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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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やるべき事

 俺はメリスの口から色々と聞き……それをきっかけに、俺達は色々と話をした。そして彼女の口から、彼女視点における魔王ヴィルデアルについて聞くことができた。


「陛下は……同胞を救い続けることを是とし、まただからこそ魔族が同調し、なおかつ人間が敵対したということもある……それが陛下のご意思でなかろうとも」

「どういうことだ?」


 首を傾げながら尋ねると、彼女から答えが。


「魔族を救い続けるということは、人間にとってみれば軍事拡大を行うつもりなのでは……そういう風に感じられていた節がある。そして魔族達からすれば、この世界を魔族のものとするために、陛下が動いていると認識していた」


 はあ、なるほどね……たぶんそこにヴァルトは乗っかったのだろう――いや、ヴァルトは利用しようと思いついたのかもしれない。


 魔王ヴィルデアルが俺――ヴァルトにとって宿敵だと知り、どうすればいいか考えた。同胞を受け入れる俺のやり方からすれば、情報を得るために間者を潜り込ませることだって容易だったはず。そこで俺に侵略目的がないことを知り……ならば、逆にそれを利用しようと考えた。


 そしてヴァルトは俺と関わり合いのない魔族に狙いをつけ、利用した。ある時は魔族を煽り、ある時は魔王ガルアスのように「活動することが魔王ヴィルデアルに対する貢献だ」とでも説得して、鼓舞した。その結果、人間側が動いた。俺の考えを知るヴァルトからすれば、人間が攻め込んできたらどうするか……それは如実に理解していたに違いない。


 これは誤解を解かなかった俺の方にも問題があるのだろう。ただまあ、主たる要因はヴァルトが魔族達をたきつけたせいだ。うん、そう思うことにしよう。


「今思えば、陛下は基本人間に危害を加えようという意図を見せなかった。たぶんだけど、陛下は争う意図はなかったと思う」


 それは正解である。


「つまり、魔族達を集めて城に住まわせていたってだけなのか?」

「たぶん……陛下は城を魔族達の故郷にすると仰っていた」


 言ったな、そんなこと。実際俺はそのつもりだったのだが、結果は前世の有様である。


「陛下のお考えは、きっとそれで合っている……けれど、同胞達はそれ以外にも考えがあるとして、独自に動いていた面もある」

「つまり、魔王ヴィルデアルの考えを深読みしようとしたってことか」


 俺の指摘にメリスは頷いた。


「ただ平穏に暮らす、ということに納得しきれなかった同胞もいたんじゃないかな」

「それは、何故だ?」

「……私もそうだけど、近年魔族達の風当たりは強く、人間に危害を加えていなかった存在も目の敵にされた。だからこそ恨みを持っている者も多かったし、そういう同胞が陛下のお考えを曲解して、動こうとしていた面もあるかと思う」


 ……その辺りはできる限りフォローをしたつもりだったのだが、解決しきれなかったということか。


 もし、今後同胞達に対し穏やかに、平和に暮らしてもらうにしろ、この辺りをどうするかという課題が出たな。俺の前世である魔王ヴィルデアルの活動については、ヴァルトの妨害がなかったとしてもいずれどこかで無理が生じた。実際マーシャの説明だと戦争準備を密かにやっていた者までいたくらいだ。それを止めたとしても、人間側に戦争準備をしていることはバレただろう。そうなったら結末は……結局、同じ流れをとっていた。


「メリス、魔王ヴィルデアルの考えについては存命の頃からさっき言ったように思っていたのか?」

「うん、そうだね」

「なら、その辺りを同じ魔族達に伝えなかったのか?」

「私は陛下の側近だったけど、発言力はなかったし、例え言ったとしても彼らは無視して行動していたと思う。自分の考えこそが正しい、と」


 あー、確かにやりそうだ。ということは、俺の目論見について、やり方を色々と工夫する必要性がありそうだな。

 そうなると、さすがに自由にやらせるというよりは一定のルールなどを作成するべきだよな……ということは法律的な物を作る必要性が出てくるか。そういう縛りがなければまた同じ事を繰り返すだろうし。


 ただ、この場合――やるべきことは同胞達に安住の地を、というレベルではなく――たぶん、国を作るくらいの勢いがなければ難しいだろうな。


 そこまで考えた時、俺は頭を抱えたくなった……いやまあ、やるからには相当険しい道だと思っていたけど、国か……でもそのくらいしなければ、魔王ヴィルデアルでやらかした過ちを繰り返すことになる――覚悟を決めるしか、ないのだろうな。

 そして国作りというのならなおさら土地などが重要になってくる。その辺りをどうすべきか、色々と考えなければ。もっとも現状神族の主神に会うという方針は変えなくてもいいだろう。土地などを見つけるにはその道筋が最短だろうし。


「なるほど、参考になったよ。ありがとう」


 俺はメリスへ礼を述べる。それに彼女は「どうも」と答え、


「フィス……私は元魔族だけど、それでもいい?」

「過去がどうとか俺は気にしないよ。今、メリスは動機は復讐だけれど魔王を倒している……それは人間の営みに貢献しているのは事実だし、今はそれでいいよ」

「……今は?」

「以前も言っただろ? 目的を果たした後のことを考えて欲しいと」


 俺の言葉にメリスは沈黙する。


「メリスの話を聞いて、より強く思うよ。メリスは魔王のことを思い、復讐に身を投じた。けれどそれを果たしたら……どうするつもりなのか」

「私は……」

「さすがに後を追うなんてことをしそうな雰囲気ではないけど、純粋に心配になったんだ」


 こちらのセリフに彼女は視線をこちらと合わせる。


「こうして話ができるようになったんだ。もし悩みとかあったら遠慮なく言ってくれ。そして今後……戦いが終わった後のことで相談したいこととかがあったら、それについても話してくれ」

「……わかった」


 メリスは頷く。ひとまずこれで話は終了か。


 自身の正体を明かしてそれなりに彼女へ近づけたと思う。こちらのことを語ることができないのは心苦しいけど……復讐心が残っている上に、魔王ヴィルデアルの遺骸と聞いて反応していた以上、俺が魔王ヴィルデアルの意思を持つとしればどうなるかわからない。


 話せる時が来るのかはわからないけれど……やがて俺達は修行を終了して宿へ戻ることにする。明日以降も旅は続く。しかも今度の魔王は強敵。メリスとも改めて話をできたことだし、気合いを入れ直すとしよう――


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