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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第一章

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次なる魔王

 山中に魔王ザガオンがいないかすぐに神経を尖らせてみたが、ザガオンの存在どころか魔物の存在すら認知することができず、山に入ってからアレシアが逆に警戒の度合いを強めた。


「奇襲を狙っているようだな……」

「神経すり減らしたところを狙うといった感じかな」


 俺は山肌を見ながら呟く。メリスも同意なのか小さく頷いていた。


「で、どうする?」

「……探査魔法を使って居所を調べるとしよう」


 アレシアは部下に指示を送りその準備を始める。地面に魔法陣を描き、大地に干渉して敵の居所を確認するらしい。

 ふむ、俺も索敵してみるか……体の中で魔力を少しばかり高め、魔法を使用する。といっても周囲にバレるようなものではない。そもそも索敵系の魔法は敵に気付かれたらまずいわけだし、基本バレないような仕組みになっているわけだが――


「……いませんね」


 魔法を行使する神族の一人が告げる。そこでアレシアは目を細め、


「そんなはずはない……ロウハルドの存在は確認できるか?」

「はい。真正面方向から凄まじい魔力が存在します。それ以外に気配はありません」

「南側をレドゥーラに任せてザガオンはロウハルドの護衛に回ったのか?」

「北部からの本軍と戦っているのかもしれないね」


 メリスが提言。レドゥーラの戦いぶりを見て大丈夫だと判断。ロウハルドの援護に向かったという可能性も考えられるが、


「レドゥーラと戦っていた時間はそれほど長くはなかった。状況が優勢でも神族である私達が相手である以上は事の顛末を見るくらいのことはしそうなものだが――」

「あ、待ってくれ」


 俺は会話を手で制す。


「俺もちょっと魔法を使ってみたが、いるぞ」

「何?」

「距離があるからこちらの会話が聞かれることはないな。真正面方向……つまり進路に悪魔が待ち構えていて、こちらを迎撃するつもりだな」


 その言葉に神族達は互いに顔を見合わせた。魔法陣を利用して索敵したのに見つからないのに俺が気づけたというのは、こちらの実力を認識していても引っ掛かるものがあるのだろう。


「……他に、敵がいる場所はあるか?」


 やや沈黙を置いてアレシアが問う。俺は少し周囲に視線を巡らせ、


「悪魔もいるが距離はあるし数はそう多くないな」

「もしこのまま進めば……」

「空を飛ぶ悪魔が多数飛来してくるかもしれない……そちらは対応できるのか?」

「悪魔が敵だということを想定して準備はしてある。この場にいる部下達は全員対空魔法を所持しているし、戦うことはできるが……問題は数だな」

「上空から雨あられと魔法が降ってきたら、厳しいと」

「結界を構築しながら魔法攻撃というのが一番無難な戦法だが、物量が多ければ危険度は増す」


 数、ね……俺は少し意識を集中させる。


「悪魔の強さも考慮に入れないとまずいよな」

「今まで遭遇した魔物のデータなどもこちらは保有しているが、魔王ザガオンが直接率いる手勢だ。想像よりも強いと考える方がいいだろう」

「……さすがに接近していないから断定はできないけど、数は――」


 索敵により大ざっぱではあるが数を告げる。それにアレシアは腕を組み、


「ふむ、結界構築を優先するにしても、どれだけ耐えられるかわからないな」

「結界を駆逐する人員は、ここにいる面々のうちどのくらいだ?」

「半数ほどを想定しているが」

「なら例えば全員……アレシアも結界維持に加わったら、どうだ?」

「それなら十分耐えられると思うが、反撃の機会がなくなるぞ」


 彼女の指摘に俺は自分のことを指で差してみる。


「……何か手があるのか?」

「俺も対空魔法は使えるからな。しかも結構大規模な。ちょっと時間は掛かるけど」

「レドゥーラを一蹴したあなたの魔法のことだから、よほど強力だろうな」

「ザガオンに通用する可能性は低いけど、悪魔を迎撃できるくらいの威力は出せるんじゃないかと思う」


 そこまで言って、俺はザガオンがいるであろう真正面を見据えた。


「ただし敵の罠に飛び込むということだから、リスクもある。幸い向こうから動かないから考える時間はあるぞ」

「……このまま引き上げれば、ザガオンは神族本軍とロウハルドが戦う場所に横槍を入れるだろう」


 俺の提案に対し、アレシアはそう答える。


「ロウハルドとの戦いに介入させるにはいかない。よって、ここでザガオンを確実に倒す」

「ということは、俺の策に乗っかると」

「ただ、フィス殿の魔法がどの程度のものか確認したい。その実力に裏打ちされたものだと理解はしているが」

「簡単に言うと――」


 口頭で説明をする。それに対しアレシアやメリスはちょっと目を見開き、


「……疑問なんだが、そうした魔法をどうやって習得したんだ?」

「どうやっても何も、こういう魔法があればいいんじゃないかと思って色々やっただけだけど……」


 より正確に言えば魔王の知識と人間が保有していた知識とを組み合わせて作った魔法である。人間の技術では難しいとされる部分を魔王の知識で補ったという感じだろうか。


 こう言うと魔王の知識が魔法における最先端であるかのように聞こえるが、技術的なアプローチの仕方とか、あるいは人間と魔王とでどういう魔法が必要なのかなど、色々と違いがあるためどちらが上という尺度で言うことはできない。

 互いの不足分を補えるということで、今回魔法が完成した……そして今、それが役に立ちそうな雰囲気。


「で、どうするんだ?」

「……少し考えさせてくれ」


 部下と話を始めるアレシア。もし魔王ザガオンが遠目で観察していたら、敵の気配がないことで警戒しているのだと感じることだろう。

 そう思いながら俺は一つ気になった点を考える。神族の探知魔法ですら捕捉できない魔王ザガオンや悪魔について。これはおそらく、彼女達の魔法を上回る「何か」を利用していることに他ならない。


 それは一体何か。神族が扱う魔法構造についてはさすがに俺も調べられていないけれど、今回使用した魔法陣などの構図を見る限り、それなりに技術を用いていることは確か。

 神族の技術を上回る力……たぶんロウハルドから与えられた力であるはずだが――


「……フィス殿」


 やがてアレシアが口を開く。


「進もう。ここで退いては本隊の戦いに支障が出る」

「わかった。俺も全力で対応させてもらおう」

「そう言ってもらえると心強い」


 ――そうして俺達は進軍を再開する。それと同時、俺は一つ確信した。

 どうやら魔帝ロウハルドは、厄介な力を持っている……とはいえそれに対する策については、既に頭の中で浮かび始めている。


 俺としては色々と迷惑を被ったザガオンさえこの手で倒せば文句はなかったが、ロウハルドの方も自らの手で、という気持ちが少しだけ強くなった。

 ただ神族達が本腰を入れている以上出番はないかもしれないけど……そんなことを思いながら、俺はメリスや神族達と共に、山を進み続けた。


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