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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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新たな出現

 地上に脱する途中でマーシャの分身と合流。戦果について報告すると、


「うん、問題はなさそうね……ちなみに魔物については地底に潜んでいた者達の動きがとても鈍くなってるわ。消えていないみたいだけど、地底内をうろつくくらいであまり害はなさそう」

「掃除くらいしておいた方がいいか?」

「魔力供給源の魔王が消えたから、放っておいてもいつかは消えるわよ。地上に出て生き延びる個体も出てくるだろうけど、それほど数は多くないだろうし、後は国の人に任せたらいいわ」


 それもそうか……魔王を倒したのだから、後は国の人々でなんとかなるだろう。

 で、そうした中でゼルドマの部下だった魔族ボノンは茫然自失。俺の指示によって歩いてはいるけど、それ以上のことは何一つできていない。


 そんな相手の様子を見て、マーシャは一言。


「いつまで滅んだ魔王のことを考えているのよ。せっかく生き残ったのだから、五体投地でもして喜べばいいのよ」

「……お前ら……」


 がっくりとうなだれるボノン。そんな様子の彼に対し、


「そういえば、あなた魔王ヴィルデアルという名は知っている?」

「……その名は聞いたことがある。というより、陛下と会っていた魔族が口にしていた」


 お、これは……と思ったので訊いてみる。


「会っていた、というのは魔王直属の魔族ではないのか?」

「外部から来ていた。詳しい話は知らん。興味もなかったからな」

「名は?」

「それも知らん」


 投げやりな回答。そこでマーシャが俺のことを見た。ああ、なるほど、これはおそらく――

 こちらは黙って首を縦に振る。ならばと、マーシャは口を開いた。


「そう。あなたは気付いていないかもしれないけれど、私とそこにいるメリスは、元々魔王ヴィルデアルの部下だった」


 その言葉にボノンは瞠目。同時にマーシャは魔族の気配を発し、


「メリスは諸事情により人間になっているけど、ね。よって私達は今のあなたと同じ立場にいた……けれど、色々と目的もあって生きようと頑張っている」

「……つまり、私にも色々頑張れとでも言いたいのか?」

「滅んだ直後である以上呆然とするのは理解できるけれど、そればっかりじゃあ駄目ってことよ。さすがに魔王の意志を継ぐなんてことをしでかしたらこちらは止める必要があるけれど……あ、変な動きをしないよう観察しないといけないのかな?」

「……ボノン、俺としてはあんたの命を奪う気はない」


 そこで俺はボノンへ向け口を開く。


「身の振り方については……まあ、そうだな、マーシャ。一度そちら戻ってもいいか?」

「私からその提案をしようと思っていたくらいなのよ。そこからどうするかについては、今後相談するってことで」

「わかった。ひとまず俺達と一緒に旅をして、マーシャの屋敷で行く。それでいいか?」

「私に許可をとる必要はないだろう」

「それもそうだな。ただ、その黒マントだけは外してくれよ」


 他はまあまあ人間に見える格好なので、余計なことをしなければ大丈夫だとは思う。


「……ちなみにだが、部下が全員黒マントを身につけていたのは理由があるのか?」

「陛下の指示だ」

「魔王自身はマント身につけていなかったけれど」

「私に聞かれても知らない」


 ……謎が一つ残ってしまった気がするな。でもまあ仕方がないか。そもそも尋ねても答えが返ってきそうにはなかったし。


「わかったよ。そういうわけで、町へ戻るとしよう」


 俺達は地上へと向かう……そうして一つの戦いは終わりを告げた。






 町に戻って二日目の夜、俺はマーシャと連絡を行うために夜、部屋を出る。ちなみにボノンは個室で、寝ているみたいだったし特に問題も起こしていない。

 郊外にある森でマーシャと合流。彼女はまず一礼し、


「魔王討伐達成、おめでとうございます」

「ああ……ゼルドマについては特に問題はなかったな。それでメリスについてだが――」

「昨日やり取りをしました。ひとまず彼女自身、魔王と戦ったことで自信を得た様子」


 ……俺の援護があったとはいえ、魔王相手にあれだけ優位に進めていたのだ。それに俺が伝授した技法についても役立った。確実に強くなっているし、結果として良かっただろう。


「うん、メリスについては問題ないな」

「……魔族ボノンについてですが、どうしますか?」

「んー、もしマーシャが連絡つく魔族がいるならそちらで引き取ってもらってもよさそうだけど。俺の指示なら全て聞くし」

「なら私の助手にでもしましょうか」

「いいのか?」

「はい。まあ役に立たなかったら陛下の仰っている形でもよろしいでしょうし」


 なんだか彼にとって可哀想な会話ではあるけど……まあいい。


「場合によってはラクラノの方で引き取ってもらってもよさそうですね」

「ああ、確かに……ただ邪険には扱うなよ。あくまで一個人として尊重すること……俺としても主君が滅んだ魔族がどうなるかは気になっている。今後、そうした魔族と出会うかもしれないし、行く末を見守りたいというのもあるから」

「わかりました。彼については陛下の仰るとおりに……それで、ですね」

「他に何か変化はあったか?」

「はい。陛下ならばご存じかと思いますが……その、大陸の東の果て。海に、島が出現したという話が」


 ――ほう、それは。


「新たな魔王……しかも彼か」

「やはり、知っているのですか?」

「ああ。マーシャも伝承で知っているはずだ。七百年前に無人島で突如出現した魔王だ」

「はい、何でも島には多数の悪魔と魔物が跋扈し、要塞の如く堅牢な砦もあるとか。さらに言えば悪逆非道の魔王は……どうしましたか?」


 俺が笑い出したのでマーシャは疑問を呈す。そんな彼女に対し俺は、


「いや、俺も伝承についてはあまり詳しく調べていないけど……まず、悪逆非道な面はない。基本的に害は(改行不要)

ない魔王だ」

「害はない……?」

「彼は一度たりとも、自ら武器を手に取り戦ったことのない魔王だからな。その当時出現した魔王とか魔族とかが全て彼の配下だと誤認されて暴れ回ったように言われているけど……彼自身は一歩も島から出なかった」


 そこまで言うと俺は息をつき、


「言ってみれば、俺と同じような境遇だったんだよ……その魔王は」

「そうなのですか……ということは、どうなさるおつもりで?」

「俺は彼と知り合いだから一度話をしてみよう。同じような立場の存在でもあるから、話もしたい……俺は転生しているけど、そこはなんとかなるだろ。それに」

「それに?」


 マーシャが聞き返すと俺は笑いながら、


「今回、魔王を復活させて回っている存在に対し協力してくれるかもしれない……もっとも、一連の事件首謀者はそれを知っているはずで、なぜ彼を復活させたのか疑問に残るのだが」


 ……もしかすると、暴れるよう干渉を受けているかもしれない。

 そうなら、色々とやらなきゃいけないな……そんな風に思いながら、俺は次の旅路に思いを馳せた。


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