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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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魔物封じ

 俺が後衛でメリスが前衛という立ち位置で魔王に挑むわけだが……まずゼルドマは、剣をかざしメリスへ受けて立つ態度を示しながら、左手に魔力を集め始める。


「ここまでは快進撃と言ってもいいだろう」


 俺達の行動をそう評価したゼルドマは、さらに魔力を高める。十中八九魔物を瞬間的に生みだそうとしている。


「だがここまでだ。部下と同じだと思うな」


 魔王の周囲に光が生まれる。だがメリスはなおも特攻。相手からすれば無策でしかなかったはず。

 だがここで俺が魔法を発動。それは城全体に仕込んだものであり、気配が室内全体に広がった瞬間、ピシリと何かがヒビでも入った音が生じた。


 そして魔王ゼルドマの魔物生成は――不発に終わる。


「何!?」


 さすがに自分の戦法を封じられては瞠目する他ないだろう。そして完全に隙を晒し、そこへ目掛けメリスが突撃する!

 ゼルドマは一瞬後反応したが、回避するには遅かった。メリスの全力が一閃され――その体に走る。


「ぐうっ……!」


 呻きながらもどうにか体勢は崩さず後退。だがメリスは追いすがる。ゼルドマはもう一度魔物を生成しようとしたようで、魔力を左手に集めるが、やはり結果は駄目だった。


 俺の渾身の仕込みが効いている証なのだが、どうやらゼルドマは何故魔物が作り出せないのかわかっていない様子……さすがに城に仕込みをして封じるなんてことをやっているとは思ってもみないだろう。もしシェルガーから情報を受け取っていれば警戒できたと思うが……まあ、それでも仕掛けを破壊する時間はなかったし、何よりもしどういう効果か知っていても発動した時点で負けである。

 また、この仕掛けは単に魔物生成を封じる、というだけではない。真骨頂は別にあるわけだが、それが発揮されるかは戦い次第だな。


 メリスはなおも攻勢を仕掛ける。ゼルドマは戸惑いながらも剣で応戦。両者の刃が激突すると火花が散り、せめぎ合いとなった。


 普通なら魔王相手である以上はメリスが負ける……と思うところなのだが、彼女が一気に押し込むような形。どうやら単純に魔王が力負けをしているようだ。それはおそらくメリスに教えた技法も関係している。

 彼女に伝えたのは主に武器強化なのだが、副次的な効果として膂力なども強化される。それによってメリスは魔王に対抗できるだけの力を得ることができるわけだ。


 まあ彼女が本来持っている技法だけでも十分勝ち目はありそうだけど……メリスの切り札は無茶をするわけだし、そういうことをせずとも魔王に対抗できるだけの力を得られる、というのは非常に大きい。

 なおかつゼルドマ自身の能力もここまで戦ってきた魔王と比べ低い点も関係しているだろう。魔物の生成能力は脅威だが、その能力に特化しているが故に、どうしても他の能力が劣ってしまうわけだ。


 ただ魔王であることは間違いなく、さすがに一気にとはいかない――ゼルドマはメリスの剣を受け止め、はじき返す。隙を作らないと刃を入れることはできそうにないな。


「何をしているのか知らんが、この私について調べ上げ、対抗策を練ってきたか」


 ゼルドマは俺を一瞥し告げる。正解だがこちらは何も言わず、黙って魔法を維持し続ける。


 そうした中でメリスはなおも攻め立てる。俺は魔法を継続して使用しているため、実質一騎打ちという形になっている。援護がなければ辛いだろうかと一瞬思ったが、メリスの戦意は衰えないまま、剣筋はさらに鋭くなっていく。


 いけるか、それとも――猛攻により彼女の剣がゼルドマの体を掠めた。直撃したわけではないが魔王としては好ましくないと思っているようで、


「調子に乗るな、人間風情が!」


 反撃。メリスの斬撃を気合いと共に弾くと、すぐさま突きを見舞った。


 しかし彼女はそれを体をひねってかわす。ゼルドマの剣はかなり直情的で、フェイクを織り交ぜるといった手法はあまりしていない様子。おそらくゼルドマは他者から剣術を学んだはずだが、基礎的な部分に終始し応用的な技法などはあまり習得していないようだ。もしかすると「魔物作成能力を補助する程度」という認識で、本格的にやらなかったのかもしれない。


 ここでメリスの剣戟が魔王に再度掠める。このままではジリ貧だと思ったことだろう。ゼルドマは選択に迫られる。

 一つは強引に力で押し込むというやり方。魔王ならば人間相手に力で……そんな考えを抱く可能性は高く、これまで遭遇してきた魔王ならば、自信もあっただろうしそうした手段をとってきたことだろう。


 だがゼルドマとしては違うかもしれない――二つ目は長期戦に持ち込むこと。さすがにメリスも長時間今の技法を維持し続けるのは難しい。よってあえて時間を稼ぎ弱ったところで蹂躙する。

 俺に対しても待つという選択肢は効果的と魔王は考えるだろう。魔法を維持しているということは、常に魔力を消費し続けている。時間が経過すれば魔法が途切れるかもしれないし、時間をおくことはメリットも大きい。


 ただ魔族ならば、人間を押し潰す選択をとるかも……そう思った矢先、ゼルドマはメリスの剣を弾きながら一歩後退した。

 どうやらじっくり攻めるらしい……長期戦か。ゼルドマは俺達のやり方から、これまでの魔王とは違う戦い方を模索し、選んでいることがわかる……ならばこちらはどうすべきか。


 魔法を継続しながら俺は思考する。メリスが力尽きたら今度は俺が頑張らないといけない。魔法を維持し続ける以上、他の魔法は使えないので接近戦くらいしかやることがないけれど……まあそうであっても俺なら勝てるかな。

 と、ここでメリスも動いた。どうやらゼルドマがどう戦うかを察したらしく、少しばかり身を引いて剣を構え直す。


 彼女としても長期戦は望むところ、という雰囲気を出している。それが嘘か真か……ゼルドマは目を細め、


「時間が経てば不利になるのはそちらだと思うが……まあいい」


 剣を軽く素振りする。また後方では相変わらず爆音が発生している。この音を聞きつけ外に出ている魔族ゴルが来たら、こっちはかなり大変になる。

 ならばどうすべきか――と、止まっていたメリスは再び魔王へと駆けだした。


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