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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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魔王を滅した武器

「騎士、ですか」


 マーシャが俺が告げた言葉を呟く。その様子から、さらに説明を加えることにする。


「リューメイ王国にその騎士をモデルにした絵画があったな。馬に乗り槍を構える騎士なんだが、これがまあ結構格好良かった。実物も格好良かった」

「……実物について語ることができるのは、世界広しと言えど陛下だけでしょうね……」

「かもしれないな。で、その騎士が握る槍は、その当時存在していた技術を結集して作られたもので、それはそれは強かった」

「人間達の技術の結晶、というわけですか」

「そうだな……マーシャは人間の技術と聞いて、大したことはないと思うか?」


 こちらの疑問にマーシャは一考し、


「魔法技術など、未熟な部分は多々あるかと思います。しかし彼らが奮起して生み出されたものというのは、時として魔王を討つほどの力がこもる」

「そうだな。その槍もまた、追い込まれた人間達が生み出した……魔王的に言えば、人間には過ぎたる産物、かな」

「凄まじい力がこもっていたと」

「ああ。その槍は、炸裂魔法が封印されているかのように、凄まじい魔力を発し触れる者を……いや、槍を振るだけで衝撃波が生じ、周囲のいる魔物を殲滅した」

「それ、味方側も危ないのでは……」

「人間には効果がない武器だったんだ。また槍は魔法を収束し、その力をより拡散させる機能があった……大量の魔物が一振りで消し飛んでいく。戦場を観察していた俺も唖然となったよ」

「凄まじい武具のようですね……ちなみにですが、その槍はどこにあるんですか? まだ現存しているのですか?」

「たぶんあると思う……魔王が消え去ったリューメイ王国のどこかにあるんじゃないかな。マーシャは知っているかもしれないが、三百年前に魔王ゼルドマと戦った国って、そこから百年後くらいに滅んでいるから、その国に由来する物とかかなり多く紛失しているんだよな」

「槍そのものは非常に有用だと思いますが……」

「槍を扱っていた騎士以外に使っていた試しがなかったから、もしかするとその騎士だけが扱えるよう調整されていたのかもしれない」

「なるほど。それほどの力を持っているのに後世に語られていないのは、その辺りが原因かもしれませんね」


 納得した表情のマーシャ。では話を先に進めよう。


「魔王ゼルドマとの戦いだが、さすがに相手も見るに見かねて魔王自らが相手をすることになった……しかし人間側は準備できていた。大規模な魔法陣を展開し、魔王の動きを縫い止め……その胸に、槍を突き立てた」

「人間側の見事勝利、というわけですね」

「まあ問題はそこからだったんだけどな……平原を覆うほどの魔物は魔王を倒した直後から暴れ始めた。膨大な数を単独で制御できる力を持つゼルドマは間違いなく魔王であり、結果としてそうした魔物による被害が、国を滅ぼす要因となってしまった……百年もったが、魔物の影響は最後まで残ってしまったわけだ」

「滅んでなお、魔王の遺風はあったと」

「そういうことだ。物理的に国を潰すのではない分だけ、俺としてはタチが悪いんじゃないかと思っている」


 その言葉でマーシャは深々と頷いた。


「仰る通りかと思います……今回、その魔王ゼルドマが復活した可能性があるわけですが」

「戦うとなっても撃破はそう難しくないよ。個人的な戦闘能力は低い……魔王を名乗るだけの力はあるけど、俺からすれば楽勝と言っても差し支えないくらいだ」

「魔帝ロウハルドよりは弱いと?」

「そうだな。ただし問題がある。現状ゼルドマが復活していても、その居所はわかっていない」

「時間が経てば当然、魔物が増えますからね……早急に見つけなければ被害が出るでしょう」

「そうだな。国が滅ぶ遠因となるほどの数だ。そこに到達する前に手を打つ必要がある。現時点ではそこそこ時間はあるだろうし、屋敷へ戻りリューメイ王国へ向かう……その時点でどう立ち回るか決めてもいいだろう」

「時間がある、ですか」


 彼女の言葉に俺は首肯する。


「魔帝ロウハルドの時もそうだが、どうやら魔王を復活させているアイツは魔王を全盛期の状態で蘇生させることはできないらしい。ロウハルドだって魔物などを食い続け力を吸収していただろ? あれほどの力を得るのに結構な年月が掛かっているはずだ」

「なるほど、確かにそうですね。とすると魔王ゼルドマも――」

「復活してからどの程度かわからないが、現時点で魔物が多くなったくらいのものだ。現在進行形で魔物を生み出している最中で、まだ数的にはそう多くないってことだろう」

「確かにそうかもしれませんね……では、私達がやるべきことは――」

「ゼルドマに関する詳細を今から伝えるから、屋敷に戻った際にメリスへ伝えるように。そしてリューメイ王国へ向かい、魔王を討つ……こんなところか」

「わかりました。では情報を」

「ああ」


 返事をして俺はゼルドマに関する詳細を伝えることにする――それを終えた後、俺はマーシャの分身と別れ、宿へ戻ることとなった。






 翌日、早朝から旅を開始し、夕刻にはマーシャの屋敷へと戻ってきた。


「お帰り、二人とも、噂は既にここまで届いているよ」


 嬉しそうに語るマーシャ。そうして出迎えられ、俺達は夕食をとることに。結構奮発したのか、豪勢な食事が食堂に並べられていた。


「さて、それじゃあ食べるとしましょうか……その間にゆっくりと話を聞かせてもらおうかな」


 報告で聞いているわけだが、話の流れとしてはそういう形になるよな。というわけで話をしながら食べることにする。

 その過程で、一つ興味深い話題が出た。それは迷宮へ入り込む前にいちゃもんをつけられたフーベル=ラクシャンについてだ。


「ああ、彼なら知ってるわよ。私ラクシャン商会のお得意様だからね」

「へえ、お得意様?」

「研究をしていると何かと物入りになるからね。で、私はゴーレムの技術とかを提供し、人いらずのメイドさんとかを作るような商品開発をしてる」

「人いらず……メイド家業がなくなりそうだな」

「細かい命令とかを施すにはかなり資金もいるから、正直現段階では人を雇う方が安上がりなんだけどね。この屋敷で動いているゴーレムは言わば実験用で、なおかつ私の魔法があるから動いているわけで」

「色々大変なんだな」

「そうね……フーベルについては会長である父親も手を焼いていたわね。迷宮探索に参加するってことで、どうしたものかと悩んでいたし」


 ……そういえば、彼らはどうしたのだろうか。疑問に思ったが事の顛末を調べるのは難しそうだな。


「もし商会の助けがいるなら、私から言えば条件次第では協力してもらえると思うわ」

「それは助かる。憶えておくよ」


 これはいい情報をもらった……で、ここから魔王の話題に入るか。


「そういえばマーシャ、魔王に関する情報とかはあるか?」


 こちらが水を向けたことで、彼女も気付いたらしい。マーシャは頷き、俺達に改めて語り始めた。


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