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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第四章

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王について

 人間側の陣地へ戻り一連の情報を伝えると、騎士団長のフォッドは目を丸くした。


「敵陣の中で、指揮官級の魔族を倒したのか……驚くばかりだな」

「俺達にとってはそれほど強くはありませんでしたが、兵士にとっては難敵となるでしょう。一層の警戒を」

「もちろんだ……戦力を減らしてしまったがために、敵の動きが多少なりとも鈍ってくれればいいのだが」


 ――俺達が混乱を引き起こしたことで報復にやってくるなんて可能性もゼロではないのだが……下っ端を倒したくらいなので、そういうことにはさすがにならないか。

 ただ、勇者フィスという存在がこの場にいることは間違いなく認知したはず。このまま正面から激突して勝負を決めるのか、それとも俺やメリスをどうにかするのか……次の一手は魔王の目論見などを判断する材料になりそうだ。


「うん、情報としては非常に価値のあるものだ……ありがとう」

「継続して偵察をすることも可能ですが……」

「さすがに相手もボロを出すことはなくなるだろう。配下の魔族がいかに好戦的とはいえ、仮にも指揮官級の存在がやられたのだ。多少なりとも警戒するだろう。見た目に変化がなくとも、こちらに情報がとれないようさらに念入りに策を講じる可能性もある」


 ……配下がやられたことで警戒、というのはちょっと考えにくいのだが、情報が漏れないよう工夫するなんて可能性は十二分に考えられるな。よって俺は「わかりました」と、騎士団長フォッドへ告げ、自分の天幕へ戻ることにした。

 その途中でマーシャと顔を合わせる。どうやら陣地を見て回っているようだが。


「どうした?」

「あ、へい――」

「おーい」


 さすがに人目があるところなので注意しようとしたら、マーシャは苦笑する。


「申し訳ありません……報告は終わりましたか?」

「ああ、終わった。メリス達は?」

「天幕の中で休んでいますよ」

「なら、少し話が……宿敵に関する情報だ」


 そう前置きして俺はバガンが所持していた能力などについて説明する。それに対しマーシャは、


「確かに、疑問ではありますね……技術を習得することで魔力を得やすくなっている、ということでしょうか?」

「わざわざ技術を与えているのだから、そういうことなんだろうな……さすがに宿敵へ直接尋ねるわけにもいかないからあくまで可能性の話になってしまうが……で、だ。宿敵の狙いが以前俺自身語っていた事柄であるならば、魔力を吸う特性があるというのは、一応説明がつく」

「復活……ですか。しかしこれほど大規模な軍を編成し、力を手に入れる……復活させるのに相当な魔力が必要ということでしょうか」

「そういうことなんだろうと思うが……もしかすると、他にも理由があるのかもしれない」

「他にも?」

「これも単なる推測だが、宿敵の狙いが単なる復活ではなく、例えば力を奪うか融合すること、とかだったりした場合だ」


 口にしながら、ヴァルトだったらやりかねない、と思う。


「融合……!?」

「ああ。ただ正直非現実的な考えだ。力を奪う……つまり、魔力を我が物とするわけだが。だったら配下が吸い取った魔力をそのまま使えばいいわけだが」

「けれど、それをしない……いえ、できない?」

「そういう可能性もあるな。あるいは復活する存在が持っている力が特殊で、是が非でもそれを得るために手の込んだことをやっている……そんな推測もできる」

「真実に近いかと私は思います。ここまで大掛かりな戦いを仕掛けるのです。宿敵にも遠謀があるのでしょう」


 うん、そうだな……今まで表舞台には出なかったヴァルトが、どういう形にしろ関わっている可能性が高いのだ。もしヴァルトが首謀者ならば、ここまでの大軍勢を率いる段階で、最終目標を成すのに明確な公算があるのだろう。


「私達は、今後どうしますか?」

「……俺達はこの国に雇われた形だ。偵察任務まで受けた以上は安易にここから離れたりすることはできない。加え、勝手に動くのもまずい。よって、敵の動きがなければしばしの間は待機ということになるな」

「待機、ですか」


 不安に思ったのか……いや、ヴァルトが準備を進めているのに悠長でいいのか、という気持ちかな。


「ま、俺達以外に動いている人はいるから、少しの間は待ってもいいんじゃないか? ただ、こちらもできる限り情報収集はする……特に同胞については」

「同意ですが、この場にいるとやれることも限られますね」

「それについては仕方がないと割り切ることにしよう……さて、とりあえず偵察任務は終わった。敵も下っ端を倒す程度ではそれほど影響がないと思うが、多少ながら混乱しているのも事実だろう。警戒度合いだって上がっているだろうし、ひとまずほとぼりが冷めるまではゆっくりしようじゃないか」


 俺の言葉にマーシャは神妙に頷く。とりあえず成果は出したし、騎士団長からも信頼を得られた形。彼が裏切り者だったら、近日中に何かしらアクションを起こされるかもしれないけど……その時はその時かな。俺やメリス達なら対応できると思うし、なんとかなるだろう。


「ところでマーシャ、こっちが偵察している間に何か情報は得たのか?」

「はい。この国を訪れる前に概要は話しましたよね? 王様についてですが……どうやら出陣したようです」

「家臣の要請に従い、この国における最強の剣で魔王を討つ、ということか」

「はい。もしかすると私達の方に話が来るかもしれません」

「魔王討伐に協力しろ、か」


 それだったらシンプルでわかりやすいし、いいか……それにヴァルトなのかを確認する機会でもある。

 ただ、肝心の王様の能力がどれほどのなのか……相手がヴァルトであるなら勝つのは非常に厳しいのだが……せめてある程度耐えられるだけの実力があれば。


 初代の再来と言えど、魔王に挑めるだけの強さはあるのか……それをできれば確認したいところだ。王様と共に戦う時があるのかどうかが疑問だけど……ま、出陣したのならその姿を拝見できるだろうし、もしかしたら能力の多寡を何かしらの形で考察できるかもしれない。それを成した上で、どう立ち回るかを決めていい……そんな風に内心考えながら、俺は自分の天幕へと戻った。


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