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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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渓谷と魔物

「……正直なことを言うと、わからないというのが返答になる」

「わからない?」


 首を傾げると、メリスは微笑を浮かべながら説明を始める。


「特別な感情、という表現であれば私にはある。けれどそれが恋愛感情なのかどうかは……私自身にも、よくわかっていない」

「まず忠誠心が先に来ている、とかか?」

「そういうことだと、思う」


 引っ掛かる物言い。彼女自身、自分でどのように考えているのか、整理できていないという雰囲気だな。

 彼女にとって魔王とは……忠誠を誓う者であると共に、マーシャが語っていたように敬愛する存在でもある。けれどメリス自身、そうした感情を持て余しているようにも見える。


 マーシャが以前はやし立てたような事実はあるが、メリス自身は……そういえば、勇者エルトと戦う前に彼女に願いを告げるよう俺は言った。その内容を俺は聞くことができないけれど、彼女は何を願っていたのか。


「……わかった。無粋な質問をして悪かった」


 俺はそう告げ、話を打ち切る。


「さて、今日の鍛錬はここまでにしよう。時間は掛かっているけど着実に強くなっている。自信を持っていいよ」

「もし魔王ゼルドマと戦うことになったら……」

「完成すると断言することはできないけど、通用する技法にはなると思う」

「わかった」


 メリスはそう答える。今はそれで十分……という様子を見て取ることができた。






 翌日以降。旅を進めながら鍛錬を繰り返し、メリスに教えた技法が形になってきた段階で、俺達は目的地へと近づいた。


「さて、ここからが本番だが……」


 俺達が歩むのは森の中。鬱蒼と茂る森ではあるけれど太陽の光が所々に入り、とりあえず歩くには困らない。

 そしてラクラノが語っていた場所というのは、森の中にある渓谷……地底の中へと繋がる断崖絶壁が存在する場所だ。そこに入ることで、目当ての魔王ゼルドマが見つかる……かもしれない。


 そう、現段階では状況証拠ばかりなので、もし魔王ゼルドマと関係していなければ、完全に無駄足となるのだが……やがて森を抜け闇深く覗かせる大穴を見て……魔物の気配を多数観測し、俺は確信する。


「これは、間違いなくいるな」

「私もそう思う」


 メリスも同調。大穴から、ずいぶんときな臭い魔力が漂っていた。ただし、肝心の魔王ゼルドマの気配はなさそう。


「メリス、もし地上から近くにいたのなら戦う気でいたんだが、どうやら敵は地底奥深くにいるみたいだな。どうする?」

「……フィスは、どんな風に考えている? 誰かに助けを頼む? それとも……」


 問い掛けられたので俺は少し思案し、


「逆に問うが、助けを呼ぶとして……誰に頼る?」

「正直、この国の人と親交があるわけじゃないから、騎士などに頼るのは無理だね。だから、もし頼むとしてもマーシャやラクラノになるんだけど……」

「それはつまり、魔王ヴィルデアルの部下達に、ってことか」

「そういうことになる。けど、正直望みは薄いと思う」

「ま、それはそうだな……ということは、俺達に頼れるものは何もないわけだ」

「それはここに来るまでにわかっていたことだけど、ね」


 メリスは肩をすくめる。


「今ここで言うのは、何か意味が?」

「確認だよ。現状を再度認識してもらって、その上でどうするか決める……戦うか、戦わないか」


 地底に入り込み、魔王を討つことができなかったら……いや、そもそも仮に魔王を倒せたとしても、地上に戻る体力がなくなっていたら遭難し死んでしまうかもしれない。


「相手は魔王である以上、厳しい戦いが予想される……それを承知で俺達は今から踏み込むわけだが――」

「愚問だよ、フィス」


 メリスは告げる。


「私には目的がある……それを成すまでは絶対に死ぬわけにはいかない」

「とことん復讐のためなんだな……まあいいさ。やる気があった方が俺としても心強い」


 そこまで言うと、俺は町のある方角へと指差す。


「今日はさすがに入らず、明日動くとしよう……地底探索となると、それなりに準備もいるからな。魔王との戦いより前に遭難とか、シャレにならない」

「そうだね」


 メリスは頷き、元来た道を引き返す……それに対し俺は、一度大穴を見据えた。


 ぽっかりと、吸い込まれそうな闇が広がっている。その大穴周辺に魔物がたむろする姿も見え、またその動きは明らかにおかしいとわかる――といっても、魔王が復活しているという情報を知る俺達だからわかるくらいのもの。普通の人ならば魔物の巣だと判断し踵を返すだけだろう。

 あの奥に魔王ゼルドマがいるとしたら、地底のどこにいるのか……歩き回るにしてもそれなりに準備がいるだろう。


「荷物持ちとか必要だろうけど……マーシャに頼めばどうにかしてくれるか?」


 ゴーレムがいるのなら、荷物などについては心配いらなくなるのだが……さすがに、すぐに作成とかは無理だよな?

 大穴の具合を見る限り、時間は多少なりともありそうだから準備に時間を掛けても問題はないだろう。


 よし、まずはそこからだな……と考えながら俺もまた町へ向かうべく歩き始める。前を歩くメリスを追って、茂みに入ろうと――

 そこで、俺は後方を向いた。大穴のある方向だが……。


「……気のせいか?」


 俺は眉をひそめ、じっとそちらを眺める。


 景色はまったく変わっていない。しかし、空気というか、気配というか……そういうものが一瞬だが、変わったような気がした。


「……兆候はあるみたいだな」


 問題はいつ爆発するのか、だな……もし準備している間に戦闘に入るとしたら――


「様子を窺う魔物を作成しておくか」


 俺はメリスの所へ合流する前に、ネズミを作成して放っておくことにする。もし何か変化があればここに急行……魔王ゼルドマが姿を現せば、願ったり叶ったりである。


「そう上手くはいかないんだろうけど……な」


 ひとまずマーシャと合流し、どうするかだな……改めて地底攻略のために計画を頭の中で立てながら、俺は森を後にすることとなった。


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