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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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迷宮入口

 その後、フーベルとかいう人間に干渉される以外には大きなトラブルもなく、俺達はいよいよ迷宮攻略の日を迎えた。


「さて、頑張りましょうか」

「どのくらい掛かるかなー」


 アイーダとオルバが口々に述べる。迷宮の構造については全体像を含め完全に把握できているわけではないため、迷宮に足を踏み入れてどのくらいで魔王ガルアスと出会えるのかはわからない。

 ちなみに迷宮からは魔物などが出てくる気配は一切ない。不気味極まりないのだが、迷宮奥に存在するその気配から魔王がいることは間違いないらしい。


「一つ確認しておきたいのだけれど」


 ふいにメリスがアイーダ達へ問い掛ける。


「私達は魔王を目指して進むことになるのだけれど、そちらはそれでいいの?」

「ああ、そこについては別にいいわよ」


 返答はアイーダから。


「二人についていこうって算段だから、二人の意向に従うわ」

「危険度が増すぞ?」


 こちらの言及に彼女は笑い、


「百も承知よ。大きなリターンを得るためには、多少なりとも命を賭けないと」


 そしてウインクをする。修羅場でも喜んで行くという顔だ。

 危険な仕事をしてきたからこそ、騎士エヴァンにも憶えてもらったのかもしれないけど……ずいぶんとリスクのある仕事の受け方だな。


「ま、無謀だというのはこちらも理解しているわよ」


 彼女はそんな言葉をこちらに投げる。なんだか早死にしそうな感じだけど、本人が良しとしているのだから、良しとしておこう。

 そして騎士の号令により、迷宮探索者達が動き始める。森に入っていく様子は物々しく、冒険者騎士問わず硬質な気配に包まれていた。


「俺達はどう動くべきかな」


 これだけ人数もいると、迷宮探索もやり方を変えないといけないだろうか……どうしようか思案していると、メリスが話し掛けてきた。


「フィス、一つ提案が」

「……迷宮攻略についてか?」

「うん。どう考えても私達が先に入るのは無理。だからひとまず流れに沿うことにして、それから動こうと」

「その動きについて案があるってことか」


 コクリとメリスは頷く。


「それはどういう方法だ?」

「入口からしばらくは全員同じ方向にいくと思うけど、そこから逸れて別の道へ行く」

「……正解の道を辿れるかどうかわからないけど」

「話は最後まで聞いて。行き止まりなんかがあったら少しの間は待機をして、後ろから冒険者達を助けながら奥へと向かう」

「……はーん、なるほどね」


 と、意地悪そうな顔でアイーダは呟く。


「迷宮攻略を他者にやらせて、なおかつ助けて恩を売ると」

「私達は、魔王を討てる力がある」


 そこでメリスは語り出す。


「けれど、いちいち全ての罠を踏んでいてはさすがに疲労も溜まるしそんな状態では勝てるものも勝てない」


 ……俺達の目的はあくまで魔王討伐で、正直なところ魔王さえ倒せればどういう形でもいいからな。

 このメリスの提案は俺が以前「別に聖剣を得る必要はない」という言及も関係しているだろう。魔王さえ倒せれば固執する必要もない……そういう考えに至り、提案したわけだ。


「お宝が手に入る可能性が下がるわねえ……けどまあ二人が決めたのだから仕方がないか」


 どこか割り切った口調でアイーダは呟いた。


「もしだけど、騎士達でも対応できない敵の強さだったら、私達もまずいことになるよね」

「正直なところ、そこは迷宮に入ってみないとわからないからな――」


 そんな呟きを発した時、前方の人間が立ち止まった。どうやら入口が近いらしい。


「これ、人数から考えて迷宮に入るだけでも苦労しそうだな」


 そんな感想を漏らした時、先頭にいた騎士達が何事か告げる。ただ距離があるのでよく聞こえない。


「……んー」


 耳を澄ませ、声を聞こうとするアイーダ。


「誰が先に入るかを話しているみたい。まあ最初は十中八九騎士達なんだろうけど」

「それはまあ、当然だろうな……俺達の出番が来るまでしばらく掛かりそうだな」


 こちらの言葉にメリスは小さく頷く。で、俺は遠目に見える迷宮の入口を眺める。ポッカリと森の中に存在する洞窟。そこがどうやら迷宮の入口らしい。


「入口付近は平和そのものだな」

「魔物も外に出ることがなかったようね」


 アイーダはそう口を開き、俺へと解説。


「今まで脅威もなかったから警戒されていなかった……けどここまで人が集まっている以上、何が起きてもおかしくないわよね」

「確かにそうだな。というかここまで魔王に動きがないというのは不気味だ」


 罠が満載でもおかしくないな、これ。メリスの提案に乗っかるつもりでいるけど、罠ばっかりという話なら、待機できる場所すらあるのか疑問だな。


「……少し様子を見るか? 外側で」


 俺の提案にアイーダは肩をすくめる。


「私達のことは知られているし、待機しているというのなら何かしらやっかみとか受けそうだけど」


 面倒事になる可能性もあるのか。確かにあり得るな。


「俺達今後方にいるけど、場合によっては前を譲ってくれそうだよな……」


 そんな呟きは聞こえていなかったと思うが、俺達のことを見て道を開けてくれる者もいた。あー、これは作戦通りにはいかないかもしれないぞ。


「どうする、メリス。この流れだと俺達が前の方を陣取ることになってしまうぞ」

「……流れに任せようか」

「お前実は何も考えていないだけじゃないか?」


 そのツッコミにメリスは無反応。だが魔王としてそれなりにやってきたからわかる。これは図星だ。

 はあ……単なる迷宮攻略だけならまだしも仲間が加わりなおかつこれだけ人が多いのだから予定外も甚だしい。さすがのメリスも処理に困っているといったところか。


 とはいえここで嘆いても仕方がない……ただこれはある意味では良い方向かもしれない。


「……待っているな」


 俺の呟きにアイーダも気付く。真正面、道を開けてくれた面々の先に騎士達がこちらを見ていた。

 たぶん騎士エヴァンが何か言ったのだろう。こちらの実力を確認したいとか、そんなところかな。


 そしてそれはこちらも同じ……俺としても騎士エヴァンの実力を把握しておいても損はない。もし実力不足なら、どうにかして魔王と戦わせないような方向に持って行くとか考えてもいいか。

 なぜこうまで彼に気に掛けるのかというと、もしかするとヴァルト(あくまで可能性の話だが)との戦いで役に立つかもしれないからだ。まず俺の前世が魔王であることはマーシャ以外知らないし、ヴァルトらしき存在に露見したくはない。もしバレてしまったら厄介事が生じる危険性がある。


 よって、今後は「勇者エルトの息子としての名声を活用しつつ、仲間を増やしていく」という方針にしようかと考えている。人脈などを広くすれば情報も集まりやすくなるし、なおかつ今後ヴァルトがもたらす戦いについて支援してくれるかもしれない。


「……行こうか」


 俺の言葉に仲間達も従い、俺達は進み始める。この迷宮攻略がどういう方向に進むのか予想はつかないが、目的を達成すべく頑張ろう……そんなことを思いながら俺達は騎士達と対峙した。


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