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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第三章

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千年魔王

「まず、俺が追っている敵の存在についてだけど、復活したということはそいつと出会っているはずだな?」

「いや、僕は復活してから外部の存在と出会っていない。こうして話をするのはメル以外ではフィスが初めてだ」

「……え?」

「これについて私は既に結論を出した。僕は勝手に目覚めてしまったんだ」

「……なんだって?」


 さすがに予想外の意見だったので聞き返す。そこでディリオンは解説を行う。


「フィスは魔王を復活して回っているという解釈をしているみたいだけど、私の見解は少し違う。意図的に魔王を復活させているのではなく、魔王を復活させる何かを使っており、目覚めた魔王に声を掛けているのかもしれない」


 ……魔王を復活させている何か、か。


「これには根拠が二つある。共に私に関することだが……まず私の所にそういった存在が来ていないのは間違いなく、島にも来訪していないこと。それに私は意識的なものだが、自発的に復活したという自覚があるしね」

「なるほど……もう一つの根拠は?」

「先ほど魔王を復活させる『魔法』と言ったが、私の体の中に何かしら引っ掛かるものを感じる。おそらく復活の魔法に何か仕込んでいるのだろう」


 その言葉で俺は険しい顔をした。それはつまり、


「魔王を操る魔法……とかか?」

「いや、そういうものではなく、ちょっとした仕掛けだ。例えるなら『復活魔法を使用した者には攻撃できない』といった類いのものだ」


 そう語ると彼は肩をすくめた。


「何やら複雑な術式で私にも解明できない点があるため放置している。私としては害はないので放っておいてもいいんだけど……」

「俺がその魔法を解除しよう」


 そう提案。するとディリオンは少し目を見開き、


「可能なのかい?」

「検証してみないとわからないが、やれるだけやってみるさ」


 ヴァルトが使用した魔法なら、古の魔法技術を利用しているかもしれない。そういうものなら俺で対処できる。


「場合によってはすぐ――」

「いや、敵に気取られる可能性がある。魔法を解除されることは復活させた側からすれば非常に危ない。自分に矛を向けられるかもしれないから。よって解除したらそれを知ることができる……そういう解釈をしておくのがいいだろう」


 そこまで言うとディリオンは一つ提案をした。


「ならこうしよう。フィスが魔法の解除方法を私に教えてくれればいい。私でも解除可能だと判明すれば、方法だけ伝授してもらっていつでもできる態勢を整えておく」

「そして状況に応じて……ってわけか。うん、それが無難かな」


 ヴァルト相手なのだから、そのくらい用心してもいい。


「なら早速検証をするか?」

「いや、まだ時間はあるし後回しにしよう。それよりも先に他のことを協議したい」


 他……つまり、


「人間との戦いについてどうするか、だな?」

「それともう一つ。敵の目的についてだ。魔王を復活して回って、最終目標は何なのか」

「目標……か」

「動機が何であれ、この魔王復活の出来事について終着点があるはずだ。話によると歴史的に新しい魔王から復活している。これは年代が新しければそれだけ復活しやすくと仮定することができる」


 ……魔王ゼルドマから魔王ディリオンでは年代に開きはあるが、その間――今から五百年前くらいに別の魔王が登場している。ディリオンがいるのならそちらの魔王だって復活している可能性が高い。

 そしてその先は――


「……敵の狙いは、千年魔王かもしれないな」

「千年魔王?」

「ああ、ディリオンにとっては『天獄の魔王』と言った方がいいか」


 ――現在における名の通り、今から千年前に存在した魔王。おとぎ話に出てくるような古い魔王で、現代ではあまり情報も存在していない。けれどどの物語にも共通しているのは、人類の存亡を脅かした最大の存在であることだ。

 それは真実であり、人類――いや、この世界に生きる者達全ての存在が滅亡するかもしれなかった。それもまたヴァルトが生み出した存在ではあるのだが、この千年魔王こそ、最大にして最悪の脅威と言える。


「ただ、この魔王はかなり特殊な滅び方をしているから、そうそう復活はできない……と思うが、復活できる方法を確立したからこそ、動き始めたのかもしれない」


 ヴァルトはまず、俺のことを人間を利用し始末した。俺の活動を見て、魔王ディリオンのような策が良いと考えたのかもしれない。そして魔王復活のための準備を行い、実行に移したのではないか。

 一応ヴァルトの動き方については筋が通るな。


「ではこちらはどうするつもりだい?」


 ディリオンが尋ねてくる。俺は一考し、


「千年魔王の復活はできれば避けたいが、それを画策している存在の捕捉が難しい……後手に回ってしまうため、避けるために注力するのでは駄目だ。応戦できるような態勢を構築しておくべきだな……それには色んなものが足らない」


 神族なんかにも協力を仰ぎたいところ。最初はそれこそ同胞を救うため名声などを得ようとしたけど、それ以上に魔王対策の必要性が出てきてしまったな。


「私はどうすればいい?」


 魔王ディリオンが訊いてくる……って、待て。


「協力してくれるのか?」

「ああ、私で良ければ。件の魔王については知っている。脅威だし私としても放置しておくわけにはいかないと思っている」

「それはありがたい。けど、協力してもらうにしろ、解決しなければならないことがあるな」

「現状についてだね」

「そうだ。先ほど説明した通り、人間は砦を築いてここに侵攻しようとしている。で、魔王ディリオンが戦う意思がないとしても向こうは関係なく襲ってくるだろう」

「一番いいのは、降伏して良好な関係が築ければいいんだけど」

「さすがに無茶だろ」

「だろうね……ふむ、しかしそうなると……」


 ディリオンは口元に手を当て考え込む。


「偽物を用意して負けたフリをするのもアリだけど。千年魔王について準備をするとなればこの島は結構価値があるんじゃないかい?」

「うーん、けど残すのも厳しいぞ。魔王が消えたことにより島も沈んだって伝承が存在しているから、この島がなくならない限り人間が納得しないぞ」

「そっか。なら島を沈めるしかないか」

「できるのか?」

「僕の意思で自発的に可能だよ。ま、こればかりは仕方がないね」


 そう語るディリオン……ただその表情はずいぶんと明るかった。


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