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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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異能者

 城の中に入ってきた相手は、先ほど遭遇したゴルという魔族ではない。姿を確認しておこうかと一瞬考えたけど、ひとまずメリス達の所へ戻ることにした。


「確認については後でやればいいか」


 そんなことを思っていると、魔族は俺が立っている場所に接近してくる……あれ?

 少し警戒して物陰に隠れることにする。そうこうするうちに現われたのは赤い髪を持つ、見た目二十歳前後の若々しい魔族だった。


 ただ、服装が……その、やっぱり黒マントを着ている。もしかすると魔王ゼルドマのセンスなのかもしれないが、正直こんな地底でなぜこの格好なのかツッコミたい気分なのだが……まあいいや。

 で、そんな魔族は俺の所に近づいてくるのだが……仕込みは露見しないよう上手く調整したはずなのだが、何かあるのか?


「……そこにいるのか?」


 ふいに魔族が声を発した。あれ、これはもしや、


「人間がいるとゴルから報告を受けて戻ってみれば、好き勝手に歩き回っているのか……ボノンめ、何をやっている」


 どうやら俺のことがわかるらしい……んー、考えられるとしたら特殊能力持ちか。


 魔族の中には時折、何かしら特化した能力……異能とでも言うべきものを所持している個体がいる。例えば身体能力が他の魔族と比べ高いといったシンプルなものから、特定の魔法を使用する場合に驚異的な効果が出るといった支援的なものもある。


 たぶんだが、近づいてきた魔族は目がいいのだろう。といっても単純に視力がいいというわけではない。魔力を見定める能力が高く、俺のことを城外から見つけることができた……たぶんそんな感じである。


「先に警告しておこう」


 魔族は述べる。ふむ、どうするのか?


「貴様のことはボノンに任せることにする。おとなしく部屋まで戻れば許してやろう」


 お、なんだか優しい……と思ったら、続きがあった。


「ボノンがどうせお前を殺すのだろうから、私はお前に関わるのはこれが最初で最後だ。もし反抗的な態度を示したら、私が直々に引導を渡してやろう」


 ふーむ、どことなく事務的なヤツである。ボノンに任せるということは信頼しているってことだろうか。

 しかし魔族は沈黙し佇んでいる。こちらの反応を待っているのか、それとも――


「……敵意はないようだな。とはいえ恐れもあまり感じていないように思える。死ぬ覚悟ができているのか、それとも開き直っているのか」


 ああ、なるほど。魔力を見ているのか。現在俺は何もしていないし、そういう反応になるのは至極当然か。

 しかし……どうやら俺が仕込んだものについては彼にもわかっていない様子。たぶん生きている存在などに対してのみ反応する異能なのだろう。まあこっちとしては罠が知られるとせっかく仕込んだのに結局使えなかった、ということになるので良かった。


「……警告はしたぞ」


 彼は踵を返す。そしてその姿が消え……俺は小さく息をつく。


「ふむ……俺のことに気付くとは」


 しかしこれは今後注意すべきことかもしれない。今回使った魔法では異能による感知を防ぐことができない……ここについては課題と言えるだろう。


「それじゃあ戻ろう。ボノンにあの魔族について情報をもらわないといけないな」


 そう呟き、俺はメリスのいる部屋へと戻った。






「――名はシェルガー=マブロス。お前の見立て通り、驚異的な魔力知覚能力を有する目を所持し、技量的には序列二番目にあたる」


 部屋へと帰ってきて俺は早速ボノンから情報を受け取る。なるほど、やっぱり強いみたいだな。


「ちなみに一対一で戦ったらどうだ?」

「さすがにゴルよりは上手くやるだろうが、おそらく負ける」

「なるほどな」


 あの目が何より厄介そうだよな……こちらの魔力をすぐさま感じ取ることができるというのなら、こっちの攻撃を読むなんて可能性もある。

 場合によっては俺やメリスが放つ魔力から、相当な強敵と考え魔王ゼルドマに「退くべきだ」などと進言したりする可能性も……さすがに魔王が城から撤退するとは思えないが、ここで確実に仕留めておきたいので……うん、もし戦うことになったら問答無用で先に潰そう。


「確認だが、お前を含め他に異能みたいな能力を所持する魔族はいるのか?」

「他にはいない」

「よし、なら大丈夫そうだな……メリス、動くとしようか」

「魔王ゼルドマの所に行くの?」

「そういうこと。というわけでボノン、頼むぞ」

「もういいだろう……いい加減殺してくれないか」

「こだわるヤツだな……あんたは俺達の戦いを特等席で見ていればいい」


 自信を込めて俺が告げるとボノンは不審そうな目を向けてくる。

 現時点でも「勝てるわけがない」と思っているわけだが……まあ俺とメリスの戦いぶりを見ればすぐに認識を改めてくれるだろう。


「それでは行動開始だ……メリス、頼むぞ」

「フィスもね」


 ――それからボノンにフェイクの拘束魔法を掛けてもらい、部屋を出る。そしてボノンの道案内により、俺達は謁見の間へと向かう。

 その道中ではっきり魔王の力を感じることができる……が、一つ問題がある。どうやらさっきの魔族、シェルガーが謁見の間の周辺にいる。


「あー、これは面倒なことになりそうだな……ボノン、お前って例えば人間をとっ捕まえて実験やっているとか、そういうことはしない?」

「どんな質問だ……? 言っておくが私は戦士だ」

「じゃあ人間を実験に使わせてくれとか、魔王に許可を求めに行くとか、そういう理由付けにはできないな」

「そもそも許可をとる必要もないぞ」


 ならこうやって伴って歩いていること自体、怪しいだろうな……うん、シェルガーは謁見の間の近くで立ち止まっている。たぶん近づいてくる気配を察し、何をするつもりか訊きたいのだろう。

 現時点で攻撃準備をすればシェルガーも反撃してくるだろうな……魔王との戦いに介入してくる懸念を踏まえれば、さっさと片付けた方がいい。


 なら、そうだな……俺はボノンに一つ指示をする。


「ボノン、シェルガーという魔族と鉢合わせになったら、極限まで近づけ」

「何をする気だ?」

「見ていればわかる」


 こちらの言動に言いしれぬ不安を覚えたかボノンの顔は険しくなったが……命令には従い「わかった」と返事をした。

 そして謁見の間の手前まで到達すると……先ほど遭遇した魔族シェルガーが扉の前に立っていた。


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