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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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分岐点

 まず悪魔の中で先陣を切ったのは矛を持った個体。豪快な振りかぶりと共に放たれた一撃を、騎士達は真正面から迎え撃つ。

 盾を持った騎士が、矛を受け止め防ぎに掛かる。先ほど戦っていた武装していない悪魔が相手だったなら、きちんと受け止め押し返していたことだろう。だが、


「ぐおっ!?」


 騎士は矛を受けて吹き飛ばされた。それだけでなく、防いでいた盾が大きく損傷する。

 幸い怪我はなかったみたいだが、悪魔の進撃は止まらない。そこで割って入るように前に出たのが、騎士エヴァンだった。


 風の剣で受けるのか、それとも他に――考えている間に彼は真正面から悪魔と対峙し、放たれた矛を、受け止めた。


 大丈夫なのかと不安になったが、懸念は一瞬で払拭された。盾を持つ騎士を吹き飛ばした悪魔の攻撃を受けてなお、エヴァンには余裕があった。

 どうやら風の力を利用して矛を上手く押し留めているらしい……と、彼は悪魔の武器を弾いた。そして即座に反撃に転じる。


 矛の悪魔は鎧ではないので見た目は脆そうだが……エヴァンが放った一太刀は、衣服に触れたが奥にある皮膚を斬るには至らない。

 とはいえ剣戟を受けたことで悪魔がたじろいだのは事実。ここで一気に押し込むことができれば……そういう考えを抱いた矢先、エヴァンは呼応するように動いた。


 悪魔へ肉薄し、剣を薙ぐ。鋭さは目を見張るほどで、今度こそ悪魔の体を完全に捉え、深々と抉ることに成功した。


 ――オオオオオオ、と悪魔の雄叫びが迷宮内をこだまする。だが次の瞬間エヴァンは窮地に陥る。残る二体の悪魔の矛先が彼へと向いたためだ。

 このままでは剣と槍の餌食になる……が、それを押し留めたのが、俺とメリスだった。


「加勢する」


 一言呟くと共に、俺は槍を握る悪魔へと挑む。横入りした俺に対し悪魔は一片の容赦もなく突きを見舞うが、それを見切ってかわす。

 即座に間合いを詰め剣に魔力を集中。鎧は人間から奪ってきた物だしそれなりに効力のある物だとは思うけど、俺は躊躇いもなく斬撃を放った。


 結果は――刃が悪魔の着る胸当てを一気に破壊し、その体ごと両断。悲鳴もそこそこに滅び始める。


 メリスはどうか……彼女は数度剣を打ち合った後、一瞬の隙を突いて懐へ潜り込む。そうして放ったのは刺突。白銀の鎧は周辺にいる騎士達の攻撃ならばはね除ける防御力を持っているはずだが、メリスは知らんとばかりに鎧を破壊し、悪魔の心臓に刃を突き立てた。

 それによりまた悪魔は滅んでいく……残る矛の悪魔に対し、エヴァンは一気に畳み掛ける。最初の一撃によって動きの鈍った悪魔にラッシュを浴びせ、一気に沈めた。


 動きはメリスなどが見せた神速には及ばないが、風の力を利用しているためか動きが軽く、悪魔は翻弄され最後は矛の狙いが定まらなかったようだ。

 武装により強化された悪魔だが、俺とメリスは余裕で対応。ひとまず単独行動となっても大丈夫そうだな。ちなみにアイーダとオルバは後方に控えていたが出番なし。実力を確認するのは後になりそうだ。


「……戦闘終了」


 そしてエヴァンが呟く。騎士達が武器を下ろし、彼は小さく息をつく。


「盾を破壊された者は大丈夫か?」

「はい、問題ありません」


 即答する騎士。ならばと、エヴァンは指示を出す。


「先へ進むぞ……全員、警戒は怠るな」


 移動が始まる。俺達はどうしたものかと考えていると、エヴァンが近づいてきた。


「二人の助力、感謝する」

「あの様子だと、加勢しなくても問題なさそうだったけど」


 俺の言及にエヴァンは首を左右に振る。


「犠牲者はさすがに出なかっただろうが、負傷者が出ていた可能性は高かった」


 ……俺と同じ認識みたいだな。


「二人の協力は今後、大きな助けとなる」

「そんなこと言っていいのか? 国側としては騎士達で魔王を討って欲しいと思っているんじゃないか?」


 疑問にエヴァンは口をつぐむ……加え、何やら視線を逸らし何かしら考える素振りを見せた。


 ふむ、この様子は……なんとなくだけど、今回の戦いに対し思うところがあるのかもしれない。聖剣を握る可能性のある存在として国に目を掛けられてはいるが、そのこと自体重いと感じているのか……重圧は半端じゃないだろうな。たぶん俺が同じ立場だったら逃げる。


 エヴァンは会話を打ち切り、騎士達の前に出て進み始める。俺とメリスは一度互いに目を合わせ、またアイーダ達もこちらに視線を送ってきた。


「ま、あの人はあの人で大変ってことね」

「それで済ませるのもなあ……ま、いいや。俺達も進もう」

「そうね。私達は危なくなったら援護しようと思ったけど、さっきの戦いぶりを見るとその必要もなさそうかしら?」

「どうだろうな」


 会話をしながら騎士達へ追随。そうして俺達は奥へと進んでいく。

 大穴を越えると、いよいよ気配が濃くなってきた。さらにいくつも道が分岐しており、エヴァンは騎士達と協議を始め、なおかつ幾人かが魔法を使って調査を始める。


 彼らの索敵魔法ではおそらく調査も限界がある。先ほどのような悪魔と似たような存在があちらこちらにいるはずだが、距離はわかるにしても迷宮内でどの位置にいるのかについては判別が難しいだろう。魔王ガルアスの気配も索敵魔法によって把握はできるが、入り組んだ迷宮である以上、直線的に進むのは無理だ。どうやってガルアスを見つけるのか――


 と、そんなことを考えながら俺も索敵魔法を使用する。ちなみに今回はアレンジを施している。簡単に言えば魔力を探知して、その気配が漂ってきた経路についてもわかるような魔法。


「……騎士エヴァン」


 やがて騎士の一人が声を上げ、索敵結果を報告する。で、俺の方はというと……エヴァンが立っている先にある一つの通路。そこから魔王ガルアスの気配が発せられているのを確認する。あれが正解の道だ。

 もし魔法技術について卓越した魔王なら、実はブラフで本当は別の道が正解となるところなんだけど、罠っぽい雰囲気がまったくない。俺のような魔法を使ってくることを考慮に入れていない雰囲気だな……まあ相手も魔王の知識による魔法によって索敵されるとは想像もできないだろう。


 さて、どうするか……ここで俺はさらに魔法を使用。金銀財宝が存在する場所を探れないか、と思ったのだが……あー、それっぽい魔力もあるな。ただガルアスの気配が漂う通路からなので、宝物庫があるにしても魔王がいる近くかもしれない。

 で、エヴァン達はどうやら別の道を指差している。これなら出し抜くことも可能だが……。


「指示を待った方がいいかしら?」


 アイーダが疑問を呈する。俺としては反応を待とうかなと思っていた時、


「勇者フィス、勇者メリス、一ついいだろうか」


 そう言って、彼はこちらへと近づいてきた。


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