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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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対峙

 俺とメリスは森へと入り、こちらはネズミを用いて現われた魔族を観察しながら進んでいく。


「大穴の周辺でウロウロしているな……周囲にいる魔物達に呼び掛けでもしているのか?」

「魔族が現われたこともあるし、いよいよ侵攻ってことかな?」


 メリスが疑問を投げかけるが、俺はそれに首を傾げる。


「にしては魔物の動きに統率がないんだよな。どこかに攻め込む気なら、隊列とか組んでいてもおかしくないだろ?」

「そうだね……他に考えられるとしたら――」

「あ、ちょっと待ってくれ」


 俺はメリスを手で制し歩みを止める。ネズミで観察し……、


「魔族が周囲を見ていたので、気配でも察知しているかと思ったが、違ったみたいだな。どうも魔族は周囲の魔物を観察している……地上に出ている魔物の確認なんかをしているのかな?」

「どちらにせよ、町に攻めようとしているわけではないと」

「そういう可能性は低そうだ。もっとも、準備をしているのかもしれないけど」


 もしそうだとしたら、あまり時間はないかもしれない……が、俺達がここにいるので実質間に合った感じだろう。


「作戦通りいくとしたら、俺はメリスとは離れていた方がいいな……どうする?」

「それじゃあこの辺りで分かれようか」

「大丈夫か? 敵の動向を探れるのは俺だけだが」

「気配はつかめるから大丈夫」


 メリスは自信がある様子。まあ彼女の技量ならば問題ないか。


「……魔族についてだが」


 そこで俺は彼女へ語る。


「ネズミを通した魔力量だけなら、メリスでもあっさり勝てるくらいの技量だとは思う。けれど今回の目的は捕縛だ。間違っても滅ぼすなよ」

「わかってる……と、魔族を捕まえたらその後はどうする?」

「あ、それを言っていなかったな。魔族にも通用する記憶改変の魔法があるから、それを使うことにしよう」

「……なんでそんな魔法を持ってるの?」


 もっともな意見である。俺は「偶然開発できた」とだけ答えるに留めたのだが、メリスは深く追及する気はないようで、それ以上訊いてはこなかった。


「で、だ。捕まえて一通り情報を手にした後は任せてくれ……情報をどうやって入手するのかもこちらに一任してもらえればいい」

「わかった」


 ということで、俺達は森の中で分かれることに。俺は素早くかつ、魔物に見つからないように移動を始め、横手に回る。

 で、そこで準備を始めた。後は……俺は意識を魔族に集中させる。もし魔王ゼルドマが部下に何かしら魔法を掛けていたら、少し厄介なのだが……うん、そういうことはないみたいだな。


 よって、俺は予定通り作戦を実行する――と、魔族が何かに気付いた。それはまさしく、メリスのいる方角。


「――人間のようだな」


 ネズミを通して声が聞こえた。なおかつバサリと黒マントを翻し……形から入るタイプなのだろうか。この森、さらには地底を考えても、あの黒マントはどうあがいても動きにくそうだし。

 まあ見た目に対し言及しても仕方がないか……やがて魔物達もにわかに反応を示す。所々で唸り声も聞こえ始め、一斉に警戒を示した。


「ふむ、統制は執れているみたいだな」


 魔族の警戒に対し魔物達は従順に反応している。このことから少なくとも指令系統がきちんと機能していることは理解できる。


「隠れていないで出てこい。既に貴様の存在は捕捉している」


 魔族が告げる。それと同時、茂みの奥からメリスが出てきた。

 両者にはまだ距離がある。大穴へ向かうまでにはなだらかな坂が存在し、それを挟んでメリス達はにらみ合う形となった。


「ここに来たのは、何か採取依頼でも受けたか? それとも、魔物が多かったため調査にでも乗り出したか? どちらにせよ一人だ。大した用件ではあるまい?」


 魔族の問いにメリスは答えない。それに対し相手はせせら笑い、


「まあいい……今このタイミングでここを訪れたのは運が悪かったな。この私によって殺されるのだから」


 メリスは無言で剣を抜く。すると魔族は哄笑を始めた。


「一人で挑むか……愚かだな。まあいい」


 魔族はさっと手を振る。それに魔物達は反応し、自身とメリスの間に布陣させる。

 種類は様々だが、その動きは統一性があって面白い……ふむ、侵攻前の準備として動きの確認をしたかったとかだろうか? 魔族がなぜ現われたのかについて考察しながら、俺はメリス達を観察し続ける。


 魔族が喋りながら魔物達を使役する中で、メリスはあえて動かない……待ち構え、俺が教え込んだ技法を撃つ準備をしているのだろう。

 なお、魔物についてはそれほど強くない。よって今のメリスの実力を考慮すれば、問題はないはずだが……敵を倒して魔族がどう動くか、だな。


 もし逃げられるような形になれば……もう少し近づいておくか。俺は気配を断つよう心がけながら少しずつ大穴へと近づいていく。

 ここで俺の存在が露見したら元も子もないので、いつも以上に慎重に……と、魔物達が徐々にメリスを取り巻き始める。たった一人なので魔族側も慢心しているかなと思ったのだが、どうやらそういうわけではない……いや、待てよ。


 魔物達は理路整然としていながら魔族の命令を待っているわけだが……よくよく見れば、足並みが揃っていない個体もいる。あー、これはやはり統率など動きを確認するために魔族は地上に現われたか?

 だとするなら、魔族にとって目の前のメリスは手頃な獲物といえる……そう思った矢先、魔物達が突撃を開始する!


 始まったか……俺はなおも観察を続けながら魔族に気取られないようなおも少しずつ接近していく。その間にいよいよメリスの戦いが始まった。

 間近に迫る魔物に対し、彼女は一閃し瞬殺する。彼女の剣戟は以前よりも鋭さを増し、剣は無慈悲に魔物を屠っていく。


 魔族の反応はどうか……と表情を窺うと興味深そうな顔をしていた。


「ほう、少しはやる手合いのようだな。とはいえ、それがどこまでもつかな?」


 大穴からさらなる魔物が出現する。増援というわけだが質はほぼ同一。その魔物達もきちんと命令を受けており……あの魔族が使役しているとしたら、結構な能力ではあるな。

 この状況下で、作戦を成功させるには……俺が頭の中で算段を立てていた時、メリスの握る剣から強い魔力が漏れ出し始めた。


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