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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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50/190

落ち度

 四方囲まれた状態での交戦であるため、状況的には最悪だし敗北してもおかしくないのだが……俺は至って冷静に魔法を行使。

 それは足下に魔法陣を浮かび上がらせるもの。地面が陣により発光し、それを見てガルアスは眉をひそめた。


「その魔法は――」


 言うや否やメリスが迫ってきた悪魔に対し一閃、撃滅する。次いでアイーダやオルバも交戦を開始するが、動きにキレがあるためか難なく一体を撃破した。

 そして騎士や冒険者達も交戦を開始する。こちらはさすがに単独で対処とはいかなかったが、悪魔の動きに対応しどうにか倒す。


 するとガルアスがピクリと反応し魔法陣に目を向けた。動きが鋭くなったのだから俺の魔法を疑うよな。


「強化魔法……だな」


 正解である。しかしそんじょそこらの魔法とは違う。なんとこの魔法、対象者のあらゆる能力を全て底上げするのである。

 魔法陣の効果範囲に入っている人間は、身体能力だけでなく反応速度なども向上する。とはいえ魔力的に能力を底上げするくらいなので、一人に魔法を注ぐよりも効果は薄い。けれど集団戦となれば話は別だ。


 この魔法によってアイーダやオルバに加え、エヴァンに帯同した騎士や残る冒険者達も大きな戦力となる。結果、悪魔の迎撃についてはメリスを加えれば彼らに任せて問題ない様子。残るはガルアスだ。


「まあいい。それならそれで始めるとしよう」


 大剣を構える。魔王というよりは武人と表現した方が似合う雰囲気だ。

 先ほど分身と戦ったわけだが、戦法などがそう変わることはないだろう。派手な魔法とかを使えば洞窟なので崩落の危険性もあるし、ここはおそらく大剣に魔法を集中させた一点突破という感じになるか。


 で、問題はエヴァンの剣が通用するかどうか。聖剣を手にしたとはいえまだ完全に扱うのは厳しいはずで、存分に使えるような状況でもない。

 先に仕掛けたのはガルアス。大剣がまるで棒きれでも振るかのように軽く振られ、対峙するエヴァンへと襲い掛かる。


 けれど彼は聖剣の力を引き出し、応じた。直後、轟音が空間内に響く。結果は、


「やるじゃないか」


 ガルアスから感嘆の声が。エヴァンは聖剣と俺の魔法によって、魔王の剣戟を真正面から受け止めた。

 ただ俺の魔法はあくまで補助的な役割で、実際は聖剣の力によるものが大きい。目を凝らさなくとも放たれる魔力を感じ取ることができ、ただならぬ力を所持していることは明らかだ。


「その剣の力を存分に活用しているか……私の分身と戦っただけでそこまで制御できるとは、驚き――いや、この国の中で私を倒すために派遣された騎士だ。このくらいは当然、とでも言うべきか?」


 そう語ってはいるが、表情は嘲笑した雰囲気……侮っているというか、天から愚かな人間を見下ろしているという風に見えるな。


 実力的には間違いなく魔王ガルアスの方が上……さすがに聖剣を手にしたといっても、騎士エヴァン自身が魔王に挑めるほどの急速なレベルアップをしたというわけではないからな。

 かといってメリス達が悪魔を殲滅するまで魔王が待ってくれるとは思えないので、ここは一つ策を用いて対処しよう。


 俺はさらに一つ魔法を起動させる。とはいえガルアスにすら認識されないであろうこの魔法……ガルアスの落ち度は、この俺に分身とはいえ魔力を分析されてしまった点にある。

 ガルアスがエヴァンを押し返す。そこで決めに掛かるつもりか大剣を掲げ、一気に振り下ろした。


 そこへ俺がフォローに入る。分身と戦った時と同様に俺達は二人で刃を止めることになり――どうにか、支えきった。


「ほう、やるな人間共!」


 声と共にガルアスは押し込もうとする。そこで俺は、


「騎士エヴァン。俺が使っている魔法陣の魔力を一瞬だけあんたに注ぐ」


 彼にそう告げ、剣と両腕に魔力を集める。


「どうにか隙を作るから、一撃叩き込んでくれ!」

「言ったな、人間!」


 ガルアスが叫ぶ。同時、俺は一気に相手の剣を押し戻し、弾き飛ばした。

 魔王からすれば驚くような結果かもしれない――ここでエヴァンが前に出た。俺の作戦通り、一気に仕掛けようとする。


 だが当然、ガルアスも対応しようとする――そこで、俺は本命の魔法を発動させた。


「――っ――!?」


 短い呻き声。それは俺の魔法がきちんと成功した証。途端、魔王は動かそうとしていた大剣を止めた。

 隙が生じ、エヴァンはすかさず聖剣を振る。それは綺麗な弧を描いて魔王の体へと――叩き込まれた。


「ぐおっ……!?」


 声を上げながら後退する魔王。とはいえさすがに一撃で倒すことは厳しい……はずなのだが、魔王ガルアスは大きくたじろぎ、反撃どころかまともに行動できないような状態に陥る。

 次の瞬間、好機を悟ったエヴァンは前に出る。それに対しガルアスは完全に動きが止まり、為す術のない状況に陥った。


 ――なぜこのような状況になったのか。それは俺の魔法が原因である。まず前提となったのが分身に使った魔法。本来体が消え去ると同時に魔力もなくなるのだが、それが完全に消滅する前に俺が魔法を使って魔王ガルアスの魔力を取り込んだ。


 こんなことをした理由は、情報を手に入れようと思ったためだ。ガルアスが所持する魔王ヴィルデアルの力はどこで手に入れたのかなど、確認したいことがあったため魔力を捕獲した。魔族を始めとした存在は人間と異なり魔力の粒子となってもその記憶などの情報はまだ残っている。よって情報を得るために俺は魔力を捕獲したわけだ。


 そしてこれはもう一つの効果をもたらす。それは魔力の解析。魔王ガルアスは再登場し俺達を蹂躙する気だったわけだが、完全に魔力を解析できてしまった俺は干渉魔法で自由自在に相手の動きを縛ることができるようになった。

 だからこそ、目の前の状況がある。魔王ガルアスとしては身動きがとれなくなった理由を聞きたいだろうが、それを説明すれば半分くらいは俺の功績になってしまうので、エヴァンに配慮してやるつもりはない。


 ここは騎士団に――騎士エヴァンに花を持たせる。そう心の中で呟いた瞬間、彼は猛攻を開始した。聖剣の力を存分に利用し、身動きができない魔族へ一気に畳み掛ける!


「させ、るか……!」


 だがガルアスも黙ってはいない。俺が魔法で干渉しているにも関わらず徐々にではあるが動き始めた。もっとも、そうであっても一方的な展開が続いてしまっているのだが。

 これ以上俺の出番はないかもしれない……そんなことを胸中で呟いた矢先、エヴァンが決めるべくさらに魔力に剣を注いだ。


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