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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第四章

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王の頼み

 ベージェ王国の王様、フューゼと俺達は顔を突き合わせて話をすることになったのだが……ひとまず俺は偵察任務で遭遇した魔族について言及。加え、王は俺達が戦ってきた魔王に関する情報も求めた。

 他の魔王についての情報などと比較して、策を練るということらしい……参考になるかどうかはわからないけど、頼まれたし俺達はひとまず情報を吐き出した。彼にとって果たして有益な情報なのかどうか――


「ふむ、なるほど。話してくれて礼を言う」


 話し始めて一時間ほどだろうか。何度も彼は繰り返し問い掛けてくるので、思った以上に時間が掛かってしまった。


「魔王に関することについて、書面上でしか知らなかったからな……生の情報というのはありがたい」

「参考になりましたか?」

「ああ。といっても勇者の情報と実際に目の当たりにして戦うのとでは大きく違うだろう。だが、私はその差違に戦場で気付いても遅いのだ。魔王と対峙したのなら、絶対に勝たなければならない……だからこそ、可能な限り情報を集めておきたかった」


 なるほど、意図は理解できたが……。


「それで肝心の魔王打倒についてだが、正直まだ深い霧に包まれているような感覚だ」

「具体的には、思いつかないと」

「そうだな……正直、相手が大きすぎるというのもある」


 ――ここまで魔王について生々しい情報を投げたこともあるし、怯えてもおかしくない。しかし彼の言葉はしっかりしており、また緊張なども見受けられない。

 覚悟は既に決めているというわけか……ただ、どうすべきかについては迷っている。


「もっとも、暗い話題ばかりではない。現在神族がこの国に働きかけており、実際に前線へ部隊が到着する予定だ」


 それは朗報。ノルバとしても安堵したところだろう。

 けれど、その情報が魔王側に漏れているとしたら――


「勇者フィス、考えていることを当てようか」


 と、王は口の端に笑みを浮かべながら告げた。


「そうだな、神族が来るという情報が魔王に知られているのなら、まずいのではないか……そんなところか?」

「……正解です。大丈夫ですか?」

「いや、十中八九筒抜けだろう」


 さっぱりした物言いだった。それに俺達は目を丸くする。


「魔王は斥候部隊を国中に……というわけじゃない。人間側に内通者がいるという話だ」

「い、いいんですか? そんなことを言ってしまって?」


 メリスが驚きながら問い掛けると、王は小さく肩をすくめた。


「まあこのくらいの推測は誰でもできるし、これまでの戦いを踏まえても容易に考えられるからな」

「いえ、推測とかではなく……私達に話していいんですか?」

「そちらだって、考えついているだろう?」


 ――外部の人間である俺達でも確信できるくらいに材料が揃いすぎているからな。


「私がこうしたことを述べるのは、きっちりその辺りのことは把握していることを伝えたかったからだ」

「内通者がいるとわかって、行動していると」


 メリスの言葉に王は頷き、


「そうだ」

「……肝心の内通者については?」

「さすがに尻尾はつかめていない。これは相手が上手ということだ」

「敵としてはやりたい放題ですよね」

「まったくだ……しかし、そういう風に考えていれば自ずと次の敵の動きが見えてくる」


 なるほど、王が言いたいのは――


「神族が援軍で来るとわかれば、当然敵軍はそれが到来する前に勝負をつけようと動くはずだ。ということは、神族がここへ辿り着く前に私がいる以上、戦闘がある」

「……それを俺達に教えるのは、何か理由があるんですね?」


 今度は俺が提言。それに王は首肯した。


「ああ、当然その迎撃に勇者達の力を借りたい」

「俺達が……ということはあなたの指揮下に?」

「いや、遊撃という形をとろうかと考えている。正直勇者であるあなた方の扱いについては判然としない部分もあるからな。むしろ下手に干渉されて動きにくくなるのは嫌だろう?」


 そうだな……というかこの王様、ずいぶんと物わかりがいい。


「ただし、危険も多い。ここで面と向かって話をしたのは、確認の意味合いもある」

「俺達が同意するかどうか、ってことですか」

「そうだ。さすがに強制はしたくない。そちらが拒否するのなら、私としては他に作戦を立てることにする」

「……一ついいですか?」


 俺は王へ尋ねる。


「もし魔族側が攻撃を仕掛けたとして……魔王が直接出てくると?」

「私はこの国にとっての切り札を所持してはいるが、それが果たして通用するのか、という疑問がある」


 そう王は俺へ返答する。


「魔王自身に通用するのか……それを評価するために攻撃を仕掛ける意味合いもあるだろう。魔王そのものが出てくるかどうかは正直賭けだ。ただ、私は出てくると思っている」

「根拠は、ありますか?」

「いや、さすがにここは勘だよ。魔王の考えを読み解くなんて私にはできないからな。ただ」


 と、王は一拍置いた。


「神族がいない今、仕掛けることが魔王側としても犠牲が少なくこちらを潰せるタイミングであることは間違いない。さらに王もいるからな。ならばと、攻め込んできてもおかしくはないだろ?」


 ……俺達としては、魔王そのものと戦うことも一つの目標ではある。というかメリスやチェルシーに今回戦う魔王ヴィルデアルが偽物であることを認識させるわけだ。それをやるには絶好の機会ではある。


「はっきり言って、魔王が現われれば即座に決戦となる」


 王はさらに俺達へ続ける。


「それでこの国の趨勢が決まるかもしれない……だからこその依頼だ。こちらとしては相応の報酬などを用意する。どうか、手を貸してもらえないか」


 ――神族が来る前に攻め込んでくるとわかっている状況下で、可能な限り戦力を整えておきたい、というのが王の目論見だろうか。

 それに内通者がいるため騎士達についてもあまり信用できないとくれば、実績のある俺達に話が回ってきてもおかしくはない……確実に言えるのは王自身身内に敵がいるとわかっていながら、対処できず袋小路な状況ということ。


 厳しい戦いになるのは間違いないよなあ……目の前の王は余裕を見せてはいるが、内心ではどう思っているのか。

 とはいえ腹の内を探る気はないので……メリスやチェルシーを見ると小さく頷いた。それでいいってことだな。


 俺達の目的も達成できる可能性もあるからな……よって俺は、依頼を受ける旨を伝えることにした。


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