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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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迷宮の奥へ

 前世、魔王として消えゆく前に俺は滅んだ後のことについて処理はした。例えば城内にあった武具や道具など。こちらについては別所に封印し、誰の手にも渡らないようにしてある。

 その場所はメリスを含め数名の部下しか知らない……はずなのだが、俺の力を宿した道具があることを考慮すると、何者かが持ち出したのか?


 まあ正直道具といってもそんな大それた物でもないんだけど……で、先ほどリツォーグが使用した水晶球みたいな物については、たぶん俺の力が封じ込められた道具から力を抽出した物だ。

 で、そんなことをできる存在は……と、色々考えてから中断。事態の解明は魔王ガルアスと戦っていけばわかるだろう。


「最後の道具、厄介だったわね」


 と、腰に手を当てアイーダが語り出す。


「今後出現する魔族が全部あんな道具を持っていたら、至極面倒よ」

「対策といってもこちらがやれることはたかがしれているからな……さて、騎士エヴァン。どうするんだ?」


 状況は、最悪だった。リツォーグの威圧によって騎士と冒険者の大半はこの広間を逃げ出してしまった。残っている者でも戦意があるのは俺とメリス、エヴァン当人とアイーダ、オルバ……ただアイーダ達は命を張る覚悟を決めているというだけで、戦力になれるかどうかはわからない。


「あの魔族……おそらく最初の魔力は威圧目的だったのだろう」


 エヴァンは語る。状況は克明に理解しているらしい。


「こうもあっさりやられるのは切り札を使ったことからも誤算だったはずだが、目的の大半は達成された……すなわち、こちらを威圧して戦意を挫くことだ」


 そういうことだな。さて、騎士達はこれでほぼ使いものにならなくなった。エヴァンはどうする?


「勇者二人はどうする気だ?」

「私は進む」


 メリスは即答。彼女としては魔王ヴィルデアルの気配を発する道具を見つけたのだ。ここで進む以外の選択肢はない。

 一人であろうとも彼女は突き進むだろう……ま、やるしかないな。


「俺も進むことにするよ。アイーダ達はどうする?」

「私達は同行するよ。なんだか危ない匂いがプンプンするけど、そういう時こそチャンスよ」

「お宝を手にすることが?」

「そう。上手くいけば総取りじゃない?」


 にこやかに語るアイーダ。お宝を得られるという事実が恐怖を上回っているようだ。


「そうか……ひとまず通常の悪魔については問題ないし、武具を身につけた悪魔であっても魔族的な力を持つ以上はその真価を発揮するようなこともないだろう。だから道中については問題ない」


 ここで俺は一度肩をすくめ、


「魔族については……ま、なんとかなるとしか言いようがないな」

「……先ほど戦い、勇者フィスが援護をしていたのだろう?」


 エヴァンの問い。俺はそれに疑問で返す。


「どうしてそう思うんだ?」

「魔族は明らかに動揺していた。動きを妨害するような魔法を誰かが行使していたに違いなく、消去法でそれは勇者フィスだろうと」

「ま、正解だよ。ただそれはあらゆる魔族に通用するものではないことは了承しておいてくれ。油断し、侮っているから……そういうところを狙って俺は魔法を使う」

「面白いな……いいだろう。こちらも進むことにする。残る騎士達は戦闘については使いものにならないが、荷物を運ぶことはできるだろう」

「そういう役回りか……」

「人数が少なくなるから荷物も少なくてすむな……さて」


 エヴァンは残る騎士達へ首を向けた。


「まだ進める、という者は手を挙げてくれ」


 そうして反応したのは、残った者の中でおよそ半数。そこからエヴァンは荷物などの整理を開始し、多少時間が経過した後、俺達は出発することとなった。






 少人数となって、俺達はさらに奥へと進むことに。荷物を整理中に後続の騎士や幾人かの冒険者が加わり、合計人数は十人と少しといった案配に。

 このくらいの方が逆に動きやすいかな……そう思いながら迷宮を歩む。魔族リツォーグ戦以降、散発的に悪魔は現われるがメリスやエヴァンで容易に対処。特に問題もなく魔王ガルアスへ近づいていく。


 ただ、迷宮はなかなか広いようで、進み具合がそう早くないこともあって一日では終わらなそうな気配。分岐については俺の魔法により正解の道を選んでいるので最短距離を通っているはずだが、どこかで一夜を明かさないといけないかな。


「さすがに疲労が出てきたな」


 時間はわからないが、おそらく昼をとうに過ぎた段階。エヴァンは小さく息をつきそう呟いた。

 距離的には魔力を用いた身体強化で全力疾走すれば最深部までそう遠くないかもしれないのだが、今は周囲を警戒しながら少しずつ進んでいる状況。これでは歩みも遅く疲労だって溜まっていく。


 俺やメリスについては平気だし、アイーダ達もなんだかんだで余裕があるみたいだけど、エヴァンを除く騎士や他の冒険者については明らかに疲労し始めている。これについては無理もないが、集中力も落ちるし危ない。


「どこかに休める場所が……あるとは思えないが」

「あ、ちょっと待ってくれ」


 俺は手でエヴァンを制す。そして少し魔法を使い、


「どうしたんだ?」

「まだ少し距離はあるけど、どうやら水辺っぽい場所がある」

「水辺?」

「ああ。この迷宮は元々地下洞窟を利用したもの。自然のまま手付かずの所だってあるんだろう」

「仮に地下水が湧き出るような場所だとしても、そこが安全なのかどうかはわからないが……まあいい、他に当てもない以上、そちらへ進もう」

「決まりだな」


 俺の誘導に従い、迷宮を進んでいく。ひとまず悪魔の姿もないけど……うーん、魔王はこちらの動向を観察していて、疲労するのを待っているとか、だろうか?

 まあそれならそれで楽だからいいけど……やがて目的地に到着。地下水が湧き出た泉があった。


 ここに到達するまでの通路はやや狭く、もし大量の魔物が現われても一斉に襲い掛かってくるというわけでもないだろうし、まあなんとかなるだろう。


「……泉については異常もないよ。魔物の気配どころか生物もいないみたい」


 メリスが魔法か何かで確認。それでエヴァンは決断した。


「ならば今日はここで休もう。見張りについては――」

「交代してもいいけど、俺が見張っているよ」


 こちらの発言。それにエヴァンは眉をひそめ、


「一晩見張っていると?」

「魔法により体の維持はできるからな。戦闘に支障がないようにはするし、問題があったら言うさ」

「わかった……すまない」


 謝罪をした後、騎士達に指示を出す。ちなみに冒険者達は疲労感を隠すことなく地面に腰を下ろした。


「メリス、俺は通路を見張っているからこの空間に異常がないかを確認してくれ」

「わかった」

「アイーダ達は――」

「メリスを手伝うわ。異常がないか確認する間は無防備になるでしょ?」


 決定。メリス達は泉のあるこの空間を調べ始めた。

 その間に俺は腰を落ち着かせ通路を見据える。気配はない。索敵魔法を行使しても襲い掛かってくるような悪魔は確認できない。


 このまま悠長に休ませるつもりなのか……どうする気なのだろうと俺は胸中で考えながら、見張りを続ける。その間にエヴァン達は野営の準備を整え……メリスも調査は終了。ひとまず安全ということで、全員が腰を落ち着かせることとなった。


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