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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第四章

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騎士団と魔王

 辿り着いた研究所については、完膚なきまでに破壊した……のだが、そこに存在していた資料には嫌なことが記載されていた。

 どうやら彼らはまず、自分達に不死の能力を適用する前に実験を繰り返したらしい。その副産物が神聖騎士団というわけだが……それよりも前は、イルフのような精霊を生み出すアプローチをしていたようだ。


 おそらくそれにより、俺のような存在が生まれたかもしれない……この辺りは少しずつ調べる必要性がありそうだ。

 破壊の後、俺は都の状況を探る。炎は絶えることなく夜空を照らし、やがて朝が来ても消えることはなかった。そうした光景を見ながら俺はノルバと顔を合わせる。彼は小屋を離れ騎士団の団員がいる場所へと辿り着いていた。俺は魔力を分析していたので、見つけることができたわけだが……そこは都から逃れた者達の避難所。彼に話し掛けると、まず礼を言われた。


「ありがとうございます、小屋を提供してくれて」

「いや、いいさ……騎士団の人とは話したのか?」

「はい、その……気に病むなと言われました」

「思った以上にどうしようもない状態だったわけだ」


 俺の言及に彼は苦笑しながら小さく頷いた。

 騎士団の面々が仕方ないと感じているのなら、俺は何も言わない……それで今後のことを尋ねると、


「都の復興に尽力するつもりですが……どれだけの時間が必要なのか」

「王家の人々は?」

「話によると、既に……」


 ヴァルト達の手によって、か。俺が都で遭遇した研究者達は、王家達を始末するために動いていたのかもしれない。


「そうなると、面倒なことになるな……実質、国という存在はなくなってしまった」

「はい。王家の血筋を探し出して、立て直す他ありませんが……それすらもどれだけ時間が必要となるのか」

「その間に混乱が生じるな」

「国を崩壊させた者達からの攻撃もありますし……」

「ああ、それについてだが、偶然遭遇して、退治したぞ」


 その言葉に――ノルバを面食らったような顔をして、


「退治……した……!?」

「都へ様子を見に行った際に、出会った。全部で十人と言っていたが、その全員を倒した」

「では、もう……」

「首謀者達からの攻撃はない、と考えていい。そちらは生活再建に尽力してもらえればいいさ」


 俺の言葉にノルバは「ありがとうございます」と再び礼を言った。


「しかし、なぜあなたが……」

「うーん……俺にも理由はあるが、さすがに話すことはできないな。なぜ俺が森の中で暮らしているのかとか、その辺りの理由にも関係しているし」


 けれど、もし信頼できる存在だと確信できれば、話をしても良いかもしれない。


「そうですか……わかりました。こちらからは何も言いません」

「そうしてもらえると助かる……しかし、治安維持すらもかなり大変だろ。どうする気だ?」

「騎士団のメンバーと相談していますが、現状誰もが呆然としていて、頭が回っていないんです」


 それはそうか。国がまるごとなくなったのだ。その衝撃は大きすぎる。とはいえ、おそらく秩序の維持ができる存在は、彼らくらいしかいないだろう。

 しかし、いくら彼らでも易々と国のように統治するのは……と考えたところで、俺は一つ気になることがあった。


「……君は、研究者達から何かしら強化を受けた人間だったな?」


 その言葉にノルバは小さく頷く。


「はい、そうですが」

「それは、研究者達が所持している能力と同じものか?」

「彼らほど無茶な力ではありませんが……」

「もしかすると君や、残る神聖騎士団の者達は、不老の存在だったりしないか?」


 その言葉にノルバは沈黙する。思考しているようだが……、


「……おそらくは」

「おそらく?」

「寿命がどうなのかはわかりません。ただ、あの方々が研究していた技術をそのまま受けています。そうであれば、不老の存在と言っても良いのかもしれません」

「……そうであれば、研究者達からしたら君達は敵と呼んでも良いはずだ。なぜ放置した?」

「おそらく、魔法によって制御できる術があるのでしょう。それをすぐに使用しなかったのは、処置をするのに少し手順が必要なのか……」


 ふむ、研究所を壊す前にその辺り調べれば良かったかな。


「実際、体の中に違和感のある魔力がありますし……ただ、研究者が消えたのなら、問題にはならないでしょう。念のため、魔力を解析して解除しますが」

「そういう技術はあるのか」

「全てとはいきませんが、研究者達が行っていた技術について理解はありますし、魔法技術に応用ができます」


 なるほど、な。であれば、


「……治安維持についてだけど、良い手段がある」

「良い手段?」

「これを使えばいい」


 そう言って俺はノルバに携えていた荷物を差し出す。これは、研究者が所持していた荷物だ。無論、彼らの具体的な研究資料については、既に処分しているのだが。


「これは彼らが所持していた荷物だ。今回の事件……国を破壊する行為に関する資料がある。これを使って、神聖騎士団が彼らを倒したと告げ、自分達がどうにか治安を維持すると表明すればいい」

「それは……!?」

「あるいは、もっと単純な話に変えてもいい。例えば、世界を覆い尽くす魔王が出現した。それを神聖騎士団は、倒すことができた……魔王という恐怖の存在を明示し、自分達が正義の味方であることを主張すれば、人々は神聖騎士団に頼ろうとするだろう」


 その言葉にノルバは沈黙する。ただ、俺の手法が良いとは思ったのか、小さく「なるほど」と呟くのが聞こえた。


「町が破壊され、無茶苦茶になっている現状だ。とにかく、最優先にすべきは暴徒が出ないよう秩序を保つこと……それには急いだ方がいい。決断するなら、早い方がいい」


 俺の言葉にノルバは一度他の団員へと目を移す。彼らも意気消沈としているが、中には現状で精一杯のことをやろうと動き回っている者もいる。

 そういう存在に触発されたのか、ノルバは……やがて、


「……検討してみます。どういう風にやるのかはまだ見えませんが」

「わかった。荷物をどうするかは君の自由だ。俺は色々あって森から出るのは難しい身だけど……何かあれば、協力するよ」


 その言葉にノルバは「ありがとうございます」と礼を述べる。再会した時と比べ、幾分表情が和らいだように見えた。


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