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priest

んん?


なんだ?


ここは一体…?


「こんにちは、私の名前は英雄作成用転生執行システム。あなたの名前はカルラですね。」


確かに僕の名前はカルラだけど、


「何を捧げますか?」


僕に捧げるものなんか…あれ、何だろう、どうやら右手に煌びやかな剣がある。じゃあ、この剣を。


「確認しました。あなたの最大強化スキルは癒しの力です。それでは、頑張ってください。」


----------------------

「おーい、おきろよ。そんなところに寝てると風邪ひくぞ。兄ちゃん、起きろよ、邪魔だしさ。」


おや、どうやら僕は眠っていたようですね。どうしてこんな道の真ん中に…どうしましょうか、記憶がありません。


「起こしていただきありがとうございます。ところで、ここはどこでしょうか?」


「ああ?そりゃお前、シーラ村からキッカの街に行く山道だろ。どうしたんだ?」


「それが、カルラという自分の名前くらいしか覚えてなくて…」


「本当か?…じゃあ、ついてくるか?どこかへ行く当てもないんだろ?」


「本当ですか!ありがとうございます。いつか、この恩は必ず返します。」


どうやらこの親切なお兄さんが町を案内してくれるらしい。

これはありがたい。


…草原をお兄さんと歩いていると何やら灰色の毛をしたオオカミに取り囲まれた。


「7体も来たな。お前さんはなんか戦えるか?」


「…剣なら少しできたと思います。」


「そうか、ならこの鉈を使ってくれ。俺はこのナイフと弓があれば十分だ。」


ガルルルルルゥ…


オオカミたちが威嚇している。


鉈を両手に持ち体の正面へ。


三匹同時にとびかかってくる狼、それらのうち右のやつの頭を正面から強く切りつけ、そのまま前へ出る。ちょうど他2体とすれ違う形になる。振り向きざまに一撃。からの肘打ち、そして首に刃を突き立てる。そして刃を抜き、残ったやつが怯えている隙にその胴を十字に切りつける。


お兄さんは矢を放ち、1体の脳天に深くに当てる。とびかかってくる狼の首にナイフを突き立て、もう一発3匹目の頭に矢を放つ。その矢は確実に突き刺さり、致命傷を負わせた。そしてナイフを抜き、最後にまた首へと振るい、倒した。


「お疲れさん。けっこうやるじゃねぇか。」


「お兄さんのほうがすごいですよ。って、腕から血が!大丈夫ですか!」


「おいおい、そんな慌てんなよ、後で洗ってほっときゃ治る。」


「…heal、front、arms!」


お兄さんの体がきれいな緑の光に包まれる。するとその光とともに腕に流れていた血が消えた。


「な、お前さん神官だったのか!でもそんな治療費払えねぇぞ!」


ものすごい剣幕でお兄さんが怒鳴る。


「いえ!これは鉈のお礼ですので、別にお金なんか受け取れませんって!」


「…はぁ?お前本当に神官か?ふつう、無理やり金をとるところだろ。皆そうじゃねぇのか?」


「いえ、他の神官に出会った記憶がないと思うのでそれは…」


「おっと、そうだったな。悪い、町に着いたら1杯おごってやるよ。」


「いえいえ、そんな、悪いですって。」


そんなに回復魔法はすごいのだろうか…


-----------------------------------------

町に着いたら、お兄さんと別れる。どうしようか、途方に暮れていると何やら怪しげな老婆が話しかけてきた。


「お前、聖者だな?神界のにおいがする。また魔王が現れたのか、十年前はカルト城の勇者が相打ちで仕留めたというのに。早く魔王を殺してくるんだ。殺せ、殺せ、殺せ。これをやるから早く殺ってきてくれ。」


かなり一方的に話され、渡されたのは黒い指輪だった。


試しに指に嵌めてみると使い方が伝わってきた。この指輪をはめている手をかざして回復魔法を唱えるとそれは傷を負わせる効果になるらしい。


顔を上げるともう老婆はいなかった…


----------------------------------

旅に出た。指輪を使っていると、突然力が湧きだした。とても、面白い。

たびたび他の旅人や冒険者を無償で癒しながら、とりあえず城のほうに行って、そこから砂漠へと行こうと思っている。


---------------------------------------



旅をつづけ、カルト城へ行くと、衛兵が急に自分を捕らえ、謁見の間へと拉致した。ここの女王はどうやら勇者パーティの一人だったと聞くが、


「顔をあげなさい。忌まわしき聖者よ。」


聖者?あの老婆も言っていたし何なんだ?それに忌まわしき…聖者なのに?


「どうやら自覚していなかったようね。まぁいいわ、なんだって変わらないもの。殺してきなさい、魔王を、ただし一人で。この国の民には被害を出させないわ。仕方がないから馬車も出してあげる。言われなくてもわかると思うけどこれは命令よ、いいわね。じゃあ、さがりなさい。」


はぁ?


-------------------------

城からは、長い橋を渡り、馬車に乗って巨大な山を迂回しつつも人によって整備された森を通って灰色の大地へと進んだ。


「降りろ」


衛兵に指示され、馬車を降りると魔王の城の前だった。外見は変わっていない。

馬車はもう帰り始めた。どうやらこの指輪一個で魔王討伐させるらしい。

まったく、ひどいってもんじゃない。

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敵が目前に迫る。僕は手をかざし、


「revival、three-myarms'size-sphere、definitely 」


本来の効果は僕の腕3本分の半径の球体の範囲を自分中心に指定し、其処にいるものを確実に蘇生させる詠唱だが、黒い指輪が愉悦とともに力をあふれさせ、効果を逆転する。


少し体が浮いて、軽く着地して周りを見るとぽっかりと穴が開いていた。敵も手から何か放たれると思ったのか避けようとしていたが、無意味な行動だった。


--------------------------------------------------


結構楽に魔王の前までたどり着いた。

王座には、紫色の肌をした青年が座っている。

どうやらこの魔王はかなり若そうだ。15歳前後だろうか。


「ねぇ、少し、聞いてもらっていいかな?」


「構わない。」


どうせ終わる。


「僕のお父さんはね、とても立派な人だったんだ。

どんなに強くても、決して相手を見下さず、魔族のために、みんなのために頑張ってたんだ。母さんも、そんな姿を見て、幸せになろうって決めたんだって。

父さんは最強なんだ。最強だったんだ。優しかったんだ。侵略者が来たら、前線に行って皆のために境界線をつくり、話し合って血を流させずに戦いを終わらせた。

誇りに思うよ。皆もきっとそうだった。だから、当時は王の血も途絶えてしまったこともあって、父さんは王となった。それでも増長することはなかったし、国は豊かになった。

休む時間を削って僕とも遊んでくれて、大事なことを教えてくれた。魔族の皆も幸福になってた。

でも、ある日、また侵略してくるって情報があった。境界線にいた兵士の一人が教えてくれたんだって。だから、みんなで話し合った。戦うか、逃げるか。戦おうって人は多かった。

でも、父さんはみんなの血が流れるのを良しとしなかった。だから、南の地へみんなで逃げろ、と王様は命令した。戦っても勝てたかもしれない。けれど、人間は数が多い、それに勇者なんてものもいるからね。かなりの被害が出ることは予想できたんだ、お互いに。

まったく、優しすぎるのは欠点だよね。よく母さんにも甘いって怒られてたなぁ。

王様の、父さんの命令は絶対だった。あの時は本気で怒っていたんだ、たとえ甘いといわれても、この世界は誰のものでもなく皆のものだって、だからどちらかが譲ってやらねばこの世界が傷つくって。

それで、父さんは皆に最強の力のほぼすべてを分け与えて出発させた。

不屈の心、心身同期、この二つはかなりすごくてね、絶対に挫けぬ心。その心の思うように進化できるっていうね、魔力がほしければ魔素変換効率は上がり、誰かを守りたければ甲殻や鱗が出て、生きたいと願えばたとえ死んでも助かった。

まあそれは置いといて、父さんはここに残るためにそんなことをしたんだ。

力を失った私は一番囮に相応しいとか言ってさ、そしたら母さんもこっそり残ってね。

僕は最近戻ってきたんだ。勝手に土地は荒らされてたけど、父さんと母さんの結界でお城はそのままだったんだ。うれしかった。あともうすこしだけだから、お願いだよ。

皆が逃げたあと、少しずつ戻る人も出てきて、みんなでできる限り食い止めるって話になったんだ。そこまでしか日記には書いてなかったけど、のこっててよかった。彼らを称えた墓石はもう作ってあるよ。そこには僕の名前もある。ま、そういうことなんだ。無駄話に付き合わせて悪かったね。じゃあ、やりたいことはこれで終わった。煮るなり焼くなり好きにすればいいよ。…抵抗はするけどね!」


四方八方に現れた魔法陣から黒い炎が噴き出した。


手をかざす。

「mana-heal,mana-reheal,three-myarms'sphere.」


「まったく、ずるいなぁその力、魔力回復、魔力持続回復を二重詠唱して、反転させる。つまり魔力は消え、其処に入った魔力,魔法も消えていく。どうしようかな。」


「revival,three-myarms'sphere.」


「かっは、もう、あぶないなあ、命を複数持っていなかったら死んでたよ。いや、一回分死んでるけれど。」


…うざい。ああもう、めんどくさい、めんどくさい、めんどくさい、ああああ!


「BrackCurse-of-Ring!Kill!Kill!Kill!Give-The-Panishments!I-am-a-priest!I-am-a-priest=for-BrakingWorld!Show-me-the-power!」


「ちょっと、その詠唱は何なのさ!ふざけんな!ぐぼっ!おえっ!かはっ!はぁ、はぁ、一気に3回も死んだよ?でも、そう簡単にくたばれな、があああああ!」


黒い指輪が光り、魔王は血と赤黒い塊を口から吐き出し続け、止まったところで今度は体の内側から真っ黒な何かが突き出す。…どうやらもう動けないようだ。


はは、あははは、ハハハハハハ!


魔王を倒したぞ!やった!やったぁ!世界平和を実現させる!さぁ、宿主君(・・)!最後の詠唱をしろ!


「ハハハ、in the place,there is nothing to hurt.there is my World . It's beautiful happy peaceful place.

so I must break this World. nobody stops me.

I am the Hero! amn't I?…in the end, black rings came here.…フハハハハ、ようやく、ようやく念願の…ガはっ。ごぶっ…」


「お父さん、お母さん、みんな、仇は討ったよ…」


倒れた二つの身体は黒き門に飲み込まれた。

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