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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第三章

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魔王との遭遇

 ディリオンと話し合いが終わった時、仲間達はまだ城からずいぶんと距離があった。とはいえ歩む方角は間違いなく城で、遅くとも数時間後には到着するだろう。

 メリスやチェルシーは警戒を続けながら進んでいく……と、ここで明確な変化があった。


「……ん?」


 歩いていたチェルシーが突如声を上げる。それに同行する魔術師が眉をひそめ、


「どうしました?」

「城がある方角から何やら気配が」


 途端、その場にいた面々は全員警戒を示す。気配という以上、発せられるのは間違いなく、


「魔王が動き始めた、のかな?」


 メリスが疑問を呈する。それにチェルシーは肩をすくめ、


「現状を鑑みるに、ここまで人間に対し踏み込ませた以上、悠長にも思えるねえ」

「それが狙いかもしれない」

「……つまり、わざと奥まで引き寄せて倒すと?」

「そう」


 メリスの推測はもっともだ。俺だって事情を把握していなければそのように解釈する可能性は高かった。

 ふむ、ディリオンが魔力を発したということは、メリス達へまずは仕掛けるということか……考える間にメリス達は平地に到着。魔王の城があるのはもう一つ山を越えた先だが、それほど急な山道でもないため、見立て通り数時間で辿り着けるだろう。


「あの先に、魔王の城が……」

「ここまで来たんだ。間近で確認しないと――」

『さすがにそれは不敬極まりない所行だな』


 突然周囲に声が響いた。即座にメリスやチェルシーは剣を抜く。なおかつ帯同する魔術師達も魔法準備を始めた。

 直後、メリス達の正面――その空間が歪んだ。なおかつ亀裂のようなものが生じると、その奥から漆黒の鎧を身にまとった存在が出現する。


 顔を含め、全身を漆黒で覆う異形……しかも人間と比べ二回り以上の巨体。目の前の存在が紛れもなく魔王であると認知させられる驚異的な気配……チェルシーや魔術師達にとっては、全てにおいて体を震撼させる敵だった。

 一方でメリスだけは、そういう雰囲気を見せず応戦するべく烈気をみなぎらせている……幾度となく魔王と遭遇し戦ってきたためか、戦意はまったく失せていないようだ。


 チェルシーも魔族であった以上はそういう風に考えていてもおかしくないが……彼女の方は警戒が強い様子だ。


『我が居城にまで足を踏み入れようとする無法者達だな』


 その手には漆黒の大剣が握られている。一振りすればメリス達など一瞬で消え去ってしまうような雰囲気すら感じられる……威圧感により魔術師の中には足を震わせている者までいる。


「一応聞くが、あんたが魔王かい?」


 そうした中、チェルシーが臆すことなく問い掛ける。それに魔王は、


『ふむ、我が姿を見ても怯えることなく、戦意を向けるだけでは飽き足らず質問か。その蛮勇に免じて答えてやろう。いかにも魔王と呼称される存在……憶えておけ。我が名はディリオン。この地と共に姿を現し、貴様ら人間を駆逐する大いなる存在なり』


 ……島を沈める前提の作戦であるためか、ずいぶんとまあ尊大に語る。ある意味俺と話をしたことで吹っ切れたのかもしれないな……うん、これなら人間側もこっちがわざと負けるなどという作戦を立てているなど予想もしないだろう。


「ふん、さすがの気配だが……ここに来たのはあたし達を殲滅する気かい?」

『安心しろ、今はまだ命を奪うつもりはない……驚くような返答かもしれないが、私は潔癖でな』


 述べると魔王は少しばかり発する魔力を濃くする。


『我が大地を貴様らの血で汚したくはない……不潔な人間の血や臓物など、こちらから願い下げだ。このまま尻尾を巻いて逃げるのであれば、今日のところは見逃してやろう』


 そして魔王はさらに気配を強くした。


『だが、貴様らがこの私を滅するために挑むのであれば、相応の態度を持って迎え撃つとしよう』

「やるのかい? こっちは色々対策を打っているけどね?」


 間違いなくハッタリだが、チェルシーはなおも問い掛ける。魔術師達としては気が気じゃないかもしれないが、恐怖のせいか言葉には出さない。


『対策など意味がない。我が大地を汚す者に対する報復手段は、既に持っている』


 それと共に、ディリオンは大剣を地面に突き立てた。直後、大地を介し魔力が拡散され……悪魔が複数体出現した。


『我が大地は手足も同然。全てが我が意思により自由にできる』

「なるほどねえ……魔物がいなかったのは、その必要もなかったってわけかい」

『聡明で何よりだ、人間。こちらは警告したが……どうする?』


 魔王は向かってこようとしていない。今回の目的は斥候であるため、メリス達はこのまま引き下がるのが無難……なのだが、


「どうする、メリス」


 チェルシーは魔術師ではなくメリスに問い掛ける。一方の彼女はなんだか声を張り上げ向かっていきそうな気配だが……。


「――私とチェルシーだけなら、それこそ挑んでもおかしくない状況ね」

「かもしれないな」

『来るのであれば、相応の態度を持って応じることにしよう』


 その直後、俺は作成した影を魔王の近くに出現させる。気配を極限まで殺していたためか、メリス達も気付かなかった様子。


「さらに援軍……しかも、相当強い個体か」


 ――作成した影を見てメリス達がどう反応するのか確認をしておく必要もあった。魔力で気取られるようなヘマはしないけど、それでも念のためだ。


『さて、どうする?』


 魔王から再三の問い掛け。そこでメリスとチェルシーは、同時に魔術師達を見据えた。


「退いてください」

「……仕方ないな」


 もう少し調査を、と思ったようだが魔術師達は同意。そのまま引き下がろうとした時、変化が起きた。

 魔術師の一人が数歩後退した直後、その足下が突如光り輝いた。


「なっ……!?」


 驚いた直後、魔術師が光に飲み込まれ――その姿が、消えた。


「き、消えた……!?」

『既に前例があるだろう? それを今、実際見えるように指し示したまでだ』


 あー、俺のことについて言及しているのか。これは俺がいなくなったことに対しきちんとフォローを入れてくれているわけだ。さすがディリオン。

 そう内心で思っている間に、魔王ディリオンはメリス達へさらに続けた。


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