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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第三章

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魔王との作戦

「段取りとしては、人間側が侵攻してきたらそれを迎え撃ち、わざと滅びる。そして島を沈めて勝利したことを示す……で、いいのかな?」


 ディリオンが問い掛ける。俺は「それでいい」と返答し、


「ただ、準備は色々と必要だぞ。まず斥候部隊に対し牽制しつつ、魔物なんかも準備をしないと」

「とはいえ、犠牲を出したくはないなあ」


 ディリオンは告げる。この場合の犠牲とは彼の部下や魔物ではなく、人間達のことだろう。


「でも、犠牲者ゼロというのは魔王との戦いであることを考慮すると、怪しまれないかな?」

「そこは上手く理由をつければいいさ」

「例えば?」


 聞き返すディリオンに俺は解説を行う。


「自分の大地を血で汚したくないとか。それを斥候部隊にでも伝えて伏線っぽく演出すればそれらしい理由にはなるな。あと、魔物の餌として残しておくとかなんとか言って生け捕りにするとか」

「ああ、確かにそれならいけそうだ……生け捕りにしたら地下牢にでも放り込めばいいかな?」

「いや、城の中よりも例えば森とか山とか、魔法か何かで出れないよう結界でも張って押し込めておけばいいかな。その周囲を魔物でたむろさせておけば、演出的にはいいだろう」

「ふむふむ、なるほど」


 納得の声を上げるディリオン。なんとなく俺が考案しているのでこっちがなんだか悪人みたいに思えるけど……いやまあ、元魔王だしあくどいことはまあそれなりに経験もあるからな。


「うん、大体イメージは固まってきた。ただ転移させようと思うとそれなりに準備が必要だね」

「それなら斥候部隊を誘い出して……城へ近づこうとしている俺の仲間がいる隊でいいかな。その中で隊員を強制転移させ、さっき語った理由を告げるとかはどうだ? そのくらいなら準備はできるだろ?」

「ああ、小さな範囲であれば可能かな……転移場所は大陸の海岸でいいかな?」

「距離はあるけど可能なのか?」

「できるよ。この大地から魔力を供給できれば」

「なるほど。ならそれが無難かな……あ、それと人間側は船を用いてこっちに進軍しようとしているんだけど」

「なら海中にも魔物を配置して……うん、やりようはあるよ。さすがに船を沈没させるのはまずいと思うけど、損傷させて動けなくするくらいなら大丈夫かな」

「そうだな。で、魔王との直接対決前にその辺りで活躍しておけば、俺の発言力も高まるから少しばかり手伝ってくれないか?」

「わかった。ならフィスの魔力に反応して襲い掛かるように調整しよう」


 段取りが整っていく。そこから俺達はどう動くか詳細を話し合い、ひとまず流れについては協議を終える。

 まだ仲間達は城へ到達してはいない。よって、今から行動に移すことができる。


「問題は、いかに怪しまれないようにするか……演技力が重要になるぞ」

「そこはわかっているよ」

「見た目も気合いを入れて変えないと。さすがに今の格好のままじゃまずい」


 ディリオンは頷く……まあ前に出会った時も恐怖を煽るような姿を外見では示していたので、問題はないか。


「よし、それじゃあ早速だが転移魔法の準備を始めることにするよ」

「わかった。それじゃあ俺はひとまず――」

「あ、その前に私の体の中にある魔法の解除方法を教えてくれ。次、いつ聞けるかわからないし」

「ああ、いいよ」


 そこから彼に色々と教える……結果的に独力でも解除できるとのことで、これでヴァルトが掛けた魔法については大丈夫だ。


「何か異常があったら連絡してくれ」

「ああ、わかった……魔王として滅んだ後のことはそちらに任せていいかな?」

「それで構わない」

「なら任せるとしよう……前回滅ぼされるまで、私は島を拠点にしていたからな。人間の土地に足を踏み入れることはあまりなかったし、少々緊張するな」

「陛下……」


 メルが口を開く。そこでディリオンはにこやかに、


「いや、懸念しているわけではないよ……それとメル、頼みがある。早急にこの城に存在している部下の魂を、魔法により予め収容してもらえないか。私としてはいずれ復活させてあげたいけど、今ここでそれをしたら計略に支障が出るかもしれないし、何より傷ついて欲しくないからやりたくない」

「持ち運べるようにしておけばいいと?」

「そうだ。いずれみんなでお茶会でもするために、ね。その準備に取りかかって欲しい。それをやっておかないとこの島が沈んだ時、一緒に消えてしまうから」

「時間が必要ですね。魂が傷つかないように処理する以上、日数が掛かります。今回の作戦には協力できませんが……」


 本当はメルも作戦に参加して、ディリオンを守りたいところだろう。俺から情報をもらったとはいえ、殺意を持って戦う人間達にディリオンが滅ぼされないとは限らない。

 ここは俺がフォローしておくべきかな。


「俺は行動を開始したら、魔法を使って影を作る」


 その言葉にディリオンは眉をひそめ


「影?」

「俺の分身とでも言えばいいか。さすがに見た目とか戦法とか変えるけど、そういう存在がいて魔王を守る……人間が警戒する一因になるし、俺も少しは頑張らないといけないし」

「ならそうしてもらおうかな……よし、それじゃあ城を離れ行動を開始してくれ」


 そういうわけで俺は彼と分かれ、調査隊の面々に気取られないよう動き始める。


 ディリオンから斥候部隊がどこにいるのかは聞き取り、ネズミを寄越しているので動きは把握できる。よって派手に動かなければ見つかることはない……さて、魔王ディリオンだが、最初に印象づけることで人間側の動きも変わってくる。大事なのは初動だ。


 俺は城を出て仲間達を避けるように動き始める。とりあえずメリス達は城へ向かってはいるようだが、俺がいなくなったため歩みはずいぶんと遅い。

 その間にディリオンは準備を進める……ただしそれは密かに。別に大々的にやってもよさそうなものだが、ディリオンとしては自分と会った時に魔物が現われた方が相手も警戒を強めるだろうという言い分だった。


 どうやるかはひとまず彼に任せることにしよう……よって俺は適当な場所まで移動したら、魔法を使って影を生み出す。

 見た目をいかつくして、迫力を出せばいいかな……あ、でもディリオンの見た目に合わせないと駄目か。そういえばそういう姿にするのか聞いていなかった――


 そう思った矢先、城に配置したネズミがディリオンの姿を捉える。体に黒い魔力をまとわせ、さらに体格も大きくなる。

 ほう、あれならこっちも少しくらいデカくしても問題はなさそうだな……よって俺は少しばかり試行錯誤した後、影を作成。魔王ディリオンの下へ派遣した。


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