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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第四章

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決戦の日

 長い話を終えた後、俺は眠りについたのだが……結局ヴァルトの攻撃はなく、夜は明けた。

 翌朝、支度を済ませてテントから出ると、ノルバの姿を発見する。


「何かあったか?」

「千年魔王の気配が強くなっている。たぶん、ヴァルトは行動に移している」

「魔王復活のため、か……今からこちらが行動して、間に合うか?」

「無理だ。むしろ準備は整っていて、こちらの動向を窺いながらタイミングを見計らっているのだろう」

「わかった……なら、作戦会議といこうか」


 昨夜と同じように王が待つ天幕へ向かう。そこには既にメリスやチェルシーもいて、どうするのか俺の言葉を待っている様子だった。

 そこでまず口を開いたのは王で、


「話は既に聞いている。千年魔王についてだが……」

「昨夜話した通り、ヴァルトが最強の力を持たせて生まれた魔王……ただおそらく、今回はそれをただ復活させようとしているだけではありません。というのも千年魔王を降臨させた際に、色々と弊害も生じた。自身の手で生み出しておきながら、制御できないところもありましたから」

「根本的な話だけどさ」


 チェルシーが小さく手を挙げ俺へ質問を行う。


「なぜヴァルトはわざわざ魔王という存在を創り出したのか……それほどの力があれば、自分自身に力を付与してもおかしくなかったのでは?」

「もっともな話だが、どうやらヴァルトは俺のことを危惧したらしい」


 と、解説を行う。


「俺に襲撃され、死ぬ直前で俺が生きていたことを認識した……で、自分が矢面に立てば、その圧倒的な力が牙をむく。千年魔王は力を取り込むことができたんだが、生まれたての段階では力の規模もそう大きくはなかった。よって俺に見咎められないよう、ヴァルトとは関係ない個体として生み出す必要があった」

「なるほど。けれど今は違う」

「そうだ……ヴァルトという存在を隠す必要もない。となればどうするのか……おそらく、千年魔王の力を取り込んで我が物とする。自分自身の手で、俺と決着をつけるようにするだろう」


 その言葉に全員が沈黙する。つまり、次はいよいよ最終決戦というわけだ。俺は王へ向け、話を続ける。


「では具体的にどう動くのか……現段階で既に千年魔王の力を取り込んでいるのは間違いありません。ならば急がないと……と、いきたいところですが、実際のところヴァルトはいつでも千年魔王の力を取り込める形だったはず。たぶん、滅ぼした千年魔王の残留魔力を利用して改めて復活させた。けれどそれはあくまで器だけ……そこに魔力を注いで形だけ魔王という強さを得て、ヴァルト自身が魔力を取り込む。自分自身が戦場に立っていたのは、そうして得た力の一部を利用して、戦況を優位に進めようとしたためかと」

「私達の出番はあるのか?」


 王が問い掛ける。そこで俺は、


「もちろんです。俺を疲弊させるために魔物を動かすでしょう。千年魔王の力を取り込んでいる以上、ヴァルトはあまり動けない……よって、配下を押し進める」

「私達はそれを迎撃する、と……」

「無論、こちらも助力を行う」


 ノルバが王へ告げる。


「昨夜の段階で、予定よりも早く援軍が到着したので」

「神族の協力があれば、怖いものはないな……ならば、貴殿がヴァルトの所へ向かうために、援護する……それで、いいのだな?」

「はい、ヴァルトとは、俺が決着をつけます」


 昨日と同様の明言に王は力強く頷いた。

 では、メリス達だが……視線を向けると彼女とチェルシーは揃って頷いている。ついていくという意思を明確にしている。こちらも問題はなさそうだ。


 その時、天幕の外から偵察部隊と思しき騎士がやって来た。王へ魔物の状況を報告し、立ち去る。


「ふむ、どうやら魔物が動き始めたようだ。こちらの進軍を食い止めるためか、それとも魔物だけで終わらせるべく仕掛けているのか……」

「どちらにせよ、迎え撃たないと行けませんね」


 俺の言葉に王は首肯し、


「ただ、規模はそれほど多くはないらしい……一斉に進撃されればどうなるかわからないが」

「神族がいることもあり、出方を窺っているのかもしれません」

「では、どうする?」

「……ヴァルトについては、俺が接近すればいつでも力を完全に取り込み攻撃を仕掛けてくるでしょう。まだ準備ができていないと見せかけてこちらを焦らしているだけ……迂闊に攻め立てれば足下をすくわれるでしょう」

「こちらは神族の方々と連携し、対処していく……急進的に攻撃するより、その方がよさそうだな」

「はい。肝心のヴァルトの動向が少し気になりますが……まずは目先の魔物からですね」

「フィスを消耗させるのが目的じゃないの?」


 メリスからの意見。それに俺は頷き、


「それもおそらくある……ヴァルトとしては、魔王ヴィルデアルではなく勇者フィスとなった俺のことについて警戒している……どういう能力を保有しているのかなど、未知数であるから」


 そう述べた後、俺は再び王へ向け話し出す。


「魔王ヴィルデアルとして活動していた際、ヴァルトはスパイを送り込んで情報を収集していた……それは魔王としての実体をつかむことに加え、能力などを分析するため。けれど今は転生してしまったため、その情報が使えない」

「君はヴァルトにとって不倶戴天の敵であり、また同時に最大級に注意しなければならない相手……とくれば、相手側の行動にやや精彩を欠くのは当然か」

「向こうも攻めあぐねているのでしょう。だからこその魔物の進軍。そして、その規模は大きくはない」

「であれば、向こう側が対応に手をこまねいている間に攻撃……というのも一つの手だが」

「俺としては、急いて動くのは良くないと思います。肝心のヴァルトが暴れ出せば、それで大きな被害が出る危険性がある」

「……なら、こういうのはどうだい?」


 チェルシーがふいに発言。こちらが視線を向けると、


「あえて、フィスの力を示す……ヴァルトが力の規模を把握し、逆に攻撃を仕掛けるように仕向ける」

「誘い出すってことか……リスクはあるけど、後方に陣取って陣地にこもっている状況よりは戦いやすくなるかもしれないが――」


 いや、これはもしかすると……俺はイルフのことを思い返す。場合によっては――


「決着をつけるのは勇者フィスだ」


 そこで王が語る。


「危険な戦いであっても、私達はそれに従うぞ」


 ――その言葉で、俺は頭の中で作戦を組み立てた。次いでそれを仲間や王へ、伝えることとなった。


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