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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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とある作戦

 翌朝、俺達は魔王ゼルドマについて調べることにして、リューメイ王国へと進路を向け旅立つこととなった。


「二人とも、気をつけて」


 マーシャに見送られて俺達は屋敷を後にする。で、町に出る前の時点でメリスが口を開いた。


「リューメイ王国へ入って情報収集をして……その後どうするか決めるってことでいい?」

「ああ。魔王がいるかもしれないっていう曖昧な情報だ。特に収穫がなければ退散してもいいだろう」


 現時点で魔王が出現したという確定的な情報を所持しているわけではない。あくまで可能性の話をしているので、問題がなければ即座に引き上げていい。

 ただ、勘ではあるけどたぶん出現していると思うんだよな……根拠はない。ただロウハルドの件のこともあるし、ヴァルトがアイツだけを復活させたとは考えにくい。よって他にも色々と仕込んでいる可能性は高く、その一つが魔王ゼルドマ――そんな気がする。


 しかしこの推測だと、当然二体だけという話ではなくなるだろう。ヴァルトは過去に幾度も魔王という存在を生み出してきた。そして俺と同様どう敗北したのかなど全てを把握している。つまり魔王が滅んだ場所を全て知っているわけだ。


 本当ならヴァルトを見つけたいところなのだが、用心深さ、慎重さにかけては一級品だからな。下手に干渉してこちらのことが露見するのはまずいので、こっちも慎重にならないといけない。

 というわけで当初の予定通り俺達はリューメイ王国へと向かうわけだが、その途中でマーシャと話し合ったことを実行することにする。


 ある日、俺は旅の途上で予定していたことをやる……夕食時の酒場。メリスと向かい合って話をしている時、彼女の左手に注目した。


「メリス、そういえば一つ気になっていたんだが……その指輪は新しい道具か?」


 彼女の左手、中指に銀製の指輪が一つ。それを指摘すると彼女は小さく頷いた。


「あ、うん。魔力を高める物、ということでマーシャからもらったんだけど」

「へえ、それで能力が強化されるってことか」


 それこそマーシャと打ち合わせをした道具である。メリスが語った通りの効果をもたらしているのは事実なのだが、とある仕掛けが存在する。それはマーシャと話し合った計画を実行するためのものである。

 で、夕食後俺達は訓練を開始する……訓練は体調などを考慮し時間が不定期なのだが、今日は旅の日程もずいぶん余裕があったため、こういう形となった。


「よし、それじゃあ始めるとするか」

「ええ」


 剣を振り始める彼女――正直進捗については微妙なところ。俺が体得している技術は魔力の流れとかも特殊で、彼女としては四苦八苦しているような感じ。

 メリスの魔力の流れについては本当に真っ直ぐだからな……と、俺はここで一つ気になったことを尋ねてみた。


「なあメリス。今まで深くは訊かなかったけど、剣術とかは誰に教わったんだ?」


 そういえばマーシャとかにもその辺りは訊いていないんだよな。


「剣術? それは……たぶん知らないと思うけど」

「有名な人とかではなく?」

「うん。名前はオース=デヴァンって人だけど」

「……あー、あの人か」

「え、知ってるの?」

「ああ。父親の友人……つまり勇者と共に魔王と戦った人物なんだけど、その人が語っていた人だ。何か縁でもあって師事したのか?」

「うん、小さい頃から見知った人で」


 ……なんとなくだけど、そのオースって人と交流し、剣を学べるように上手く誘導したのかな。全ては俺の名を利用して暴れ回っていた魔族を倒すために。

 これはとことん、復讐のために人生を費やしている雰囲気だなあ。そのくらい執念を燃やしているというのはいっそ清々しさすら感じられるのだが……それだけ費やしている以上、簡単に止まってくれそうもないな。


 やっぱりここは、申し訳ないけど彼女の内面に踏み込むことにしよう……そう思いながら言及する。


「メリス、新しく手に入った道具を試そうか。どのくらいの効果があるのかなど、確認しておく必要もあるし」

「そうだね」


 メリスも同意し、指輪を見据える。どうやらそこに魔力を込めることで効果が発揮されるタイプらしい。

 さて、仕掛けはいつ発動するのか……マーシャが言うには普通に使う分には問題ないが、出力を上げるとある問題が発生する。これは意図的なものであるわけだが――


 力を高める。うん、刀身に注がれる魔力が増したな。


「どうやら魔力を増幅する効果があるみたいだな」

「みたいだね」


 その状態でメリスは剣を振る。といっても剣を振るだけではまだ仕掛けは発動しない。


「メリス、出力ってどのくらい上げることができるんだ?」

「ちょっと待って」


 言いながら彼女も色々と試し始める。やがて指輪にさらなる魔力を注ぐ段階となって……その時はやって来た。

 一瞬――ほんの一瞬ではあるが、魔族特有の暗い力が感じられた。これこそマーシャが施したもの。無論これは調整ミスの欠陥品なので、後でマーシャの分身を介し問題ない物に交換する手はずとなっている。


「っ……」


 そしてメリスは小さく呻いた。突然魔族の魔力を感じたわけだから、そうなるよな。で、それに対し俺も目を細めて応じることにする。


「……今のは、何だ?」


 そして呟く。一方のメリスは指輪へ魔力を注ぐことを止めたのだが、俺を見返し固まってしまった。


 まずい――そんな感情が読み取れる。道具を製造したのはマーシャなので、彼女の出自がバレる危険性がある。

 どう取り繕うか……メリスの脳内ではどうすべきか思考を巡らせているはずだが、ここで俺は動くことにした。


「今のは、普通の魔力とは違うな」

「あ、えっと……」

「後ろ暗い力……それを作ったのはマーシャのはずだが、なぜそんな力が指輪に宿っているんだ?」


 問い掛けにメリスは沈黙する。咄嗟に良い言い訳が思いつかない様子。

 ここで辺に誤魔化されるのも面倒であるため、メリスには悪いが畳み掛けることにする……俺は頭の中で言葉を選び、さらに問い掛けることにした。


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