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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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情報取得

「おし、こんなところか」


 魔族ボノンから一通り情報を手にした俺はそう呟き、質問を打ち切った。


「うんうん、魔王ゼルドマの居場所を含め重要な情報は全て手に入ったな。メリス、これは幸先いいぞ」

「そうだね。加えて魔王攻略についてこれ以上情報を得る必要もなくなったし、一気に決戦に向かえる」

「そこが一番重要だな。探索などをする必要性がなくなったから、肉体的な負担は必要最小限にできる」


 そんなどこか悠長な会話をする間、魔族ボノンは放心状態。しかも微動だにしないので、もしかして魔法の影響で気分でも悪くなったかなと思い、


「どうした?」

「……殺してくれ」


 ああ、情報を吐き出すだけ吐き出したので、後悔しかないわけだ。


「というか、この状況下になった以上、魔王の所に戻っても殺されるだけなんじゃない?」


 メリスの言及。それにボノンは視線を向け、


「それならば本望だが……逃がしてもらえるのか?」

「いや、さすがにあなたをこのまま帰すわけにはいかないよ」

「ならさっさと殺してくれ……」


 顔面蒼白になっている。事の重大さに彼自身、精神をギリギリ保っている感じか。


「こう言っているけど、フィス、どうする?」

「滅するわけにはいかないな」


 にこやかに――俺が言うと、ボノンの唇が震え始める。


「逃がすわけにはいかないってのは間違いないが、さりとてこのまま滅しても魔王ゼルドマは警戒するだろ?」

「ど、どうするつもりだ……?」

「メリス、こうして支配下に置いた魔王の部下が手に入ったんだ。それに加えボノンから手に入れた情報を統合すれば、自ずと最適解が導き出せるだろ?」


 俺の言葉にメリスは合点がいったようで、


「そっか、彼が私達を捕らえたことにして、魔王ゼルドマがいる拠点近くまで行こうってことか」

「そういうこと。地底にいる大量の魔物を相手にしていたらキリがないわけで、そこについてはボノンが命令を出して襲われないようにする。で、魔族と出会っても捕らえたとすれば、見逃してくれそうだろ?」

「うん、魔王ゼルドマに近づくのにはベストな判断だね」

「お、お前ら……」


 わなわなと震えながら、ボノンは問う。


「しょ、正気か……? 情報をとるだけではなく、陛下を倒すだと?」

「ああ、そのつもりだが」


 俺の返答に彼は黙す……本気でやろうとしていることを理解し、さらに有無も言わさない雰囲気を感じ取ったのか、彼は完全に沈黙した。


「さて、メリス……今から行くか?」

「それでいいと思う。ただマーシャに状況を説明しないと――」

「呼んだ?」


 茂みからマーシャの姿が。ゴーレムを伴い近くまでやってくると、魔族を見据え、


「ふうん……まあまあの実力ってとこかしら。事情はわかっているけど、このまま行くのね?」

「ああ。丁度いい盾役もできたことだし」

「盾、とは私のことか?」


 ボノンが震えながら問い掛ける。それに対し俺は、


「うん」

「いっそ……ひと思いに……殺してくれ……」

「これ以上、恥を重ねるのは魔王ゼルドマに忍びないと」

「そうだ。お前達に魔物などが接近しないようにする魔法を付与する。私の同胞が近くにくれば知らせるような機能も与える。お前達の目的は陛下を討つこと……それができるとは到底思えないが、負けた身だ。少しは協力してやる」

「なるほど、その代わりに殺してくれと。だが本当にそんな魔法を俺達に使ってくれるのか?」

「お前の魔法で命令すればいいだろう?」


 まあ、ボノンにそういう魔法を使えと命令すれば、きちんと履行するだろうから罠に掛かるってことはない。ただ、


「……なぜそうまでして死にたいんだ?」

「当然だろう!? 敗北した上に陛下の情報まで吐かされた! もはや生きる価値もない!」

「その汚名をそそぐために地面に這いつくばっても生き残る道を探す、とかはしないのか?」

「人間に頭を下げるような真似はしない!」


 ……プライドってやつかな。なんというか、人間を下等な存在を見なしているからこその言動である。


 まあ力を持っている以上、こういう態度を持っている魔族は大なり小なりいた。俺の所には……少なくとも俺の耳に入ってきたことはなかったが、そういう心情を抱える者だっていたかもしれない。

 で、一つ補足しておくとこの場にいるのは元魔王、元魔族、現魔族の分身という立ち位置で、まともな人間は一人もいないという……その事実を知ったらこいつ、ひっくり返るだろうな。


「なるほど、言いたいことはわかった」


 俺はボノンに告げる。彼はどうやら死を覚悟したのか厳しい表情を示し、


「それじゃあ俺達にそれらの魔法を使った上で、道案内を頼む」

「――鬼畜か!? お前は!?」

「鬼畜も何も、そうした方が魔王ゼルドマに近づける可能性が増えるだろ?」

「待て! 私はそういうつもりで提案したのではないぞ!?」

「俺達に捕まった時点であきらめろ……というか、だ。もしかするとお前は運が良いかもしれないぞ」


 その言葉にボノンの言葉が止まる。どういうことなのかを疑問の表情を浮かべたのだが、


「今から俺達は魔王ゼルドマを倒すわけだが、他の魔族も全て始末するつもりだ。ただしお前は魔法の範疇だから、生き残ることができるぞ」

「それでどうするの?」


 マーシャからの質問。それに俺は、


「荷物持ちとかになりそうじゃないか?」

「あー、なるほど」

「なるほどで済ませるな! ふざけるなよ貴様らあ!」


 怒り狂うボノン……ちょっとした冗談なんだけど。


「まあまあ、さすがにそこまで考えているわけじゃないが、特別だ。この戦いが終わって魔王を倒した後も、生かしておいてやるよ」

「……なんだか、楽しそうだね」


 メリスの感想。俺は「そうかな」と答えた後、気を取り直すべく咳払いをして、


「さて、それじゃあ改めて行動開始といこうじゃないか。メリス、覚悟はいいな?」

「とっくにできているよ」

「よし、それじゃあ――」


 俺はボノンに魔法を使うよう指示を出し、彼は実行。魔王討伐を始めるとしよう――


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