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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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地底での歩み

「頼むから……殺してくれ……」

「はいはい、泣き言を言わずに歩く」


 大穴から地底の中へと入り込み、俺とメリスは魔族ボノンの案内により進んでいく。こちらの魔法が通用しているので、道筋は合っているはず。ちなみにマーシャ達は大穴入口で待機。無闇に探索する必要がなくなったので、最低限の荷物だけ持って行動することにした。

 なおかつボノンが付与した魔法により、魔物もまったく近寄ってこない。で、もし魔族が近づいてきたのなら、俺とメリスはボノンの魔法か何かで縛り上げられたというような感じに見せて切り抜ける予定である。


「しかし、これは結構良い流れじゃないか? 魔王討伐としては幸先がいい」


 俺の発言にメリスも神妙な表情で頷く。


「問題は、もし私達の状況がバレてしまったら……」

「その辺りは上手く立ち回るしかないだろうな。ともあれボノンがいるから大丈夫だろう」

「お前達……本当に……」


 がっくりとうなだれる魔族ボノン。不憫極まりないのだが、まあどうしようもないとあきらめてもらおう。

 ただ、魔王ゼルドマを倒した後のことは一応考えた方がいいな。さすがに彼のことを野放しにしてはおけないし、かといってこのまま滅するのも可哀想ではある。


 ま、そこについては魔王ゼルドマとの戦い如何によって変わるだろうからひとまず置いておこう……さて、俺達は現在平和的に進んでいる。このまま何事もなければ楽なのだが――


「お、魔物がいるな」


 気配がする。地底なので光源はボノンが作成した明かりだけで、さすがに視界に捉えることはできないが、いることは明瞭にわかる。

 質的には、距離はあるけどボノンが率いていた個体とほぼ同じくらいかな? 向こうからは明かりに照らされたこっちの姿は見えているはずなのだが……気配はこっちに近寄ってくることもなくスルーする。うん、これはいいな。


「この調子だと、他の魔族と戦うことなく魔王ゼルドマと戦えそうじゃない?」


 と、メリスが楽観的な言葉を告げるが……俺は肩をすくめ、


「どうだろうな。他の部下に遭遇してもボノンが上手く誤魔化してくれるだろうけど、さすがにゼルドマの所へ行こうとするというのは違和感をもたれる可能性もあるし」


 ――ボノンから得た情報として、魔王ゼルドマにはボノンに加え他に五体の部下がいる。魔族としてはそれで全てらしく、他は魔物ばかりらしい。

 そして彼らは魔王ゼルドマが最初に生まれた時から付き従っている存在とのこと。どうやらヴァルトは魔王だけでなくその部下達も復活させたらしい。


 で、そうした部下達は基本魔物を制御する役目を担っているとのこと。普段ゼルドマは魔物を自ら制御しているわけではなく、彼らに任せて上手く調整している。もし戦うことになったら改めてゼルドマが指揮権を握って攻撃する……こんな感じらしい。

 ボノンから制御等についてもある程度レクチャーを受けた。それによると魔物が保有する魔力の一部を抱え、それを利用して操るという形らしい。魔王ゼルドマもどうやら同じ理屈で魔物を動かしているようで、俺はそうした情報を受けてどう戦うかを思案しているような状況。


 ふむ、個人的に思い浮かんでいることがあるんだけど、果たしてそれは通用するかな? もし通用するなら最高のやり方があるわけだが……なんだか陰険なことを考えているが、こうやって地底にまでわざわざ赴いているのだ。ただ倒すだけではなく面白いやり方で散ってくれた方がこっちも溜飲が下がるというもの。


「……ボノン、まだ距離はあるな?」


 確認の問いに当の彼は小さく頷く。


「よし、それならいくらか実験してもいいか?」

「何をするんだ?」

「いや、単に魔物の制御法について疑問に思ったことがあるから少し調査するだけだ」


 そこから俺はボノンといくらかやり取りをする……結果として俺が思いついている作戦は通用しそうな雰囲気。

 とはいえ、これを実行するには魔王ゼルドマに触れる必要がある……戦闘能力がそう高くないといっても、相手は魔王だ。そう易々と触らせてもらえるのかという疑問はあるが、まあやれるならやってみようか。


「フィス、私はどう動く?」


 メリスが問い掛けてくる。俺は一考し、


「魔王ゼルドマがどのくらいの力を持っているかによって変わってくるな……とはいえその新たな技法を使えば傷を負わせることはできそうだけど」


 俺はメリスを見据え、少し考える。彼女についても自信を持たせる意味ではここで活躍してもらった方がいいかもしれない。

 ということは、作戦としては……と、色々と頭の中で事を巡らせる間にも、地底の奥深くへ進んでいく。


 地底内はそれこそ迷路のように入り組んでおり、探索して回るのは結構面倒な雰囲気。ボノンを捕まえて本当に良かった。もしメリスとマーシャ達とで潜入していたら、今頃片っ端から魔物を倒して回り、魔王ゼルドマの大部隊と戦うことになっていただろう。

 そのルートでもたぶん俺達は勝てたと思うけど……メリスは長期戦になっても問題ない訓練をしているし、俺も平気だし。


 まあこっちのやり方の方がスマートだし良いとして、問題は……ちなみにボノンによると、今回のスタート地点からゼルドマがいる場所までは比較的距離も近いらしい。もし他のポイントから入ったなら、それこそ数日どころではないくらい移動する必要があったかもしれない、らしい。

 現時点では色々と運に助けられている面もあるな。今後魔王との戦いを重ねていく中で、魔王ゼルドマのような存在と交戦する必要性だって出てくるかもしれない。それ考慮したらもう少し上手くやれる方法を手に入れたいところ。


 情報を得るためにどう動くかとか、あるいは大部隊とも戦える面々を集める……ただ俺の前世である魔王の部下では意味がない。勇者フィスを中心にした部隊がベスト。

 そういう人員をどう集めていくか……と、そこまで考えた時、俺はとある存在が頭の中に浮かんだ。


 部隊、といっても数十人もいたら動きにくいことこの上ないので、多くて数人くらいが望ましい。すなわち一騎当千の強者ということだが、そういう存在の候補としてすぐに上がるのは――


「でも、会えるかどうかわからないんだよな」

「フィス? どうしたの?」


 メリスが訊いてくる。俺は「何でもない」と応じ、


「少し考え事をしていただけだ……ボノン、距離はどのくらいだ?」

「もうすぐ横ではなく下へ進む場所がある。そこまでいけばもう少しだ」

「そうか。引き続き道案内を頼むぞ」


 ……ボノンは何か言いたそうではあったが、彼はぐっと堪えて道案内を続ける。ふむ、そういえば彼も一応魔族だし、戦力になるといえばなるかな。


「……ちょっとばかり、突いてみるか」


 俺は口の端に笑みを浮かべる。ボノンは魔王ゼルドマに忠誠を誓っているわけだが、例えば契約などして命令などを強制的に受ける縛りがあるわけではない。

 なら、こういう方法も……歩きながら俺は作戦を組み立てていく。そうこうする内に俺達はボノンが語ったポイントへ辿り着き――地底の深淵へ向け、さらに歩を進めた。


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