら、次の日の待ち合わせにドキドキしながら向かう自分がいて。
これってやっぱりデートなのかな?
海外の人の感覚とか分からないし、どうなんだろう?とか色々考えながらも浮き立つ気持ちは抑えられなくて。
待ち合わせ場所にきた彼は一番に、また会えて嬉しいよって、抱きしめられて!
シャワーを浴びた後だったのか、彼のちょっと濡れた髪と、香水?みたいな匂いがより彼の魅力を引き立たせていて。なんて素敵なんだろうって完全に彼の虜になってる自分。
彼の隣を歩ける自分が本当に信じられなくて。
その日はビルの上からの景色を見に行ったり、海に行ったり、自転車でサイクリングしたり。
とにかく彼の提案で色々見て回るのが、本当に楽しくて。
これデートなのかな?
でも手を繋ぐとかないし、ふつうに友達としてか。
色々考えながらも、一緒にいるだけで、楽しいし、手を繋げるかどうかはどうでも良かった。
夜はたまたま見つけた近くのフードフェスで晩御飯を食べて、その後どうする?
って聞かれて、これって何だろう?でも彼とはまだ一緒に居たかったから、あなたのホテルの近くまで行っていい?って言ったら、いいよってなって。
そこから、お酒でも飲もっか!となり、彼は一旦ホステルに戻るから、ちょっと待っててと。
でも、なかなか戻ってこない彼。
なんかあったのかな?もしかしたら、もう来ないのかなと不安になりつつ。
しばらくしたら連絡があり、なんと彼のカメラが取られたとのこと。
彼のオーストラリアの最後の旅行。
せっかくの楽しい今日がこの一件で、残念な一日になってしまった。
警察行こう!って私から言って、なんとか2人で探した警察に行って。
カメラを見つけるのは難しいとの事を言われ、落胆する彼を見ていると私までとても悲しい気持ちになった。
でも彼は気を取直して、彼のオーストラリアの友達と飲みに行くことに。
なんとなく楽しい時間は過ごせて。
そしてその帰り道に、私の中の事件が起きた。
なんとなく酔っていた私はフラフラしていて、私からだったのか、彼からかだったのか手を握っていて。
その握っていた手がとても心地よくて、私は思わずまた好きって声に出して言ってしまってて…
人通りがまだある帰り道だったと思うけど、まさかの彼からいきなりキスされて。
それがとても衝撃的で、でもどこかでそれを待っていた自分もいて。
私はそれを断る事なく、2人で、夢中になってキスしていた。
彼のホステルに向かいながら、キスしたり、抱きしめられたり、体を触られたり…
彼の事がその時は本当に好きで、とにかく好きとか格好良いとか、今思えば安っぽいかもしれないような言葉を口にしてる自分がいて。
自分の中の何かスイッチが入ってしまったのか、自分からセックスしようって誘ってしまってて。
そして、近くの公園まできて、人目を気にしながら夢中になって外で、セックスしてしまった。
彼は行かないといけないって話してて。
私は彼と離れたくなくて、行かないでって思わず泣いてしまって。
セックスが終わった後も、彼に行かないとって言われながらも夢中になってキスしてる自分がいて。
あれ?私ってこんなだっけな
って思いながら、本当に彼に夢中になってる自分がいて。
でもやっぱり別れはきてしまい。
夢のようなひと時は、終わってしまった。
メルボルンでの彼との出会いによってこの街は自分にとってより特別な場所になった気がする。
その後、彼にはこの日の事は忘れない。
またいつか会えたらと送ったけど、返信はなくて。
彼がどうなってしまったのかは分からなくて。
返信はなくても彼が無事で旅をしてくれていたらなと思った。
まさかこんな事するなんて…
でも全然後悔はなくて。
素晴らしい経験だったなという気持ちしかなかった。
彼との出会いによって、自分の中に眠っていたもう1人の自分が目覚めた気がする。
もっと色んな人と出会い、付き合ってみたい。
そんな思いを。
そんな想いもあって、日本で待っている彼との関係を一旦見つめ直す事が出来た。
色んな人と出会いたい一心で旅していたけど、まさかこんな出会いをするなんて思わなかった。
日本の彼には後ろめたさみたいなのはあんまりなくて、おかしいかもしれないけど、素晴らしい経験が出来た事に感謝している自分がいた。
旅は色んな経験や考えを与えてくれるが、この経験は、私にとってとても甘く切ない一生忘れる事が出来ない経験になったと思う。
いつかまた、彼と出会えることを信じて、これからの人生を歩んで行きたいと、もっと海外で色んな人と出会いいとそんな気持ちになれた。
人との出会いはなんて面白く、切なく、楽しいんだろう…
私の旅はこれからも続いていくと思う。